10 脅威度判定

「ではこれより柄山ダンジョンの脅威度判定を行う」


 朝になったらいつものレーナ姉ちゃんになってた。

 ドキドキしてたの、僕だけだったのかあ。チョット寂しいけど、これが大人ってことなんだなあ。


 僕もしっかりしよーっと。


「やるべきことを終わらせて、みんなと遊ぶ」


 大人……?


「遊んでいいの?」


「お世話も仕事の内でしょ?」


「それもそっか。楽しいだけだけどね! みんなのお世話」


「私も楽しみよ。初めてだもの」


 レーナ姉ちゃんがダンジョンコアに触れて、脅威度を測定してる。機械とか使うわけじゃないんだなあ。

 全く想像してなかった、人力でした。


「うん、やはり脅威度は上がっているわ」


「そうなんだ」


「太一くんの魔力で育っている、ということよ」


 どうやって測ってるのか聞いたら、経験らしい。


 経験を積むと、魔力の質とか密度とか。そんなのが分かってくるようになるみたいだよ。

 レーナ姉ちゃんが言うには、僕の魔力の質はかなり高いんだって。


 そしてウチのダンジョンは脅威度Fになっていたそうです。上がったって言っても、まだその程度ってことかあ。元々は脅威度Gの判定だったんだよね。1個だけ上がった。


 そして脅威度Fなら、まだ戦闘職がいなくても問題ないレベルだ。モンスターが出るのって基本的にE以上だしね。


「太一くんがダンジョンマスターだから、ちゃんとコントロールして」


「うん」


 どんどん脅威度は上がっていく予定だから。僕がダンジョンに入ってるだけで魔力がチャージされるんだし。

 モンスターたちも増やしたいと思ってるし。


「そう考えるとバイトの冒険者さんは必要かあ。遊んでくれる人も必要だもんね」


「遊ぶ中で力加減も覚えてくれるといい。おば様に突撃した、だんがんくんを見た」


「あれ、加減を少し覚えたあとなんだよね。実は」


 最初はミルクって子が婆ちゃんの骨を折っちゃってさ……ポーションがあったからすぐ治せたけど、あのときは結構焦ったよ。

 キューンキューンってスケアリーウルフのみんなも鳴いてたし。


 オオカミだから? やんちゃな子犬っぽいよ。


「そうだったの。やはりある程度の人数は必要ね」


「でも報酬が大変だよ」


「マジックバッグでいい。太一くんが叱られた、あのマジックバッグの3分の1か4分の1くらいで大丈夫」


「あ、そうなの?」


 じゃあなんとかなる、かな?


「報酬よりダンジョンの入り口を追加したほうがいい」


 あー、そうか。今までは3人だったから気にしてなかったけど、ウチは駅から遠いしなあ。周りになんにもないから、買い物も大変だし。


「ここ、不便だもんね」


「違う。セキュリティの問題。ギルドの地下に作れる?」


 ダンジョンマスターんちがバレるのが大問題だそうです。

 全く考えてなかったよ……。


「えっと、チョット待ってね」


 ダンジョンスマホで検索。出入り口出入り口~……は追加できるみたい。だけどフロアの広さが条件っぽいや。

 今の1層の3倍は必要みたいだ。


「できるけど、ポイントが微妙かなあ。足りるけどなにもできなくなっちゃうね」


「まずはギルドに知らせないと」


 それもそうだった。

 それにダンジョンの出入り口は壁にくっ付けないと、変な場所に階段ができて見栄えも悪いや。


「それに柄山からやまダンジョンのホームページもまだ。焦ることはない」


「おっけー。じゃあ今日は明かりだけ変えるね」


 これはメニューから変更するだけなのですぐできた。

 この設定だと、夜はダンジョンも夜になるので、街灯も何個か設置しておく。


「終わり?」


「終わり。遊ぼう。みんなを紹介して欲しい」


「分かった。みんな、もういいよー。おいでーっ」


 お馴染みのワーッて寄って来るところを撮影しちゃうのだ。


 まずはチーちゃんたちホワイトデス。動画で見ても可愛いけど、やっぱり触れる生はいいっ。


「くぅぅっ、私は今、幸せを噛みしめているわ!」


 レーナ姉ちゃんにかまってあげてってお願いしたので、今日毛玉になるのはレーナ姉ちゃんだ。動画でも出したことあるけど、両手でくるんで、スヤァするのを実践して悶えてるよ。


 続いてちょこちゃんたち、フェアリーバットは12匹。僕も出てくるまでは知らなかったんだけど、コウモリってネズミみたいな顔してて凄い可愛いんだ!

 ただ逆さまに止まるから、かまってあげ辛いのが困ってるとこ。


「ちょこちゃんたちには専用の遊び場を作ってあげよっかな」


「うん。そうするべき。私の魔力も使えるはずだから、設備は作りやすくなる」


 孫くんたちベイトリスザルは8匹。見た目はリスザル。

 レーナ姉ちゃんとは引っ越しのお手伝いで昨日会ってる。だから今はチョットだけ遠慮してもらった。


「ごめんね? みんなを紹介し終わったら遊ぼう」


 ミルクたちスケアリーウルフが5匹。まんま子犬のシベリアンハスキーだよ。だんがんくんの動画がバズったので、この子たちからチャンネル登録してくれる人も多いね。油断大敵の最高にコロコロモチモチモフモフのモンスター。


 最後にみんなのお兄さんお姉さん枠の、鹿園さんたちブラッドディアは4匹。子鹿とかバンビでググればそのまんま。僕の学のなさがバレた原因の子たちでもある。だって読めないよ猪鹿倉いがくらさんとか入鹿いるかさんは。


 鹿園さんたちはねえ、凄く大人しくて、凄く優しい子たちだよ。チーちゃんがリーダーねって言ってたんだけど、最近は鹿園さんのことをリーダーって認識してるっぽい。


 一番ランクの高いデッドリーベアのキューちゃんは、母さんと婆ちゃんが取り合いをしてるので、あんまりここにはいない……。


 キューちゃんのお仲間を、出してあげたくて召喚してたんだけど、まだ出てないんだよなあ。

 近いうちにまたチャレンジしよう。


 今はダンジョン出口用の魔力ポイントを貯めないとね。


「どうかした? レーナ姉ちゃん」


「真剣な顔の太一くんもいい」


 急に恥ずかしいことを言ってきた。

 なんでって聞いたら、昨日好きだって言われて心臓が爆発するんじゃないかってくらい、ドキドキしたんだって。


「だ、だって! あの……ときは……」


「嬉しかった。私たちは一緒に学んでいくべきよ」


「ん?」


 魔力過多症が治っても、レーナ姉ちゃんは感情の出しかたに影響が残ってるんだって。今も苦手だそう。

 僕は──


「気絶してる時間が長かった。だから精神も少し幼いまま」


「そ、そうだったんだ!?」


「私たちは少しだけ人より遅れてる。でもたいした問題じゃないから」


「一緒に成長しようってこと?」


「そう。だ、だって恋人になった」


「う、うん」


 ドキドキしてたの、僕だけじゃなかったみたいで嬉しくなった。


 あとで気付いたんだけど、精神的な高まりが魔力を濃密にしてたみたいで、ポイントがいっぱい貯まってたよ。

 レーナ姉ちゃんの分も入ってるから1日で10万とか稼いでたっ!


・メリット

 僕たちは恥ずかしくなって真紅になると稼げる。

・デメリット

 悶えるくらいに恥ずかしくなる。

 生地厚めのジーパンをはかないとバレるという、僕だけのデメリットもあった。


「私で元気になる太一くんを見てきた。私もそんな太一くんにキュンしてるから気にしないでね」


 昨日今日の話でもなかったみたいで、僕の魔力はさらに高まったようです。

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