15 冒険者対策と自動改札機のお値段

 アルバイトを募集したときの配信で出た、ボランティアっていうアイデア。

 みんなが嬉しくなるなら採用かなって思ってる。


 でも魔力チャージだけでもいいから、ここに来たい! って言われてもねえ、罪悪感がもりもり出ちゃうよ。

 それに人数が多いと、レーナ姉ちゃんがいい顔しない。


 セキュリティ問題ってヤツでさ。


 上手くいかないねってレーナ姉ちゃんと相談中。結局は配信のときの言われた、ぺんぺんくんやハムハムで対応するしかないっていうのが今の状態。

 追加募集できるのはぺんぺんくん、ハムハムたちの数だけ。


 安全確保のために、一応Cランク以上の16人までって条件が付いた。

 もっと危険のないランクのモンスターが出せたらなあ。


「赤ちゃんモンスターは選んで召喚できないしねえ」


「投入するDPを少なくしたら可能性が高いのでは?」


「それだと数が少ないだけのこともあるんだー」


「待って、ダンジョン庁から連絡が来た────……了解。うん、ダンジョンラットとピングウィスならCランクから可」


 レーナ姉ちゃんの報告した要望が、そのまま通ったみたい。


「赤ちゃんモンスターはいっぱいいてもいいし、キューちゃんと花ちゃんのお仲間も出してあげたいからね。チョコチョコ召喚しよっかな」


「私もそれには賛成する。柄山からやまダンジョンを、赤ちゃんモンスター天国にしたい」


「難しい話はお母さんには分かんないけど、キューちゃんのお仲間はもっといて欲しいわねえ」


「お婆ちゃんも賛成です」


「でも難しいよ。出ないのは、ダンジョンが小っちゃいせいかもしれないって」


「誰も困らない。チャレンジあるのみ」


「そだねっ」


「それよりも先に宿泊施設の追加をするべきよ」


 すぐじゃないけど、来る人数が増えるもんね。フロアのスペースはまだ十分あるからポイントが貯まれば追加はできるよ。

 赤ちゃんモンスターと遊べる場所は……テントの中じゃ狭いかな?


 ハムハムたちなら大丈夫だけど、ぺんぺんくんたちだとサイズ的にチョットね。

 やっぱり遊戯場は必要かな。


「バーベキュー用の設備はどのくらいがいいんだろう?」


「何人来られるのですか?」


「16人追加だから……えっと、2層には何人呼ぶつもりなの? レーナ姉ちゃん」


「2層に入れる冒険者は1人か2人でいい」


「じゃあ20人くらいがくつろげるBBQセットでいいわね。お義母さんのお野菜、足りるかしら?」


「契約済みの分でほぼなくなりますから、お出しできませんねえ」


「私たちが普段食べる分も削りたくない」


 特にキュウリはキューちゃんや、だんがんくんたちが好きだからなあ。足りないと可哀想だしね。


「婆ちゃんの野菜は諦めてもらうしかないね」


「そもそもこちらが食材を提供しなくていい」


 え? そうなの?


「お呼びするのだから、私共が準備するものではありませんか?」


「お婆様。これは都会に行って私も知ったこと。田舎の人は、人がよすぎる。なんでもかんでも分け与えてはならないわ」


 そうなんだ?

 玄関に色々置かれてる、とかないらしい。

 お返しに色々置いて来る、とかもないんだって。


「知りませんでした」


 婆ちゃんも母さんもビックリしてる。


「ですが心苦しいですね」


「じゃあさ、孫くんたちに手伝ってもらって畑広げようよ。せめて僕らが参加するときは出したいしさ!」


「うん、それならいい」


 3層に果樹園も追加したいんだよね。ちょこちゃんたちフェアリーバットと、鹿園さんたちが果物好きだし。

 チーちゃんたちは特にイチゴが好きみたい。


 モンスターのみんなが、自由にオヤツ食べれたら喜ぶと思う。

 ちなみに孫くんたちはバナナと見せかけて、干し柿が好きだった。


「お母さんはミカンがいいかな」


「私もチーちゃんたちと一緒でイチゴが好き」


「私はモモが嬉しいですねえ」


 僕はイチジクが欲しい。

 ダンジョン産のイチジク……どんな美味しさになるんだろうっ。


「果樹園早く作りたいなー」


 さすがにポイントが足りないから、すぐはムリだよ。でもまあ僕だけでも5日あれば10万ポイントくらい稼げるからね。レーナ姉ちゃんもいるし明後日には作れると思う。


「太一くん。果樹園の前に必要なものもある」


 2層に入れる冒険者さんの判別はどうするの?

 っていうことだった。


「えっと、ギルド証? あれ? 駅員さんみたいにするの?」


「そう。そこが問題」


 冒険者ギルドの職員さんに頼むって手段もあるけど、さらに人を呼ぶ必要が出てくる。職員さんも余計な仕事が増えることになるし、頼みづらい……よねえ。


「実はダンジョン用の自動改札機はある」


「あ、じゃあそれを使えばいいんだ」


「冒険者用は850万くらいするはず」


「お高いっ!?」


「お婆ちゃんが出しましょうか?」


「いえ、太一くんはお金持ちになれる」


「えー?」


「マジックバッグがある」


 あ、そうだった。

 怒られた容量の大きいヤツ、かなり高額でした。


 ギルドの職員さんに頼むなら、助成金を申請したら通るかもしれないって言われた。でもそんなのやり方が分かんないしなあ。

 レーナ姉ちゃんがやってくれるって言ってるけど……。


 なんでもかんでもレーナ姉ちゃんに頼るのは、男としてカッコ悪いっ。


「丁度いいマジックバッグを何個か売ろうと思う。お高い1個とかより早く資金にできそうだし」


 ぼ、僕だって考えてるよ?

 ちゃんと。

 そんな微笑ましい感じで見てくるの、やめてくれないかな?


 いや、でもさ、家族やレーナ姉ちゃん、ダンジョン庁や冒険者ギルドにはさ、凄いお世話になってる自覚はあるんだ。


「色々してもらってるけど、返せてない気がするっ」


「それでもいい。それでも、将来的にはお釣りがくるのがダンジョンマスターという存在。つまり太一くんは日本にとって福の神よ」


 僕の言ってた赤ちゃんモンスター貸し出しだって、将来的に見たら不可能じゃないって言われた。


「なので気にしなくていい」


「頑張る!」


「頑張らなくていい」


「ええ!?」


「30年40年頑張るのは無理。だから普通でいいわ」


「そういえばそうだったあ」


 じわじわダンジョンを成長させるのが一番いいんだね。

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