30 空中庭園

 今日から1週間、アルバイトやボランティアの冒険者さんなしで、僕らだけになるダンジョン動物園。

 アスレチック場の遊具追加や、空中迷路のアイデアを家族で相談するよー。


 特に空中迷路。

 スッゴイいいアイデアなので、ぜひぜひ実現させたいよね!


「みんなで相談すれば、いい発想が生まれるはず」


「婆ちゃんも母さんも手伝ってね!」


「もちろんですよ」


「冒険者さんは面白いこと考えるわよねえ」


 空中に迷路だもんね。

 そんな発想ないから全然思いつかなかったよ。飛ぶ冒険者さんも見たのに思いつかなかったから、チョット悔しい。


「それにしても空中ですか……落ち着かなそうですねえ」


「でもお義母さん、楽しそうじゃない?」


「どうでしょうか」


 婆ちゃんにはあんまりなアイデアみたい。

 僕も母さんと同じで、楽しそうって思ったんだけどな。


「落ち着ける場所を空に?」


「空にいる時点で落ち着かなそうですが」


「庭園……空中庭園はどう? お婆様」


 レーナ姉ちゃんのアイデアで「それならまあ」みたいな感じになった。和風の庭園を空に浮かべる。それはそれでファンタジーの味が濃いかもね!

 ウキウキしてきたっ。


 どんなのがいいかな?

 下が見えたほうがいい?

 いや、それは落ち着かないヤツだから迷路だけでいいか。


「庭園の外周には柵が必要ですね」


「太一、簡単に飛び越えられないようなサイズにしないとダメよ?」


「分かったっ」


 空中に作るんだから、地上の景色もよくないとあんまり意味はないかもだ。見える所の景色は徐々に、かなあ?

 空中庭園は魔力ポイントを結構使いそうだしね。


「太一くん、どうやって空中庭園まで行く?」


「スロープとか階段じゃあイマイチだもんね」


「虹のスロープならファンタジーよ」


「キャトルミューティレーションみたいに、シュワーっと上昇させるのはどうかしらねっ?」


「面白いことを考えますね、2人とも」


「ねっ。じゃあどっちも採用ってことで!」


 空中庭園はノンビリ和風施設をメインで建てることに決定。

 出入りするときはテンションが上がりそうな虹でできたスロープと、透明で光るエレベーター。


「場所は……1層がいいかな。全部の階層はポイントが高そうだし」


「2層の子たちも入れるように通路を付けるべき」


「分かったー」


 その場合はCランクの冒険者さんと接触しないように、分けないとダメだね。1層の子たちだけ通れるように設定したドアを付けるしかない?

 そんなのあるのかな……冒険者さんを分けるんじゃないからできそう?


「えーっと? モンスター……判別? かな? あ、あるね」


 じゃあこれをドアかゲートにしちゃえばオッケーっと。

 モンスターのみんなだけが入れる場所も作るっと……空中迷路にすればいっか。迷路はノンビリスポットから眺められるようにしよう。


「迷路は透明にするの? 太一」


「透明なチューブがいいんじゃないかなーって」


「チーちゃんたちの邪魔になりませんか?」


「確かに。空に迷路を張り巡らせると邪魔になりそう」


「それがあったかあっ」


「少し低めの場所にしたらいいんじゃない?」


「あ、そうだ! 地面のアスレチックとくっ付ける感じで、空中庭園との間に作っちゃうよ」


 それに透明なチューブじゃ見えないから危ないよね。


「迷路というより遊歩道みたいなのでもいいのではありませんか?」


「うーん、そうだよねえ」


「キャットタワーとキャットウォークを合体させる感じのもの」


「それ、いいじゃないのレーナちゃん」


 そうしよっかな。花ちゃんや鹿園さんたち、サラちゃんが遊べるサイズで作るチューブだとギッチギチになりそうって、今思った!

 丸見えで空から景色を楽しむのは人間だけでいいもんね。


 モンスターたちなら隠れるような場所があるほうがいいと思うしさ。

 落下防止の部分を透明な足場で作れば空中散歩ができる。

 迷路じゃないけど雑多に組み上げれば楽しめるんじゃないかな!


 このアイデアなら空にも自由が残るしね。

 空中庭園は完全にノンビリするところってことでっ。



「ポイントは?」


「あるよ!」


 コクリと頷き合う僕とレーナ姉ちゃん。

 現場でバランスを見ながら作ろーオー!


「犬カート、好き」


 犬ぞりに憧れてしまった僕が買った犬カートへ乗車しまーす。

 ミルクやだんがんくんもドハマりしたよ。

 引っ張るのが大好きみたい。


 スケアリーウルフたちはねえ、元気すぎるからね。

 チョット危ないときもあるんで……婆ちゃんだけは花ちゃんに乗ってもらうしかないんだけどさ。


 犬ぞりが面白そうって思ったんだけど、ダンジョンは雪道じゃないからね

 ゴルフ場のカートにしたんだ。中古で買って改造してもらった。

 エンジンとかいらないしね。


 そしたらコラボもしちゃったのだ。

 メーカーさんと。

 あの有名なYAMAKIですよ! 世界のYAMAKI!


 チーちゃんモデルの楽器とか、だんがんくんモデルのバイクがその内販売されるそうです。チョットだけ値段は上がるけど、その分は魔力過多症支援団体への寄付が決定してるよ。


 ゴルフカート買ったら不思議なことになっちゃったんだよね。


 犬カートって名付けた理由は単純です。

 ウルフくんたちはオオカミっぽくないからです。

 見た目はシベリアンハスキーの子犬なので。


 動力は引きたい子たちに担当してもらってるんだ。

 一番情熱を持って引っ張るのはだんがんくんだけど、いるかさんやサラちゃんも引っ張りたいみたい。


 運転はレーナ姉ちゃんにお任せしてるよ。


「そうだ太一くん。ギルド側の出入り口に鍵は追加した?」


「ダイジョブ。言われてすぐに追加したし、今も鍵かけてるよー」


「なら問題ないわ」


「鍵をかける習慣がありませんでしたからねえ」


「私もうっかりだった。凄く大事なことなのに冒険者から言われて気付くとは」


「レーナちゃんには、かけるのもかけないのも経験済みで、どっちも当たり前だったんじゃない? だからスッポリ抜けてたのよ。きっと」


「不法侵入されてないし平気だよ!」


「そういう問題ではないわ」


「意識の問題でしょ? 知ってるー」


「そうね、みんなで気を付けましょっ」


「到着」


 カートは楽ちんなので買ってよかったーって思ったけど、運動のメニューが増えてたのでチャラでした。


 空中庭園と空中遊歩道。

 設計図というか完成図というか、アイデアはパソコンのなんちゃらってソフトで作ってあるんだ。


 だからそれを見ながらダンジョンマスターの力を使えばいいよ。

 まずは起点になる空中庭園からだね!

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