第14話:吹奏楽部には敵わない
放課後の廊下はいつも騒がしい。
それは部活が盛んなこの学校では日常である。
しかし今日はそれ以上に騒がしい。
騒がしいやつがいつもより多いからである。
「ねぇさくみて!あれって何部?すごい声出てる」
舞が指を指した先には掛け声を出しながら並んで走っている集団がいた。
よく見たらその中に同じクラスの調本計人がいるのを見かけた。
「あれはサッカー部だな」
「へぇ〜、うちの学校より強そうだね」
そっちの学校のことは知らないが結構失礼だぞ。
「うちの学校ではほとんど全ての部活があんな感じでやる気に満ち溢れています。やる気の無い部活は見たことないです」
インタビューちゃんが説明口調で話した。
さっきの舞を見てビビってるんだろうか。
「へぇ〜、やっぱり学校によって差があるんだ。やっぱり来てよかったよ、今後のためにもこっちの学校のことよく知りたかったし」
「今後のためにって、戦いでもふっかけるつもりかよ」
「まぁまぁ、それはそうとして部室棟って結構遠いんだね」
話を逸らされた。
本当に何するつもりなんだ。
「もう着きますよ。ほら、あちらが部室棟です」
見えてきたのは教室がある校舎と同じくらいの大きさの部室棟だ。
いつ見ても本当に大きいと思う。
「さすが私立!やっぱり大きいね」
舞がいつになく楽しそうでよかった。
暴れられると困るからな。
「時間が迫ってきてるので急いでいきましょう。部室は3階です」
「ここ3階もあるの!部活の数多すぎない!?」
「それは本当に思う。教室1個も空いてないみたいだしな」
「そんなことより早くいきますよ!急いでください」
インタビューちゃんが急かすほどには時間が迫っているらしい。
急いでいるインタビューちゃんは階段をひょいひょい上がっていく。
それに合わせて舞も上がっていく。
しかし俺は運動してなかったせいかそんなスピードで階段を登ったら息切れを起こすのがすぐ分かったのでゆっくり登ることにした。
「さく、早く来て!遅れちゃうよ!」
「運動してない俺にはきついんだよ、階段ダッシュ」
「もぉ〜だらしないんだから。ほら、おぶってあげる」
そう言うと腰を低くして背中を向けてきた。
「絶対に嫌だ」
流石に女の子におぶってもらうのは抵抗がある。
気にしないこいつが怖い。
「分かった、じゃあ早く行くよ」
そう言うと俺の手を引っ張って早歩きで上がっていく。
ゆっくり行こうとしたのに。
しかしこれのおかげで早く行く事ができた。
3階に到着するとインタビューちゃんが手を振っていた。
「早く来てくださ〜い」
彼女が手を振っていた場所こそ今回のインタビュー先、吹奏楽部部室である。
手を引っ張られながら歩くとすぐに到着した。
「うわ、でっか〜い!これが吹奏楽部?」
「そうです、これが今回協力してくださった吹奏楽部です。もう時間ですので入りましょうか」
時刻は18:30、時間ぴったりだ。
時間ちょうどに行くのはあまりよろしくはないが、学校内なら問題ないだろう。
「すいませーん!インタビュー部でーす!」
そう言ってドアを叩いた。
すると大きなドアがすぐに開いた。
「はい、お待ちしてました。どうぞ中へ」
出てきたのは小池さんだった。
なぜか初めて会ったときのような感じで接してきた。
舞がいたからか?
見たことないしな。
中へ入ると右には演奏するであろう人たちが大勢楽器を持って座り、それぞれの楽器ごとに並んでいた。
教室の前方にあたる左手の黒板の前には部長が座っていた。
「よく来たな。待っていたぞ、ほら、ここに座るといい」
席は既に用意されており、部長と対面になる形で机と椅子が用意されていた。
「それでは失礼します」
そう言ってインタビューちゃんが座りに行ったので俺と舞もついていった。
「本日はインタビューを受けてくださり、ありがとうございます」
「なに、構わないさ。それに言っただろ、あいつのおかげだ」
そう言った部長の視線の先には小池さんがいた。
小池さんは見られて少し照れていた。
小池さんマジ感謝。
「そういえばそちらは?前回は見なかった顔だが」
舞のことだ、前回はいなかったからな。
「私は伊手真舞です。ここにいる向井作のかの…」
「幼馴染です」
「そう、幼馴染です。この学校の生徒ではありませんが、部活見学で来ました」
その間違いどうにかならないのか。
いつか定着しそうで怖い。
「なるほど他校の生徒か、歓迎しよう。今日は是非色々見ていくといい」
そう言って椅子を持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
舞がいつもより静かで助かる。
うるさかったら本当につまみ出してたからな。
「では、インタビューを始める前に少し聞いてもらおう。吹奏楽部がどのような部活であるのかを」
そう言って部長が指揮者であろう人に目線を送ると演奏が始まった。
いきなり壮大な感じだ。
こういう曲ぜんぜん分かんないんだよな。
しかしすごいのは伝わる。
これが音楽の力…
舞とインタビューちゃんが感動しているのか、見惚れているようだった。
演奏自体は4分ほどで終了した。
素晴らしいと演奏に思わず俺含め3人とも拍手していた。
そして舞が小さな声で話してきた。
「何かわかんないけどすごいね」
どうやらこいつも分かってなかったらしい。
すると拍手を終えたインタビューちゃんが部長の方に体を向け話し始めた。
「わざわざありがとうございます。これは、エル・クンバンチェロですね」
インタビューちゃんが丁寧にお礼をしていたので俺も少し頭を下げた。
「いや構わないさ。人前で練習することもあまりないからいい機会だと思ってな。しかしよく知ってるな、こういう曲に詳しいのか」
「少しだけですが聞いています。まだあまり詳しいわけではありませんが」
インタビューちゃんは知っていたみたいだ。
意外と博識なのかもしれない。
「なるほどな、まあ長話も何だろう。早速始めようか」
「はい、お願いします」
ついに始まるみたいなので俺も少し緊張してくる。
今日はほとんど見学のつもりだが。
「皆!片付け終わり次第前に集合だ!インタビューが始まるぞ」
『はい!!!!』
部長の大きな声で全員が返事をした。
そして片付けをした部員がぞろぞろと部長の後ろに集まりついには全員が集まった。
こんなことになるとは思っていなかったのかインタビューちゃんも驚いた表情だ。
俺はもう喋れん。
唯一見学している舞は普通だった。
「さぁ、始めようか。なんでも聞いてくれたまえ」
部長は胸の前で手を組んで強気だ。
それを見てインタビューちゃんは緊張して少し汗を流しているが楽しそうな表情だ。
なにこれバトルでも始まるのか。
そう考えると俺の緊張はどこかへ飛んでいった。
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