13 動物園らしいモンスター

 初配信から数日。

 魔力ポイントも貯まってきたのでモンスター召喚することにした。

 キューちゃんのお仲間を出すのだー!


 僕も出してあげたいし、母さんと婆ちゃんも……その、チョットうるさいのでっ。


「初めて見る。楽しみ」


「この瞬間って結構ワクワクするよ!」


 ダンジョンスマホは僕以外にも見えるし、操作はできないけど触れる。だからレーナ姉ちゃんにも、モンスターのカードがダンッダンッダンッってなるのが見えるよ。

 レーナ姉ちゃんは食い入るように見てる。


「太一くん。他人にも見えるし触れるなら、そのスマホは知られないほうがいい」


「あ……うん。ダイジョブなはず」


 気にしてなかったあっ!

 でも、レーナ姉ちゃんと家族以外の前では使ってない、はず。

 たぶん大丈夫、かな?


 よし、気を取り直して召喚タイムだ。


「一番最初に召喚したときは、魔力ポイント入れすぎたっぽいんだよね」


 鹿園さんや孫くんたちのときは、少なかったのかもしれない。

 だから今回は、その間くらいのポイントを投入するよ。

 5万ポイントッ!


 カードが効果音を鳴らしながら、派手な演出で開かれていく。

 ピングウィス、ダンッ!

 ダンジョンラット、ダンッ!

 ロータスエレファント、ダンッ!


「レアモンスターだ!」「ロータスエレファント!?」


 レーナ姉ちゃんも同時に叫んだね? そのロータスエレファントが、レアモンスターだよ。

 僕はカードがレアのヤツだったから分かった。


「レーナ姉ちゃんは知ってるの?」


「実際に見るのは初めてね」


 17個の魔石が地面からモリモリ出てくる間に、モンスターの絵を見て説明をしてくれるレーナ姉ちゃん。


 ピングウィス。ランクはDで5匹。

 ロータスエレファントのランクはCC~BBで1匹だよ。

 そしてダンジョンラットはEランク。11匹……多いっ。


 ロータスエレファントはエレファント系のレア種なんだって。

 咲いてる花で○○エレファントって付けられてるって教えてくれた。


「うーん、今回もデッドリーベアは出なかったなあ」


 かなりレアなモンスターなのかな?


「デッドリーベアはAランクモンスター。今のダンジョンだとランクが合わないのかもしれないわ」


「そういうことかあ。そんなの考えたことなかったよ。ありがと、レーナ姉ちゃん」


「う、うん。ニッコリの破壊力が凄いわ、太一くん」


「て、照れるからっ!」


 お互いにテレテレしたせいで、魔力ポイントがまた増えたよ。

 恥ずかしいと儲かるシステムはチョットだけキツイよ……。


「チーちゃんたちホワイトデスもランクはBB。だから出づらいと思う」


 そうなるよねえ。

 あれは初回特典だったのかなあ?

 ダンジョンクエストもクリアとかあったしさ。


 なんて考えてたら、魔石からモンスターが産まれだしたよ。

 当然のようにみんな赤ちゃんだ。


「はうー」


「これは……ダメになってしまうっ」


 キューちゃんのお仲間は出なかったけど、魔石から産まれたのは今回も可愛いのオンパレード。

 ある意味では最強のモンスターだよね。


 ピングウィスは赤ちゃんペンギンだし、ダンジョンラットはハムスターだよ。ロータスエレファントは、頭に蓮の花が咲いてる小っちゃいゾウだしっ。


「ねえレーナ姉ちゃん、花ちゃんには乗れそうだよね!」


 乗せてくれないかなあ?

 あとで頼んでみよう。


「花ちゃん?」


「そうだよ? ピンと来たから」


 ロータスエレファントに花ちゃんて名付けたら、チョット安直ではないかっていわれた。けど他にある?

 花ちゃん一択だと僕は思うけどな。


「じゃあキミはぺんぺんくん。キミはハムハム。いい? 太一くん」


「むむぅ……否定できない、いい名付けをするね?」


「ではこの子たちも決定」


 そういってネームタグを着けていくレーナ姉ちゃん。

 花ちゃんにはサイズが合わないから紐がいるね。

 家に戻って持ってこよう。


「ねえ花ちゃん、乗せてくれる?」


 そう聞くとスリスリした後で、鼻を使って背中に乗せてくれた。ポニーくらいのサイズだけど、レーナ姉ちゃんも一緒に乗っていいみたいで、鼻で「おいでおいで」してるよ。


 賢いっ!


「ありがとう花ちゃん。ぺんぺんくんとハムハムも一緒に行こう」


「そうだね。母さんと婆ちゃんにも紹介しなきゃ」


 紹介ついでに、さっきより詳しいモンスター情報を教えてくれるレーナ姉ちゃん。


 ただ花ちゃんはレア種なので、あんまり分かってることはないそうだよ。大きさも色々だって。巨大なのだったり、馬くらいだったり。

 だからロータスエレファントの一般的なサイズも、よく分からないそうだ。


 ダンジョンラットのハムハムたちは……その……ただのザコモンスターだって。

 そんだけ。

 そんだけ……。


 ピングウィスはペンギンの語源になった言葉だって。ラテン語の"太ってる"から、スペイン語の"太っちょ"になって……なまった言葉がペンギン…………。

 確かにコロコロしてるけどさあ、太っちょではないよ!


「可愛いコロコロだよ、この子たちは!」


「そうね。太っちょじゃないわ! ね~? コロちゃん」


「おば様。その子はぺんぺんくん。他の子にコロちゃんと名付けする」


「あら、そうなの? もう名前が決まってたのね」


「ではお婆ちゃんが付けようと思っていた夜月ちゃんは、もう無理なのかしら?」


「大丈夫だよ! まだダンジョンの中にいるからね」


 問題はハムハムたちだった。

 ハムハムもコロコロしてるせいで、ハムハム以外が思いつかないっ。

 コロちゃんは母さんによって、もう使用済みの名前になっちゃったよ。


「太一くん、お名前募集動画を出す」


「だね。あっ、1個思い付いた! コロコロのモチモチだからおもち!」


 それがあったかあって顔された。

 あと悔しそうな顔もされた。

 そんな顔されても困るよ。


「紐ある? 赤ちゃんゾウにネームタグ着けれなくてさ」


 紐を持って玄関で待っててもらった花ちゃんに、ネームタグを着けた。


「これでオッケー。婆ちゃんたちも乗ってみる?」


 もちろん! ということだったので、花ちゃんに頼んで乗せてもらう。母さんと婆ちゃん、凄くご満悦だったよ。

 花ちゃんも嬉しそうだから、誰か乗せて散歩するのが好きなのかもね。


 それにゾウさんがいるとさ、一気に動物園って感じになるよね!

 花ちゃんのお仲間も出してあげたいなあ。

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