第4話:フラットな関係には敵わない

 数秒間時間が止まったかのように思えるほど静まり返った。


「それ、本当ですか」


「本当ですよ。現にこの場に私と向井さんしかいませんし」


俺はつい頭を抱えてしまった。


「それって部活として成り立ってるんですか」


2人しかいない部活など部活と言えるとは到底思えなかった。


「成立してません。一時的に承認されてるだけです。このままだといずれ廃部になるでしょうね」


後がないってそう言うことだったのかと今気がついた。


つまり、朝の時点で部員を集められなかった場合廃部はほぼ確定だったというわけだ。


1人増えたところで変わらない気もするが…


「それで、これからどうするんですか。1つの部に専念している人が多い中で部員を集めるのは難しいと思いますけど」


「確かにそうですが諦めるわけにもいきませんしどうしても部員を集めなければいけません。そのためにも、この学校の部活というものについてお話ししておきます」


そう言うと段ボールを用意し腰掛けた。


「まず、この学校で部として認められる条件は3つあります。1つ目は活動をすること。これは当然ですし問題ないでしょう。2つ目は顧問の先生がいること。これも私のクラスの副担任の先生がやってくれているので問題ありません。そして3つ目が部員が3人以上いることです」


終わった。友人のいない俺にあてはないし、左鳥さんは朝部活勧誘をして新入部員が俺だけだ。


また頭を抱えてしまった。


「何か考えはあるんですか」


絶望したような声で問いかけた。


「1つだけ私に考えがあります」


自身ありげにドヤ顔を披露した。


希望の光が差し込んだような気がした。


「それは…インタビューをすることです!」


光に雲がかかったような気がした。


「それは…つまり活動を見てもらうって感じですか?」


「その通りです!これなら興味の湧く人もわんさか出てきますよ!」


またドヤ顔を披露した。


どうしてそんなに自信があるのかは謎である。


「分かりました、それでいきましょう。他に案もないですし」


「よーし!それじゃあさっそくいきましょう!」


急に立ち上がり教室を出ようとする。


「待ってください、何をインタビューするのか決まってるんですか?」


「おぉ!私としたことがうっかり」


そう言い照れた顔を見せながら元の場所に戻ってくる。


「では何をインタビューするのかについて決めましょう」


「その前に!」


話を遮られた。


「同じ学年なんですし敬語はやめてください。せっかく同じ部活に入ってるんですからもっとラフにしましょう」


珍しく真面目な顔で話している。


「わかった。それで何をインタビューするんだ左鳥」


「軽っ!!全然いいんですけど急にそんな風に変われるもんなんですね。そこは少しずつ敬語が減っていくってもんでしょ!」


あまりの軽さに驚いた顔で話す。


「なんだよその漫画みたいな展開は」


漫画かアニメかドラマの見過ぎだな。そんな展開にはそうそうならない。それに本人が敬語をやめろと言ったのだからそれを実行したまでである。


「ではそんなさっくんに質問です。どんなインタビューが心を動かすと思いますか?」


さっくんという言葉に少し固まってしまったが、すぐに復活した。そっちが変なあだ名をつけるならこっちはインタビューちゃんって呼んでやろう。心の中で。



「そりゃ、部活勧誘なんだし答えていて面白いインタビューをした方が印象に残りやすいとは思うかな」


「なるほど、それは採用しましょう。答えていて面白いと思えるインタビュー。つまり、みんなの興味があるものです。それは部活動!」


確かにそれなら興味のない人はいないだろう。


「だったら各部活のおすすめポイントについてまとめるのはどうだろう。それなら簡単だと思う」


「いいですね!それでいきましょう!」


目の輝きが復活し、再び立ち上がった。


「それでは、いざ部活動インタビューへ!」


手を大きく上げ扉の方へと走り出した。


インタビューちゃんの目はかつてないほどの目の輝きをみせていた。


あまり気乗りはしないが仕方ない。ついていくだけなら大丈夫だろう。


扉を勢いよく飛び出したインタビューちゃんを急いで追いかけた。


⭐︎⭐︎⭐︎

おまけ


 走っていたインタビューちゃんに追いつき、歩くように言った。


だいぶテンションの上がっているインタビューちゃんの横に並んで歩いているとき1つの疑問が浮かんだ。


「そういえば、なんで左鳥は敬語なんだよ。自分がラフにしようとか言ったのに」


「ふっふっふっ…わかってませんね、さっくんは」


目を閉じ、呆れたように話している。


「敬語で話した方が知的に見えるからに決まってるでしょう!」


「あ、そう」


聞いた俺がバカだった。


「なんか、バカにしてませんか?」


「してないよ」


もうこの話をするのはやめよう。


そう心に誓った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る