ダンジョン動物園、開園しました! ※16歳以上。Bランク以上の冒険者のかたで、可愛いモンスターたちと遊びたいかた。アットホームな職場で働いてみませんか?

ヒコマキ

01 裏庭ダンジョン

「気を付けなさいよ? 太一」


「ダンジョンだし平気だよ」


「おば様、私もいるから大丈夫」


「お願いね、レーナちゃん」


「大丈夫だよお」


 母さんは心配し過ぎだよね。

 だって今日はダンジョンコアから、スキルをゲットする日なんだよ?

 平気に決まってるじゃん。


 僕たちは行って来ますして、裏庭のダンジョンに向かった。ダンジョンの中では魔力を徐々に吸収されるから、魔力過多症の僕には楽な場所なんだ。


 小5の頃からだんだんと増え続けて、今はまともに動ける時間が少なくなっちゃってるんだよね。

 倦怠感がひどくて、酸素カプセルやボンベが必要だったりするんだ。


 でも魔力過多症の症状の中ではマシなほうかもしれない。人によっては動けなかったり、五感のどれかがちゃんと機能しなかったりするんだし。


 ただ……身体の成長が止まるっていう僕の症状は、症例が少なくて対処する方法がなかったんだよねえ。

 可能性を信じて、ダンジョンの中に入っておくくらい。


 結局16になった今でも治ってないから、10歳くらいの子供のまま。


「でもスキルが生えたら、身体だって成長するかもだし?」


「太一くんはそのままがいいと、私は思う。可愛いの最高」


「成長しーまーすぅぅー」


 最低でも普通の生活ができるようにはなるはずだよ。

 魔力が僕のスキルに使われることになるから。

 たださ、僕の症状がマシって言っても、しょっちゅう気絶してた。


 ホント、なにもできない人生だったもんね。


 まあ、そのせいで心配されちゃったんだけど。

 ウチの家族は全員、冒険者ギルドのツアーでスキルを取ったらしいからさ。


 でも僕は出掛けるのが難しいから、自分でやることにしたんだ。

 冒険者ギルドにスキル取得を申請すると、ダンジョンコアにくっ付けるスターターチップが送られてくるよ。


 裏庭にある婆ちゃんのダンジョンを使えるし、説明書も入ってるので問題ないし。

 心電図を取るときのような感じでコアと接続。

 説明書の指示通り、手首とこめかみに電極を張り付ける。


 ウチのダンジョンは脅威度が低いから、モンスターもいないし安全なんだ。レーナ姉ちゃんのときも今の僕みたいに、ここを使ったらしい。

 僕はそのとき、意識を失ってたので見れなかったんだよなあ。


「僕のスキル、どんなのになるかな」


「私としてはダンジョンに関わらないスキルであって欲しい」


「そうなんだ」


「危険があるもの」


 でも僕の一押しは、レーナ姉ちゃんみたいな身体強化系なんだよね。これからは自由に動ける身体を手に入れるんだから、さらにハイスペックになりたいって思ってるんだよ。


 筋肉とかも付いてないからなあ。

 徐々に筋トレでもいいけど、すぐにでも飛んだり跳ねたりしてみたい。


 それか魔法。

 できればカッコイイ雷系。

 もう雷系ってだけで主人公じゃん?


 でもそうなると将来は冒険者ってことになっちゃうよね?


 戦闘できるのかって言う不安と、ろくに学校へ行けなかった僕が年齢層の幅が広い、冒険者専門学校に馴染めるかも不安だったりする。

 合宿に行けば2週間くらいで免許取れるそうだけど。


 そう考えると生産系でも色々できるから、いいかもしれないとかも思う。婆ちゃんだっていつまで畑できるか分かんないしさ。


 農業系もありかな?

 ダンジョン食材って美味しいから、婆ちゃんの野菜って人気あるもんね。


 うーん……でもやっぱり身体強化系かな?。

 畑仕事にだってパワーは使えるしさ。

 パワーって使い勝手がよさそうだもん。


 うん、そうだねパワーだ。


 願いながらスキルを受け取るといいみたいなジンクスもある。

 来い! パワー系っ ぱわーっ!


「あっ、来た来たっ!」


 僕に染み込んでくるスキルが、僕の魔力を吸っていく。

 おぉー?

 身体が……軽くなった!


「ンッ? うわあぉ、スゴイ。これがスキル……僕のスキル」


 ダンジョンコアから情報が流れてくる。


柄山太一カラヤマタイチ

 スキル:統べる者ダンジョンマスター


【ダンジョンマスター取扱説明書】

・ダンジョンマスターとは当ダンジョンをべる者です

 当ダンジョンを慈しみ、大事に育てましょう

 ダンジョンは魔力で成長します

  ※そのためリソースは他に割かないほうが効率よく育てられます

 ダンジョンに入り、魔力をチャージしましょう


・ダンジョンの操作について

 ダンジョンマスターが現れた世界や時代に合わせたデバイスが与えられます

 ダンジョンマスターが最も操作しやすいと思うデバイスを思い浮かべてください

  不懐属性が付与されたダンジョンマスター専用デバイスになります

  直感的に操作しやすいシステムが構築されます


・発想と工夫を凝らしてダンジョンを作りましょう

  ※あなたの心次第で、いかようにでもダンジョンは成長します


 僕に生えたてきたスキルは、パワー系でも魔法系でもなく生産系なのかな?

 しかも複合型って感じの。


「操作しやすいデバイスかあ」


「デバイス? 生産系?」


「うーん……かなあ?」


 うーん、まあスマホだろうね。

 持ち運びも楽だし。

 って思ったら僕の目の前に宝箱が出てきた。


 スマホしか入ってないからスッカスカだった。

 取り出すと床に吸い込まれるみたいに、空っぽの宝箱が消えていく。


「おーっ? 不思議なスキルだなあ、ダンジョンマスターって」


「えっ、ちょっ、太一くん? ダンジョンマスター!?」


「ちょっと待ってて、レーナ姉ちゃん。調べてみるから!」


 今のって僕はなんにもやってないんだよね。

 自動で処理されるものもあるってこと?

 ググってみた結果、小説やゲームなんかがヒットするだけ。

 スキル考察サイトも見てたけど、ダンジョンマスターなんてなかったはず。


「自力で試していくしかなさそうだね」


「少し落ち着いて、太一くん」


「平気だよ? 今日は調子いいもんね」


 不思議部分はとりあえずダンジョン7不思議としておこう。


 ダンジョンスマホを起動してみると、階層の追加やフロアのカスタマイズ、モンスターの召喚なんかのアイコンが並んでた。

 スキルの説明書もここに入ってるみたい。


「できること色々あるみたい!」


「待って、太一くん! 落ち着いてっ」


 魔力過多症のせいで僕は家族に負担を掛けてきたからね。

 学校だってろくに通えてないから就職も難しいと思うし。

 そして今さら勉強は頑張りたくはないのでっ!


 ダンジョンマスターっていう僕のスキルで、大富豪チャレンジしちゃおーっと。そしたらレーナ姉ちゃんにもチョットだけ近付ける気がする。

 エリートだからなあ、レーナ姉ちゃんってば。


「んふふ」


 ワクワクしてきたっ!


「──! ────!」


 あれ? レーナ姉ちゃんどうかした?

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