第2話:部活勧誘には敵わない
黒髪のロングにメガネをかけた可愛らしい女の子がこちらにマイクを向けるような素振りで質問してくる。
「興味ありません。失礼します。」
そう言い、そそくさと去ろうとしたが甘かった。
「まあ、待ってください。少しでいいんでお話しを聞いてくれませんか?」
キラキラとした目でこちらを見つめてくる。
「すみませんが、すでに他の部活動に所属しているので部活に入ることはできません」
嘘ついた。嘘をつくのは苦手で少し棒読みになってしまったが上手く誤魔化せるだろう。
「嘘ですよね。1年3組の向井作さんですよね?」
不思議そうに首を傾げこちらに質問する。
「人違いですよ、それでは急いでるので失礼します」
なぜバレているのか分からず焦って早口になってしまった。
「逃しませんよ!」
腕を掴まれ今度こそ完全に捕まってしまった。
「1年3組の向井作さん、私の目は誤魔化せませんよ」
また目がキラキラしている様に見えた。
「どうしてわかるんですか?」
少し焦りつつも冷静に返答する。
「私の調査によると、1年で部活に入っていない人はあなた一人のようです。つまり、他の人に声をかけても意味はない。よって、あなたを待っていたというわけです」
人差し指を立てドヤ顔でこちらを見つめる。
「分かりました。ですが、部活に入るつもりはありません。それでは失礼します。」
そう言い再びそそくさと去ろうとする。
「あぁ!待ってください!せめてお話しだけでもお願いします。私には後がないんです!」
彼女の目からキラキラが消え、本当に焦っている様に見えた。
「はぁ、分かりました。話だけなら聞きましょう。」
しつこいので話だけ聞いて去ろうとする。それなら文句はないだろう。
「ありがとうございます!それでは、我がインタビュー部について1から説明しましょう!」
再び目をキラキラとさせている。感情の変化が分かりやすい人だ。
「このインタビュー部では、学校から学外等様々な場でのインタビュー調査によって、様々なことを調査します。例えば、学年一の成績を誇る〇〇さんの勉強法についてとか、白星高校の印象について等です。それをまとめた記事をつくるといった内容です」
「なるほど、調査をしてニュースを作るみたいな感じですか?」
「そう!まさにそうです。物分かりが良くて助かります」
嬉しそうな顔をしている。本当に感情がそのまま顔にでるようだ。
「よく分かりました。説明ありがとうございました。それでは失礼します。」
終わったので当然の様に逃げようとする。
「あぁ!待って!あなた、どこかの部活に入らないとダメなことはわかるでしょ!」
焦った顔に戻り、また腕を掴まれる。
「どこかの部活に入るつもりだったんでお気遣い結構、またどこかで会いましょう」
去ろうとするがこの人なかなかに力が強いため前に進めない。
まさにこの人の言うとおりで、うちの学校は全員がどこかの部活に所属しないといけない。そのため、部活に入ってない人間は適当な部に強制加入となることがある。
「確かにそれなら大丈夫ですが、本当に何処かに入るつもりなんですか?他のところだったら、もしかしたらもうグループができて今からは馴染めないかもしれませんよ」
「た、確かに」
痛いところを突かれた。
「うちの部ならまだグループなんてものは存在しませんし、活動もまだ始まっているわけではありません。それに、私にはどうしてもあなたに入ってもらえないと困るんです。お願いします」
ついに頭を下げられてしまった。
「分かりました。入ります、入りますよ」
少しため息が混じりつつ、答える。
「ありがとうございます!では、放課後3階の東端、インタビュー部の札がかかった教室でお待ちしてます!」
目が再び輝きを取り戻した。
朝から災難だった、そう思いながら教室へ向かう。
後ろを振り返るとこっちを見て嬉しそうに手を振っていた。
教室へ着くと左端後ろから2番目の席に着席する。そして授業が始まるまではイヤホンをつけ、スマホを見る。それが一人での過ごし方だ。
そういえばクラスや学年、名前も聞いてなかったな。
そんなことを考えるとさっきのことを思い出し、憂鬱になるので考えることをやめた。
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