第12話:突然の来客には敵わない
放課後の空気は嫌いじゃなかった。
皆部活に励んでおり活気があるからだ。
その中俺は帰宅できる…はずだった。
約束通り部室に向かう俺はいつもより気が重いように感じた。
それは部活に行かなければならないということだけではなく今日のインタビューにある。
昼休みの練習を終えて気づいたことがあった。
それはインタビュー部に所属している俺はインタビューが苦手であるということだ。
もちろん初めてということもあるだろうが、1個しか質問出来なかったのは苦手と言わざるを得ないだろう。
1人で考える時間は多かったし考えることには自信があるんだが。
なんにせよインタビュー部での立ち回りを考えないとな。
そんなことを考えているうちに到着したインタビュー部。
扉を開けようとしたがいつもより扉が重く感じた。
本気で開けようにも開かない。
いやおかしくね。
いくらなんでも重すぎだろ。
立て付けの問題か?
そう思って一度手を離してからもう一度思いっきり扉を開いた。
すると開いた時の衝撃で扉が壊れるのではないかと思うくらいの音と共に扉が開いた。
そして原因がすぐにわかった。
「ドッキリ大成功〜なんちゃって」
扉のすぐ前には笑っている左鳥がいた。
「左鳥、俺はこの部活に入ってすぐだが居心地が悪くないと感じている。しかし、今その考えが覆された。てことで帰る、またな」
「あー!待って、待ってください!ごめんなさい、謝るから帰らないでください」
本気で焦っているという表情だった。
服を引っ張られたので破られるわけにもいかず帰るのは諦めた。
「なにしてたんだよ」
「緊張してると思って緊張をほぐそうかと」
気を使ってくれたらしい。
ただのバカだと思っていたが評価を改善する必要があるかもしれない。
「してないよ。人前で何かするのはまあまあ慣れてるからな」
「そうでしたか、それは失礼しました」
なんか返答が真面目で違和感がある。
「もしかしてお前緊張してるのか」
「え?私はいつも通りですが…って言ったら嘘になりますね。はい、少し緊張しています。ですが、もう大丈夫です。さっきので緊張がほぐれました!」
やはり緊張していた。
さっきのイタズラは自分の緊張をほぐすためだろう。
こいつも緊張することあるんだな。
「それではまだしばらく時間があるので打ち合わせでもしましょうか。そんなにすることも無いですが」
「そうだな、暇だし」
緊張をほぐすんだったら話していたほうがいいだろう。
まだしばらく時間もあるから十分ほぐれるはずだ。
ピンポンパンポーン
そんなことを話していると呼び出しの放送がなった。
『生徒の呼び出しをします。1年3組向井君、1年3組向井君、至急職員室までお越しください』
ピンポンパンポーン
俺なんかしたか。
「なにやったんですか、さっくん」
「心当たりはない。とりあえず行ってくる」
「いってらっしゃい。夕飯までには帰ってきてくださいね」
母親か。
渾身のボケだったかもしれないがスルーして職員室へ向かった。
「失礼します。1年3組向井作です」
「あ!向井君、来てくれてありがとう」
ショートヘアの頼りなそうな小さい女性が出てきた。
俺のクラスの担任滝畑雫、通称たきちゃんである。
クラスが始まった初日にあだ名がつけられていた。
そんな先生が焦っていた。
「どうしましたか」
「校門に違う学校の子がいて…向井君を呼ぶように言われたの」
なんだそのヤンキー漫画みたいな展開。
行くのやだな。
「分かりました。行ってみます」
渋々行くことにした。
「何があったかちゃんと報告してね〜!」
報告する前にやられてるかもしれないから不安である。
とりあえず行くしか無いので急いで向かった。
外に出ると校門前に少し人が集まっていた。
何か話しているようだ。
近づくにつれその容姿が少しずつ明らかになり気づいたらことがある。
その姿は伊手真舞そのものであるということだ。
「あ!さくー!」
でかい声を出しながら手を振ってきた。
まだヤンキーの方がよかったかもしれない。
「お前何してるんだよ」
「何って、学校に行くって言ったじゃん」
そういえばそんなこと言ってたかもしれないが、今日だったのかあれ。
「来るのはいいとして騒ぎを立てないでくれ。連絡してくれればよかったろ」
「こうやったら学校のみんなに見せつけられるかなって」
どう言うことだよ。
「まあそれはさておき、見に来るんだっけか。入れていいのかわからないんだけど」
「みんなに聞いたら入っていいって」
なんてザルなセキュリティ。
私立とは思えないな。
「わかった。もう何言っても帰らないんだろ。早く行くぞ、みんなに迷惑だ」
そう言って手を引っ張った。
「きゃッ、大胆…」
もうなんでもいいからこの場から去りたかった。
視線が痛い。
手を引っ張っていると舞は後ろを振り返りさっきいた人たちに手を振った。
「みんなありがとー!またね〜」
そう言うとみんなも手を振っていた。
コミュ力高いところは尊敬に値するな。
先生に報告しなくちゃならないが、そんなものは無視でも構わないだろう。
何か問題を起こしたわけでも無いし。
「今から部室に向かうけど、絶対邪魔するなよ。今日は大事な日なんだからな」
「ワカッテルヨ。ワタシケンガクニキタダケダモン」
なんで棒読みかは知らないが放っておこう。
邪魔したら放り出せばいい。
「ねぇ、さくにとってインタビュー部ってそんなに大切なものなの」
後ろを振り返ると心配しそうな顔をしていた。
「大切というか、そこしか居場所がないんだよ。まだ入って2日目なんだから大切とかは別に無いよ」
「そうだよね。うん、まだ大丈夫。今日とっちめれば必ず…」
「そんなことより部活どうしたんだよ」
「今日は無しにした」
無しにするって…そんな権限あるのか
「こんなことのために休むものでもないだろ」
「さくは何も分かってない!私がどんな気持ちでここに来たのか」
大きな声だったのでびっくりした。
反応できずに少しの沈黙が生まれた。
「ごめん、今の無し忘れて。てか部室遠いね〜」
いつもの舞に戻った。
昨日と同じで様子が変だ。
「もう着く。ほらそこの端の教室だ」
「ここ?狭くない?」
部室に到着し、改めて見ると本当に小さい部室だ。
「さ、入るぞ。静かにしておいてくれよ」
「はーい」
適当な返事だ。
まあいい。
いつも通り扉を開けて入る。
すると教室の真ん中でダンボールに座ってノートを見ているインタビューちゃんがいた。
「あ!さっくん、おかえりなさい。そちらの女性は…」
そう聞こえると後ろから俺を押し退けて舞が飛び出した。
「お前かーーー!!!このクソじゃない、泥棒!!!!」
びっくりしたインタビューちゃんは立ち上がり、その立ち上がった瞬間に舞が肩を掴みそのまま押した。
結構な勢いで後ろにあったダンボールに衝突したインタビューちゃんはわけが分からないという顔だった。
「痛い!え?なんですかこれ、え?誰です、さっくん助けて!」
もう俺帰っていいかな。
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