第21話:転校生には敵わない
インタビュー部員の朝は早い。
なんてことはなく、普段通り7時に目覚め、準備していつも通り登校する。
玄関を開けて外に出たが、そこに舞の姿はなかった。
昨日、また明日って言ってたんだけどな。
1人で登校している間も出会うことはなくそのまま学校に到着した。
まあ、いつもの帰ったらいるパターンだろう。
教室に入ると少し違和感があった。
俺座っている列の1番後ろに1つ机が追加されていたのだ。
こんなタイミングで転校生でも来るんだろうか。
それとも他のクラスから移動とか。
まあどうでもいいか。
そもそも俺の席はその席の2つ前だから関係のないことだ。
いつも通り騒がしい教室で待機していると、後ろの席の女の子が話しかけてきた。
名前は…なんだっけ。
確かクラス委員の…
「突然ごめんね、さっき先生に呼び出されて私と向井くんの席を入れ替えるように言われたの。理由は朝分かるって言ってた」
なんだそれ、まあ後ろになったしいいか。
「分かった」
そうして荷物だけ入れ替えて席を交換した。
プチ席替えを済ませるともうチャイムがなる時間だった。
ホームルーム開始のチャイムと同時に先生、滝ちゃんが入ってきた。
「みんなおはようございます、気づいている人もいるかもしれませんが、実は教室に席が1つ追加されてます」
そう言うと気づいてなかった人もいたのかざわざわし始めた。
本当に転校生だったらしい。
「そう!みなさんの想像通りです、転校生でーす!じゃあ入ってきてくださーい」
「失礼します」
そう言って入ってきた姿を見て愕然とした。
鯉のヘアピンをつけて白星高校の制服を纏った女の子が教卓の前に立った。
「では自己紹介をお願いしまーす」
「伊手真舞です、よろしくお願いします」
そう言ってとびきりの笑顔を見せた。
教室内ではかわいいとか何あの魚とか言ってる声が聞こえる。
かつてないほどにざわついていた。
「はい、みんな色々聞きたいと思うけどすぐに授業始まるから休み時間にゆっくり聞いてね〜。それじゃ角の空いてる席に座ってね」
そうして俺の後ろの席に着席した舞は特に何も話さなかった。
それが余計に怖い。
休み時間は俺の後ろでクラスの人に囲まれていたので特に話すこともなかった。
うるさくて避難していたから余計にだ。
昼休みが始まって話しかけられる前に教室を後にした。
教室を出る前クラスメイトに囲まれている姿が見えたので追ってくることもないだろう。
そうして教室を出るといつも通りインタビューちゃんが構えていた。
こうして袖を掴まれながら部室に連れて行かれた。
部室に到着すると小池さんもすでに到着していた。
「あ、向井くん」
「こんにちは小池さん」
「ちょっと、なんで私にはあいさつしないんですか」
インタビューちゃんが不満そうな顔になった。
「なんでだろうな」
不満そうなインタビューちゃんを横目に小池さんと向かい合う形で一番奥の椅子に座った。
インタビューちゃんは俺と小池さんの間、廊下側を見るように座った。
リーダーが座る席って感じだ。
「一つ質問させて欲しいんだけど」
「なんでしょうか、向井くん」
インタビューちゃんが先生みたいに話した。
「これって毎日集まるのか」
「当然でしょう。前にも言いましたが集まって食べるもんなんですよ」
そういうものなんだろうか。
聞いたことないけど。
「私も向井くんがいたほうが嬉しい。その、人数が多いほうがいいし」
「じゃあ毎日きます」
「なんか私の時と対応違いますよね」
「そんなことないよ」
インタビューちゃんはまたも不満そうな顔になった。
ちょっとやりすぎかな。
今度こっそりお詫びする方法でも考えておこう。
「そうそう、重大ニュースがあるんだけど」
「なんですか、新たな部員でも見つけましたか」
「違うよ、舞が転校してきたんだよ。俺のクラスにいる」
インタビューちゃんと小池さんがフリーズした。
「だからここに来ることもあるかもしれないな」
「それ、大事件じゃないですか!」
「あの人ちょっと怖い」
フリーズから解除された2人が話し出した。
「まあ事件っちゃ事件か、まあなんで来たかとか聞いてないから分からないけど何もしてこないだろ」
「そりゃさっくんには何もないかもしれませんけど、私攻撃されてますからね」
そういえばそうだったな。
「私も怖い。前見た時私を見る顔がちょっと怖い気がした」
小池さんも怯えていた。
何もないとは思うんだけどな。
「そういうことなら、ここには近寄れないように頑張るよ」
「無理だと思いますけど頑張ってください」
信用ねぇのな…
☆☆☆
舞が来ることを恐れたのか早々に2人が立ち去ったので1人悲しく教室に帰っていた。
近寄らせないとは言ったものの特に案もないんだよな。
てか無理だろうな。
とりあえず舞と話さないことには何も始まらないな。
なぜか休み時間だったのにドッと疲れを感じつつ、教室に入った。
それと同時に昼休み前に舞の周りにいたクラスメイトに囲まれた。
そしてその中の一人が話しかけてきた。
「向井くん、伊手真さんと同棲してるってほんと!?」
なんだそれ。
ちらっと席に座っている舞を見るとニヤニヤしていた。
「してないが」
「あれ?そうなの?じゃあ付き合ってるんだよね」
本当に何吹き込んだんだ。
「付き合ってない」
「嘘!伊手真さんが言ってたよ」
「本当に何もないぞ」
「え〜、聞いた話が結構リアルだったんだけどな。家事してるって言ってたし」
それは本当だけど言ったらめんどくさそうだから伏せておこう。
「とりあえず何もないから、本当に。全部適当言ってるだけだ」
そう言って人を押し除けて席についた。
「適当言うのやめとけよ、誤解生むから」
「半分くらい本当だよ」
「そのもう半分をやめてくれ」
「いいじゃん、みんな楽しそうに聞いてたし。まあ、男の子だけ残念そうな顔してたけど」
なぜかニヤニヤしながら話を続けていた。
「何したんだよ」
「話をしただけだよ」
「まあそれはいいとして、なんでここにいるんだ」
「生徒だからだよ」
話にならねぇ…
しかもわかっていて返答しているみたいだ。
ずっとニヤニヤしていた。
「そうだ、放課後この学校案内してよ、前きたけどあんまり見れなかったし」
「悪いが放課後は…やっぱなにもない、分かったよ」
部活があるって言ったら来そうだし今日のところは伏せておこう。
「やった〜、約束だからね」
小指を出して指切りを要求してきた。
ここは素直に従っておこう。
指切りをすると舞は満足そうな顔になってクラスメイトのところへ走って行った。
もう仲良くなったのか。
そのコミュニケーション能力だけは本当に尊敬している。
そのコミュニケーション能力で小池さんとも仲良くして欲しいもんだけど。
先が思いやられる。
インタビューちゃんには敵わない kit @kitjp
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。インタビューちゃんには敵わないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます