第23話:部活見学ねくすと!には敵わない
結局実習棟まで来てしまった。
本校舎から100mほどの位置にあるのでそこまで遠くない場所だ。
「初めて来たよここ!綺麗だね、さすが私立」
「そりゃ今日転校してきたんだから初めてだろうよ」
「ね、早く行こうよ!」
そう言ってまた袖を引っ張られた。
もう俺いらないのでは。
ここも教室のある中央校舎と同様に1階から4階まで存在する。
実習で使う教室は全てこの棟にまとめられているらしい。
舞に引きずられながら1階を進んだが、教室がどこも空いていなかった。
当然と言えば当然か。
その光景をみた舞は少し残念そうだった。
「どこも空いてないのかな、それなら今日見ても仕方なさそうだね」
帰れそう。
「そうだな、授業で来る機会ももちろんあるし今日はあきらめるか」
「んー、そうだね今日はあきらめるよ」
なんかやけにきっぱりあきらめたな。
「代わりにインタビュー部いこ!まだ時間あるよね」
そういうことか。
時間はまだ17時過ぎ、全然余裕だ。
でもなー、しずちゃん怒ってたしなぁ。
「インタビュー部って、何しに行くんだ」
とりあえず理由ぐらいは聞いてやろう。
「部活見学だよ!部活見学ねくすと!」
まああの雰囲気見たらもうインタビュー部に寄り付かなくなるだろ。
そう考えたらいいかもしれん。
「わかった、行くか」
「やったー!さくが珍しく優しい!」
そう言ってる舞はニヤニヤしていた。
「もう行くのやめようかな」
「嘘だって!いつも優しいよ、ありがとう」
そういった舞は今日一の笑顔だった。
まっすぐインタビュー部へ向かうとすぐに到着した。
ただ、さっきまでとは違い随分静かになっていた。
「ちょっとまってろ」
「はーい」
そう言って俺だけ先に教室へと入った。
入ると予想通りインタビューちゃんとしずちゃんがいた。
「あれ、さっくん今日は来ないんじゃ」
「お前遅刻してんじゃねぇよ、お前の代わりに私がこの資料作るハメになってるんだぞ」
それはすまん。
静かだと思ってたけど話してなかっただけだった。
「それが舞に学校案内してたんだけど」
「やっほー!来ちゃった!」
話そうとしたら舞が入ってきた。
まあこうなる気はしてたよ。
「舞さん、お話は聞いてましたよ。転校してきたって」
「そ、だからこれからもよろしくねー!」
インタビューちゃんは意外と冷静な対応だった。
もっと顔ひきつったりするかなって思ってたけど。
「向井くん、そちらの方は?」
「伊手真舞、俺の幼馴染で今日転校してきました。」
しずちゃんは猫をかぶった。
ほんと器用な人だ。
「伊手真舞です、よろしくお願いします。」
舞も珍しく丁寧に挨拶している。
「こちらこそよろしくね」
「ねえちほちゃん。さっき教室から怒鳴り声みたいなのが聞こえたんだけど、あの人はいないの?」
それ聞いたらダメなやつだ。
目の前にいる人がそうだぞ。
てかインタビューちゃんの名前いつ知ったんだよ。
「あ、その人なら今目の前」
「その人なら今はいないわよ。今はね」
しずちゃんがインタビューちゃんの言葉を封じた。
いつかバレるだろうに。
「そうなんですね。ではまた紹介してください」
そう言った舞はニヤニヤしていた。
たぶん気づいてるなこれ。
「で、お二人は何しにここへ?」
言葉を封じられていたインタビューちゃんが再び話し始めた。
「部活見学だよ!もう一回!」
「なるほど、では丁度いいですね。今前回のインタビューをまとめた記事を作ってたんですよ」
そこにはインタビューの内容をわかりやすくまとめた記事があった。
しずちゃんが怒ってた原因はこれか。
「それまとめてどうするんだ」
「一旦部室に保管します。いつか公開できる日が来るといいですね」
見たいと思う人はいるのだろうか。
「ほら、普段はこんな感じでインタビュー記事作ったりしてるんだってさ」
「へー!面白そうだね」
ほんとかよ。
「すみません、絵面が地味で。もっと面白いことできたら良かったんですけど」
そう言ったインタビューちゃんは本当に残念そうだった。
なんか舞には丁寧なんだよな。
「いいじゃんそれ、楽しそう!なんか読書感想文みたいな感じでいいと思う!」
それ人によっては嫌がる人もいるよな。
全然フォローになってないと思うけど…
どうやらインタビューちゃんには刺さっているみたいだ。
「そう言ってもらえて嬉しいです」
そう言ったインタビューちゃんは本当に嬉しそうに笑みを浮かべていた。
インタビューちゃんには敵わない kit @kitjp
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