04 撮影

 お昼ご飯を食べながら、婆ちゃんに相談した。婆ちゃんのダンジョン、2層目が手付かずだからね。


「果樹園とかいいと思うんだけど、どう?」


「そうですねえ、でもお世話ができるかしら」


「それなんだけどね、婆ちゃん──」


 僕はモンスターに手伝ってもらえば、いいんじゃないかって思ったんだよ。あの子たち凄く賢いから。

 環境は僕が整えられるし。


「ふふふ、太一が楽しいのなら好きになさい。もう太一のダンジョンなのですから」


「分かったー」


 だけどモンスター召喚はランダムなんだよなあ。いっぱい種類があるから、こうなってんのかな? ウチは小っちゃいダンジョンだから問題にならないけど、おっきいところだと選ぶのも大変っていう感じで。


 100層あるだけで100回選ぶんだもんね。階層の中でもフロアが区画分けされてたらさらに増えていくかもだし。もしかしたら自動召喚なんて機能も、スキルが成長したらあるのかも。


 ダンジョンマスターの情報がないから分かんないや。

 レアスキル過ぎってことなのかな?

 レーナ姉ちゃんも秘密にしろって言ってるしさ。


「あ、そうだ。僕のスキルで出せるからさあ、次からは好きな野菜言ってね」


 色んな種がリストにあったからね。

 自動種まき機というか、設定で畑にセットできるようにもなってる。

 つまり、真のダンジョン産野菜が生産できるのです。


「うふふ、お婆ちゃんの仕事をあんまり取っては駄目ですよ」


「うん。じゃあ僕、ダンジョン行ってくるね」


 チーちゃんを呼ぶと僕の頭にスチャっとドッキング。モゾモゾと動いてるのが分かるよ。髪の毛でイイ感じの巣でも作ってるっぽい。

 なおキューちゃんは、母さんに捕獲されていた。


「キュウリもらってご満悦みたいだし、今日はいいか」


 キューちゃんタイプはキューちゃんしかいないしね。今回撮るお名前募集動画には、出なくても問題ないでしょー。動画撮らせてもらうホワイトデスくんたちへのお土産に、切り分けたリンゴを持ってダンジョン3層に向かう。


「あ、レーナ姉ちゃんから返信が来てる」


 え……と?

 主な内容は…………嫉妬だった。

 ズルイの連呼っ。


 最後のほうに「ダンジョンマスターのことを言わなければオッケー」って書いてあった。

 じゃあお名前募集動画出していいね。


 おっと、みんなを呼ぶ前にスマホのカメラを起動してーっと。


「みんなー、オヤツ持って来たよー」


 おいでおいですると、ワーッと寄って来た。


「チョット待ってね」


 お皿にリンゴを並べる。

 みんながオヤツ食べるシーンは撮らないとね!

 うーん、手がもう2本くらい欲しい気分だよ。


 カメラを置いて撮影しちゃうと、画角からはずれる子もいるだろうしさ。追尾カメラも2~3個はあったほうがいいよねえ。今日は魔力ポイントがないから買えないんだけど。


 明日かな。

 今日は頑張って撮影しよう。

 撫でるを頑張って諦めたら、オヤツ食べるシーンもバッチリ撮れるし。


「くぅ、この頑張り、ツライっ」


 もの凄く撫でたいよ、僕は。

 だってさ、ツンツンツンってリンゴを食べたあとに、僕のほうを見てチルルって鳴くんだもん。オイシーって報告してるように見えるんだ。


 もちろん、そんな可愛いシーンは録画済みだよ。

 見てくれた人の心も揺さぶられることでしょう!

 撫でたくなる気持ちを頑張って諦めてるの、分かってもらえると思う。


 でも定点カメラのほうだと、エサやってるハトに群がられてる子供みたいになってるんだろうなあ。

 定点カメラの動画は需要あるのか、チョット疑問。


 一応みんなの動きに合わせて、カメラは動くようにはなってる。だけどホワイトデスくんたちは数が多いからね。バラバラになって遊んでるときは追いきれてない感じはするんだ。


 ……追尾カメラ、5~6個のほうがいいかも?


「うーん、そうなってくると僕の魔力は、みんなのご飯にしないほうがいいかもしれないなあ」


 魔力足りないかもだよ。

 だってやりたいこととか、してあげたいことに使いたいもんね。

 キューちゃんの仲間も呼んであげたいし、恐竜モンスターも見たいし。


 お金を稼いで、みんなのご飯は買うほうがやりたいことをやれるかもだよ。幸いにも僕はダンジョンマスター。

 ポーションや追尾カメラを売れるから、お金稼ぎはできると思う。


 なにがどうなってるのか分かんないけど、追尾カメラって飛びながら撮影してるもんなあ。さすがダンジョン産アイテム。

 お高く売れるものな気がしてるんだ。


「そうなると移動手段がねえ」


 冒険者ギルドまでの道のりを、どうするかっていう問題も出てくるかな。体力のない僕じゃあ駅前まで時間が掛かるし、毎回誰かに送ってもらうのも気が引ける。

 魔力過多症がまあまあ平気になったんだしさ。


「自分でなんとかしたいかな」


 母さんの自転車借りて行くのがベストだと思う。

 その内自分用を買えばいいしね。

 問題は乗れないことなんだけど。


「出歩くのは裏庭ダンジョンくらいだったからなあ」


 3層はコアルームとモンスター部屋くらいしかないし、ここで練習しよーっと。でも多少は整地したほうがいいかな。芝生公園みたいにしたら、フッカフカになって転んでも平気だろうし、みんなの遊び場にもなるだろうしね。


 なんてことを考えてたら、みんな僕をベッドにしてお昼寝しちゃった。動けなくなったし、ナデナデタイムもお預け。さすがにお昼寝タイムで貯まる魔力ポイントじゃあ、なんにもできない。


「動画の編集してよっかな」


 サムネは……こっち向いてチルルって鳴いてるとこ?

 いや……おいでおいでしたあとにワーって寄って来るとこがいいかな?

 僕があぐらしてる隙間で団子になって寝てるとこも捨てがたい……。


「これは迷うなあ」


 さんざん迷った結果、僕は3本の動画をアップすることにした。

 お食事、お昼寝、お遊戯の3本。

 迷う必要もない、簡単な選択だったことに気付いたよ。


 迷うべきはタイトルなんじゃないかな?


 うーん、そのまんまでいい?

 赤ちゃんモンスターのお名前募集「お食事シーン」みたいな感じでさ。変に凝ったものにするより、いいんじゃないかな。

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