第3話:人間関係には敵わない
教室の中はいつも騒がしい。
今日の授業がどうとか、部活がどうとか放課後どこに行くかなど話題が尽きない。
少しは静かにできないのか疑問である。
「いつもより疲れた顔してるな。何かあったか?」
「お前に話しかけられたせいだよ、計人」
黒髪のイケメン、調本計人だ。クラスの中でも誰とでも仲良くできるタイプで、一人の俺にもたまに話しかけてくる。ここで勘違いしてはいけないのが、友人ではなくただのクラスメイトであるという点だ。
「相変わらず冷てーな。そんなんじゃこの先やってけーねぞ」
「痛っ!」
チョップをお見舞いされた。少しは考えを見直そうと思った。
「おーい!計人、放課後どこ行くか決めようぜー」
「あぁ!すぐ行くよ」
響き渡る様な大きな声で返答をする。
「それじゃ、何があったかは知らねーけど、困ったら相談してくれよな」
そう言い足早に去っていった。
今日は面倒ごとが多い日かもしれない。そう思った。
少し時間が経つと始業のチャイムがなる。チャイムと共に教室は静まり返る。さすが名門校だと思う。
⭐︎⭐︎⭐︎
授業は6限まで存在し、4限と5限の間には昼休みが存在する。
そんな昼休みは当然の様に騒がしくなるため、人気のない校舎裏のベンチで食事をすませる。
この静かな空間に流れる風の音が気持ちいい。
そう思っていた矢先に…
「あっ!見つけた!!」
朝出会った例の彼女が目をキラキラさせながら近づいてくる。
俺だけの空間にヒビが入る。そんな感じがした。
「探しましたよ!どうしてこんなところにいるんですか?」
不思議そうな顔で聞いてくる。
「どうしても何も昼休みはいつもここにいるんですよ」
人と目を合わせるのは苦手なので顔をあさっての方向に向けながら話す。
「昼休みにインタビュー部に来るように言いましたよね?」
何を言っているのか分からずすこしフリーズしてしまった。
「いや、放課後と伺ってますが」
「あれ?そうでしたっけ。まあいいから来てください」
そう言うと無理やり袖を引っ張られる。
抵抗しても無駄なので諦めてついていくことにした。
⭐︎⭐︎⭐︎
「ここです!さぁ入ってください」
部室に到着したようだ。一見すると普通の教室だが、しっかりインタビュー部という札が刺さっている。
「失礼します」
少し遠慮気味に入る。
「ようこそ!インタビュー部へ!あなたとあなたの持つ探究心を待ち望んでいました!!」
彼女はとんでもない声量で話しながら部屋の中に入っていったが、段ボールにつまづいてこけた。
部屋の中は見渡す限り段ボールと何に使うか分からない小物だらけである。はっきり言って汚い。
「これが部室ですか?とてもそうは見えないんですけど」
「汚くてすみません、まだ部屋を貸してもらったばかりで片付いてないんです」
テヘッという効果音が出ると思うぐらいの表情で話す。
「まあ、汚いのは全然大丈夫です。片付ければいいだけですし。それで、昼休みに何をするんですか?」
「とりあえず、入部届を書いてもらおうと思いまして。それを書いてもらわないと入部したことにならないので」
そう言い、小物の山もといゴミの山から入部届を探し出してきた。
入部届は名前とクラスを書くだけでかなり単純なものだった。
「入部届はこちらで出しておくので、預かっておきますね」
「ありがとうござます。それで、顧問の先生はいらっしゃらないんですか?」
「一応、私のクラスの副担任の先生に担当してもらうことになってます。まあ、たまに遊びに来るぐらいです。また紹介しますね」
「分かりました。それではまた放課後にここに来ます。もうすぐ昼休みも終わりですし」
「そうですね、ではまた放課後お会いしましょう」
そう言い教室を後にする。後ろを振り返ると笑顔で手を振っていた。
⭐︎⭐︎⭐︎
放課後になるとみんな部活が始まるので気合いが入る。
部活が休みの人はグループで遊びにいくことが多いみたいだ。
そんな中、入部することになった俺は少し憂鬱になりつつもインタビュー部の部室に向かった
教室の前に到着し、少し間を置いてから扉を開けた。
扉を開けると汚い教室の真ん中で腕を組んでいる例の彼女がいた。
「ようこそ!インタビュー部へ!あなたとあなたの持つ探究心を待ち望んでいました!!」
「それ、毎回やるんですか?」
「いや〜うれしくてつい。ちなみに私のオリジナルです」
照れながら嬉しそうに話している。
「それで、今日は何をするんですか?」
「とりあえず、自己紹介がまだだったのでしておきましょう。私は左鳥ちほ、1年1組です。」
驚いた。どうやら同じ学年だったらしい。
「俺は向井作、1年3組です。というか、これ他の部員が集まってからしたほうがよくないですか?」
この教室には俺とちほの2人しかいない。他の部員が来てからの方がよかっただろう。
「あれ?言ってませんでしたっけ。部員は私とあなたしかいませんよ」
不思議そうな顔でこっちを見つめてくる。
俺は絶句した。
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