第19話:物置清掃には敵わない
「うげぇ、なんですかこれ」
「それは誰かの靴下ね、分からないし捨てちゃいましょう」
小汚い靴下を持って話をするインタビューちゃんとしずちゃんをチラッと見ると気持ち悪そうな顔をしていた。
部室の片付けを進めているわけだが、いつのものか分からないような物が出てきて楽しくなっていた。
「向井君、これ」
そう言って小池さんが持っていたのは茶色い本だった。
「なにこれ、本?」
「日記っぽいです。読んでみますか?」
そう言って渡されたので読むことにした。
『1日目、これから日記をつけることにした。俺は白星高校1期生、今は2年だ。ここは今部活という名目で部屋を借り、とある別の理由で使用している。それは、撮影だ。何の撮影かって?そりゃあ決まってるだろう。女の子のスカートの中だよ。後世に俺の功績を残すための日記だ、決して捨てるなよ。恐らくこの日記の近くにメモリが置いてあるはずだ、それこそ俺がこの学校に残した功績そのもの、あとはお前の好きにするがいい。俺のことはそうだな、裏生徒会長とでも呼んでくれ。
2日目、飽きた。日記を書くのがめんどくさいから多分もうやらん。次のページからはあったとしても大したことは書いてないからもう捨ててもいいよ』
残りのページをパラパラ見たら色々書いてあったが、ここまで見てろくなことが書いてないと分かったので閉じた。
俺が読んでいる間ずっと段ボールを漁っていた小池さんは新たに本を9冊見つけていた。
見た目は同じ本のようだ。
「向井君何か分かった?」
「まあ読まなくていいかな、大したこと無いよ。昔の先輩の日記だ」
「そう、ちょっと気になるけど向井君がそう言うなら読まなくていいや。一応置いておく?」
「そうだな、とりあえず角にまとめてある必要な物コーナーにまとめておくか」
そう言って必要なものかよく分からないがとりあえず残す候補の物がまとめてある場所に全て置いた。
「だいぶ片付いたかな?あっちのお二方も終わりそうだし」
「そうだな、こっちも早く終わらせるか」
そう言ってまた段ボールの中身を漁り出した。
「なにこれ、メモリ?何が入ってるんだろ」
小池さんが取り出したのは恐らくさっきの著者が残したであろうメモリだ。
「何か分からないな、今日持って帰って確認してみるよ」
小池さんには見せるわけにはいかないからな。
「分かった、じゃあ預けとくね」
メモリを回収しポッケにしまっておいた。
これは家に封印しておこう。
今度何が入ってたか聞かれたら適当に誤魔化しておこう。
⭐︎⭐︎⭐︎
「これでこっちの片付けは全部終わりだな」
「こっちも終わりましたよ〜」
双方無事に片付けが終了し、これにて部室清掃完了だ。
いざ片付けてみると結構広く感じる。
普通の教室1個分といったところだ。
なにより椅子と机が見つかったのが大きい。
机は会議で使うような長机が2つと椅子は壊れたやつを捨てても6つ残った。
長机と椅子って大きいし片付けなくても気づくと思うが、それに気づかないほどの物量だったらしい。
まあこれだけあれば部室としては十分機能するだろう。
黒板もあるしな。
片付けが終わり、教室のレイアウトまでついでにやることになった。
中心に2つ長机を引っ付けるように置いて大きな机にし、その周りに椅子を並べた。
とりあえずはこれで完成として、いるのか微妙なラインの物はまた今度どうするか決めることにした。
正直いらないと思うが…枕とか冷蔵庫っぽいのもあるし、招き猫とかあれ何に使うんだよ。
解散する前にインタビューちゃん以外椅子に座り、インタビューちゃんだけ黒板の前に立って話を始めた。
「えー、皆さん本日はご協力ありがとうございました。特にりこぴー、わざわざありがとうございます」
それを聞いて小池さんは笑顔で会釈していた。
「また後ろに残ってる物はどうにかします。とりあえず今日はこれで解散とさせていただきます。皆さんお疲れ様でした」
話が終わって拍手が巻き起こった。
「それでは皆さん、もう遅いから気をつけて帰るように」
しずちゃんの言葉を聞いて時間を確認すると19時を回りそうだった。
早く帰ろう。
「じゃあ、俺は帰ります。先生と小池さん、インタビュー部のためにわざわざありがとうございました」
「いや構わないよ、顧問だし。今後も入り浸らせてもらうからね」
「私もたまに来るから、またその時はよろしくね」
お辞儀だけして教室を後にしようとしたら肩を掴まれた。
インタビューちゃんだ。
「まあ、待ってくださいよ。せっかくなんでご一緒しますよ」
うまくいけばそのまま帰れると思ったがそうはいかなかった。
恐らくこのままついてくるんだろう。
俺の予想は的中し、校門を後にしてもインタビューちゃんと小池さんはついてきていた。
「今日は遅いしもう帰ったらどうだ、また今度とか」
「家は問題ありません、もう連絡してます」
「私も大丈夫だよ」
どうしたもんか。
バレないようにため息をついているとスマホに通知が来たことを知らせるバイブがあった。
確認すると1日姿をくらましていた舞だった。
『今日遅いね、部活かな?家でご飯作って待ってるよ』
なんと今日に限っているらしい。
どうすんだこれ。
2人は呑気に後ろで喋ってるし…
とりあえず連絡は見なかったことにしよう。
後は近い未来の俺が何とかしてくれる。
そしてその近い未来がすぐにやってきてしまった。
家の電気ついてるから誰かいるの丸わかりじゃねぇか。
「ここだよ」
「結構近いんですね」
「いいか?静かにしろよ、近所迷惑だからな」
「失礼ですね、誰に言ってるんですか」
どうして心当たりがないのか不思議だ。
扉を開けて中に入ると2人もついてきた。
「お邪魔しまーす」
「お、お邪魔します」
遠慮気味な小池さんと違ってインタビューちゃんは全然何も考えてないようだった。
靴を脱ごうとしたら入ってすぐ左にあるリビングの方から少し圧を感じた。
よく見たらチラッと舞が覗いていた。
少し顔が怖かった。
「ただいま」
そう言ったら廊下まで飛び出してきた。
「おかえりさく!あれ?今日はお客さん?いらっしゃい」
気づいてたのに気づいてないフリをしていた。
しかも笑顔での対応だ。
「こんばんは、舞さん。お邪魔します」
前回会った時仲良さそうにしてたからインタビューちゃんは大丈夫そうだが…
「そっちは、小池莉鼓さん。だよね」
「は、はい!お邪魔します」
こっちも笑顔での対応だった。
てか何で名前知ってんだよ。
「さ、とりあえずこんなとこで話しても仕方ないし上がってよ」
先に2人をリビングへ誘導し舞に小さな声で話しかけた。
「何で名前知ってんだよ」
「調べたんだよ、いろいろ使ってね」
ずっと笑顔のままだが深い闇を感じた。
感情が笑ってないというか何というか。
やっぱり今日は来るべきじゃなかっただろうな。
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