第16話:乙女の行動には敵わない

 初のインタビューが終わり教室に戻っている最中のこと。


本来は大成功?に喜び、それはもう素晴らしい空気になっているに違いないだろう。


しかし現実はそう甘くなかった。


「やっぱりインタビューは最高ですね!舞さんどうでしたか?インタビューを見て、興味が湧きました?湧きますよね!」


「そうだね、インタビューを通じて敵をはっきり確認できたからね。来てよかったよ」


笑顔が溢れるインタビューちゃんと何故か顔の怖い舞。


どうしてこうなったのか。


そしてどうしてインタビューちゃんは何も気にせず話しかけられるのか。


真実は未だ謎に満ち溢れている。


こんな状況で何だが歩きながらも口の回転が止まらないインタビューちゃんに話をしなければならない。


今日のインタビューのことだ。


「あー、そのなんだ、左鳥、今日のインタビューで分かったことがあるんだが」


「あ、やっぱり!そうですよね、分かってますよ!さっくんがインタビュー部に来てよかったって話ですよね!」


何も分かってなかった。


「いやまあ、うーん…まあそれは置いとくとして。そうじゃなくてだ、俺は質問者としては不向きだってことだ」


先ほどまでとは一転しインタビューちゃんは不安そうな表情になった。


「…どうしてそう思うんですか?」


「今日のインタビューはそこまで長い時間行われたものじゃないだろ。だから仕方のないことかもしれないが、俺は精一杯質問を考えたつもりだ、だが1つだ。1つしか質問できなかったんだよ」


人には向き不向きがある。


その不向きがたまたま今回来ただけの話だ。


「それが何か問題でも、あるんですか」


「問題あるだろ、俺は今回質問者として同行したつもりだったんだ。それで俺は全く役に立たなかった。そしてそれは左鳥、お前も理解しているだろ」


不安そうなインタビューちゃんの表情が一変して真面目な表情に入れ替わった。


「理解していません、それにしたくもありません」


よく分からないことを言われた。


こいつの話はたまに難しくて理解に苦しむ。


「訳わかんないって顔ですね」


ばれた


「さっくんが頑張ってくれてたことは理解できます。しかし、役に立たなかったことは理解できないって話です」


「だが事実だ。そこだけは変わらない」


インタビューちゃんは目元に涙を浮かべながら話していた。


「どうしてそこまで…あなたもなんですか、あなたもいなくなるんですか」


何やら話がややこしくなってきた。


「いや、別にいなくはならないよ。ただ質問者、この立場は俺には無理だって話だ」


薄らと涙を浮かべながらも驚いた表情だ。


「え、じゃあどういう…」


「俺はインタビュー部から消える訳じゃない。今更他に行くあてなんてないんだ。ただ左鳥、俺はお前のサポートに徹するって話だ」


そう、俺にはもう行くあてなどなくここに居座るしかない。


だが向いてない質問者を続けてもいずれ迷惑をかけるだろう。


だったら得意なやつのサポートに回ればいい。


「え、じゃあやめないんですか」


「だからやめないって、そもそもやめるなんて一言も言ってないだろ?」


勝手に勘違いしていたインタビューちゃんは目元を少し赤くし頬も火照っているようだった。


「あの〜何だかよく分からないけどさ、この展開についてけないんだけど」


痺れを切らしたのかいつのまにか普通に戻っていた舞が口を開いた。


「俺もこんなことになると思ってなかったよ」


「私!今日は先に帰ります!また明日!」


そう言ってダッシュで部室へ向かった。


「何だったんだ、あれ」


「まぁ、乙女にはああやって逃げたくなる時もあるってことだよ」


お前が乙女の何を知っているんだと思ったがつっこむのはよそう。


後が怖いしな。


「まあ、いいか。俺たちも帰ろう」


「そうだね」


なぜインタビューちゃんが走り去ったのか疑問が拭えないままだったが、また明日考えよう。


今日はもう疲れた。


疲労感をどっと感じ、走ることなくゆっくり2人で部室に戻って行った。


☆☆☆


 部室に到着した時には既にインタビューちゃんは姿を消していた。


部室の真ん中には「鍵をかけて職員室に返却お願いします」と走り書きで書かれたメモが置いてあった。


俺と舞は速やかに教室を後にしメモにあった通り鍵を返却し学校を後にした。


外は既に暗くなっており、街灯が照らす街を2人で歩いていた。


「舞、今日はうちに泊まるのか?」


すると舞はニヤけた表情に変化した。


からかってくる合図だ。


「え〜、なになに〜、やっぱり私がいないと寂しいってこと〜?」


ほらきた


「違うよ、2人で飯にするなら買い物に行った方がいいと思っただけだ」


「またまた〜そんなこと言っちゃって」


少しめんどくさくなってきたが愛嬌だと思って耐えた。


「今日ももちろん泊まるよ、と言いたいところだけど今日は帰るよ。色々準備もあるしね」


そう言ってウインクをした。


準備って…明日何かあるのだろうか。


「分かった。ところで学校はどうだった」


「うん、見てて楽しかった。今日は色々迷惑かけたみたいでごめんね」


珍しく申し訳なさそうに謝罪してきた。


調子狂うな。


「まぁ、楽しかったならそれでいいよ。また来なよ、せっかく色んな人と話してたんだしさ」


「…うん。また近いうちに…ね。今度はとびっきりのサプライズ用意していくから楽しみにしてて」


そう言って笑顔を見せた。


何をされるのか恐ろしい。


ろくなことにならないのは目に見えている。


「あまり余計なことはするなよ。追い出されるからな」


「そうはならないようにするから大丈夫だよ」


不安だ。


人と話しながら歩いていると目的地に到着する時間が短く感じるように、いつも歩いている道が短く感じた。


会話を続けていると家の目の前に到着していた。


俺の家の向かいにある舞の家は俺の家と見た目が少し似ている。


明るい色が多めに使われている2階建の少し庭がある一般的な一戸建てといったところだろうか。


いつもは俺の家と舞の家の間であるこの道路でよく話し込んでいる。


舞がなかなか家に帰らせてくれないからだが。


今日は疲れたのかすぐに帰れた。


「じゃあまた明日な」


「うん、また明日…ね」


そう挨拶を交わすとお互いが背中合わせになって家に向かって進んでいった。


「さく!」


少し進んだところで舞に呼び止められた。


振り返ると舞が珍しく真面目な顔をしていた。


「これからさくは私に集中することになる!覚えといて!」


そう言って指を銃のように見せ、またウインクをした。


「何よく分からんことを言ってるんだ」


「今はまだ分からなくていいの!それじゃあまた明日ね」


そう言って家の中に姿を消した。


何だったんだ。


変なことを言うのは割と日常的なことなので気にするだけ無駄だろう。


そう思い考えるのをやめ家に入って行った。

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