17 マッサージ

 みんなのお昼寝も終わったので、遊ぶために2層へ移動することにした。かけっこと思ってたけど、まずは自転車にしようかな? そのほうが速いから、元気なスケアリーウルフたちには受けがいいと思うんだよね。


 だけど自転車を持って来てまたがると、花ちゃんがションボリしてしまった。

 自分に乗って欲しいみたい。


「ごめんね、花ちゃん。僕も運動しないとだから」


 足元ではミルクたちが、もうウズウズしてるよ。足に纏わりつくように、僕の周りをグルグルしてる。

 鹿園さんたちも参戦するつもりみたいで、寄って来たね。


「撮影はどうする?」


「追尾カメラのでいいんじゃない? 僕の運動なんて動画になくてもいいし」


「分かった。私は他の子と遊んでる。でも太一くんの運動も録画は必要」


「そうかなあ? じゃあ行くよ、みんな。ごー!」


 大き目の泉の周囲を走ることにした。モンスターのみんな用だから、舗装はしてないけど硬めの土で道が作ってあるんだ。観光スポットみたいに綺麗な感じの風景にしてるし、水場の側だから少しひんやりしてて気持ちいいしね。


 自宅でサイクリングできるのってダンジョンマスターならではかも?


「速いね、みんな!」


 僕は結構シャカシャカ漕いでるんだけど、モンスターのみんなは余裕な感じだね。

 僕を抜かしては後ろに回り込むを繰り返してる。

 花ちゃんもお速いっ。


 ゾウって足速いの?


「だはーっ」


 2周するころにはヘロヘロの僕ができあがった……。

 芝生に寝転ぶと、ミルクとだんがんくんが僕の上に乗っかる。やんちゃな2人だからなあ。


 鹿園さんは花ちゃんとなにか話してる感じだ?


「花ちゃん?」


 ぜーぜー言いながら聞いてみたら、パオって返事して花ちゃんが泉に入っていく。

 鼻で水を吸って、天井に向かって柔らかーくシャワーする感じで、こっちに水を飛ばしてきたよ。


「気持ちいい。ありがとー鹿園さん、花ちゃん」


 僕の顔はミルクとだんがんくんの尻尾でバフバフされてるけどね。

 ほら、イヌが尻尾振ったら、子ネコの顔にベシベシなってる動画みたいなアレを実践中だよ。


 チーちゃんは今、僕のおでこに乗ってるからベシベシを喰らって怒ってるみたい。

 やめてあげてっ。

 尻尾がハゲちゃうから!


「あはははっ」


 ミルクたちスケアリーウルフが、膝裏とか腋とかに顔を突っ込んできてくすぐったい!

 なんなんだろうね、隙間に突っ込んでくるこの変な仕草は。


 ペットとか飼ったことないからよく分かんないけど、動物も似たような行動をするのかな?


「太一くん、体力ないわ」


 こっちに来たレーナ姉ちゃんに言われてしまった。


「じ、自覚あるう」


「少しずつ体力強化をやっていこう」


「うん。そーする」


 駅前のギルドに行くくらいしか運動してないしなあ。それだって週1行けばいいほうだしさ。

 ちゃんと運動はやらなきゃダメだね。


 レーナ姉ちゃんが濡らしたタオルで僕の足を冷やしながら、カリキュラムを組んであげるって言ってる。

 一気にやるのは負担が大きいから、ホントに少しずつにするってさ。


「チョットはしゃぎ過ぎたかもー」


「その様子だと明日動けなくなるかもしれないわ」


「ポーションで治るんじゃない?」


「筋肉痛で使うの?」


「もったいないかあ」


 予防にストレッチのやり方を見せてくれた。

 マネしてやる。

 あとは温めのお風呂に入ってマッサージがいいんだって。


「準備してくるから待ってて。ドリンクも持ってくる」


「ありがと、レーナ姉ちゃん」


「気にしないでいい」


 気が付いたらお風呂で柔らか成分に包まれてた。

 いつの間にか寝てたみたい。


「起きた?」


「うん……ウンっ!?」


「こら、暴れない。水着きてるから大丈夫よ」


 水着……着ている。

 僕も……なぜか水着。

 水着のレーナ姉ちゃんに後ろからホールドされている……のでさりげなく手のポジションを足の間に移動する。


 女の子みたいだと言われてても、僕は男ですので!


 男ですのでヤラシイことだって考えるし、スマホには秘密画像だってある……よ?

 インターネットは万能だもんね!


 なのでレーナ姉ちゃんにくっ付かれてると、ヤラシイことが頭の中を駆け巡るんだ。だって柔らかいし!

 反応するとバレちゃうの!


「見た?」


「見てない。孫くんたちにやってもらった。とても賢いわ」


「えーっ? すっごぉ」


「起きたのなら丁度いい。マッサージする」


「え、えっと、その……」


「た、太一くんが……私でそう・・なってるのはキュンする……から」


 バレているっ!!


「せ、誠実なお付き合いする。太一くんの太一くんは、私たちの未来で」


「は、はいっ」


「わ、私たちの……未来…………?」


 自分で言って恥ずかしくなったのか、真っ赤になったレーナ姉ちゃんに強く抱きしめられてしまった。

 だからギュッてされたら色々マズイんだってば!


 しかもレーナ姉ちゃんの身体が凄い柔らかくて、熱くて柔らかいっ。

 多分、僕も熱いと思うけど。


 しばらく固まったあとで、マッサージしてもらった

 腕のマッサージのときはレーナ姉ちゃんのおっぱいが目の前で揺れるし、足のマッサージのときは隠しようがなくて僕の下のお山が丸見えになってたよ……。


 水着じゃ……バレちゃうよ。

 厚めのジーンズじゃないと……。


「ば、晩ご飯の準備、しよ?」


「そ、そうね。それがいい」


 なんか色々と消耗した気分。

 レーナ姉ちゃんからも、タンパク質はちゃんと取るように言われた。お肉は好きだし、そこは問題なしだよ。


 お昼のバーベキューのときに残ってたのを食べることにする。


 炊事場も外に作ろうかな?

 みんなでワイワイ料理できるしさ。

 ダンジョンスマホをポチる。


 レーナ姉ちゃんはさっそく炊事場を使い始めた。

 鉄串に切り分けた肉と野菜を手際よく刺してる。

 僕はお米を洗って、飯ごうを焚き火にセット。


「あとは火が通るまで待つだけー」


 BBQ串はあとから焼かないと、お米より先にできちゃうね。

 お米を炊き始めてから、おかず作り始めるのがよかったのかも。

 学びがありましたー。


「普通なら炊飯器を使うし、朝炊いておけばOK」


「飯ごうは雰囲気作りだしね」


 でも、もうそれだけで絶対美味しいよ!


 食事の後片付けが終わるころ、1層が夜になった。

 焚き火の明かりが綺麗だったけど、虫の鳴き声とかがないので若干不気味さがあったよ。


 虫……召喚すべきなんだろうか?

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