第8話:過激な幼馴染には敵わない

「インタビュー、部?」


衝撃だったのだろうか、とてつもない驚ようだった。


「インタビュー部」


「インタビューってあの人に聞いたりする」


「それだな」


すると何かを考えるようにボソボソ話し出した。


「本当に…いや、まだ馴染めたわけじゃ…そうだ、まだそうと決まったわけじゃないし」


ところどころ聞こえなかったので何を言っているのかよくわからなかった。


「そうだ!部員は!部員って何人くらいいるの?」


「俺を合わせてまだ2人だな」


そう言うと安心した表情を見せ、早口で話し出した。


「やっぱり!そうだよね!さくがそんな大人数の部活入るわけないもんね、ちなみにどんな人?やっぱりさくと気が合うくらいだし似てる人なのかな?」


「似てないし気も合わないかな。俺より舞の方が似てるよ、騒がしいし女の子だし」


「は?」


え、何怖い。聞いたことないマジトーンだった。


するとまたボソボソ話し出した。


「そうなんだ、…手を出すなんて、しかも…私が粛清…」


なんか粛清とか聞こえた気がするけど気のせいだろう。


「分かった、見に行く」


急に笑顔に戻った。


「え、見に行くって、うちの学校にくるの?」


「そう、どんなクソアマじゃなかった、どんな子がさくと仲良くしてくれてるのか気になったし」


「そ、そうか。まあいいんじゃないか、入れるか知らないけど」


なんか今日の舞は怖く感じ少し動揺してしまった。


「それはさておき、友達はできたの?私心配だよ」


「友達って呼べるのはお前くらいだよ」


そう言うと少し頬が赤くなった。  


「そ、そうだよね。うん!でもちゃんとクラスで友達作らないと苦労すると思うよ!」


「まあ、努力するよ」


「ああ!でも私がいるからそんなに頑張らなくてもいいからね」


なんか言ってること無茶苦茶だな。


どっちなんだよ。


「あ、そういえば友達できそうだわ」


小池さんがいたのを忘れていた。


「へ、へー。どんな人なの?」


なぜか不安そうな表情を浮かべた。


「機会があったら紹介しようかな。会うことないだろうし」


「分かった。楽しみにしてるよ」


やはりいつもと様子が違うみたいだ。


情緒不安定というか、なんというか。


何かあったのだろう。


そっとしておこ。


話をしながらも箸を止めずに食べていたのでもう食べ終わる頃だった。


これでも食べるスピードには自信があるのだ。


「さくって食べるの早いよね」


「美味いものは食べるのが早くなるんだよ」


「ありがと、でもよく噛んで食べないとダメなんだからね」


「おまえは親か」


そう言うと舞は笑っていた。


そんな舞も食べ終わる頃だった。


「それ食べたら帰るんだぞ」


舞の家は向かいなのでこんな時間までいても問題なく帰ることができる。


俺の家によくご飯を作りに来てくれるのはそのおかげだろう。


「ちょっとまって」


そう言ってスマホを取り出して何かメッセージを送っているようだった。


「よし、今日は泊まろうかな」


「いや、すぐ近くなんだから泊まる必要ないだろ」


「もう親に連絡もしちゃったし」


さっきのメッセージはそれか。


「分かった。もう何言っても聞かないんだろ」


舞はこうなると何を言っても帰らないので諦めた。


「やったー!ありがとう」


「とりあえず風呂先入ってくれるか」


「え?私が入った後のお風呂がいいの」


そう言ってニヤニヤしている。


「じゃあ先に入る」


「え?自分が入った後のお風呂に入らせたいの」


どうしたらいいんだよ。


こうなったら無限ループなのではっきり言うべきなのだろう。


「もうどっちでもいいよ。舞が決めてくれ」


「じゃあさくの入った後のお風呂がいいから先入って」


何を言っているんだこいつは。


話すと止まらなそうなので何も言わず風呂に行った。


風呂に入ってぱぱっと体と頭を洗い湯船に浸かる。


湯船の中ではよく今後のことを考えたりしている。


今までは今後もただ学校に通っていくだけなので考えるようなこともなかった。


しかし部活に入ったせいで考えることが多い。


まず部員だ。本当に集まるのだろうか。


せっかく入ったんだから廃部になるのも困るしな。


こんなこと考えるのって何年ぶりだろうか。


そんなことを考えていると暑くなってきたので上がることにし、扉を開けると


「キャーッ」


舞が立っていた。


しかもわざとらしく悲鳴まで上げて。


「なにしてんだ。早く出てけ」


「さくったらもー、気をつけてよね」


そう言って洗面所の扉を閉めて出て行った。


なんで俺が怒られたんだ。


とりあえず服を着て髪を乾かし洗面所を後にした。


「上がったから入っていいぞ」


「はーい、じゃあ後風呂いただきます」


なんか今日はところどころ発言に違和感を感じるな。


「覗いたらダメだぞ♪」


なんでそんなウキウキなんだ。


当然覗くわけもなくソファに腰掛けテレビをボーッと眺めていた。


しばらく経つと舞が上がってきた。


すると一瞬のうちに視界が真っ暗になった。


顔にタオルが飛んできたらしい。


「なんで覗きに来ないんだよ!」


「覗いたらダメっていったろ」


「あんなのフラグでしかないじゃん!なんでわかんないかな」


「言われてなくても覗いてないよ」


不満そうにしながら隣に座ってきた。


髪を完全に下ろしピンも外しているのでいつ見ても新鮮味がある。


風呂上がりというのもあるのだろうか。


なんだかいい匂いがした。


「まあいいや、そんなに期待してなかったし」


頬を膨れさせながらこちらをみたらすぐにまたニヤニヤし始めた。


「さくー、なんか顔赤くな〜い?」


そう言ってくっついてきた。


知らぬ間に顔が赤くなっていたらしい。


「風呂上がりだからだよ」


「ふーん。まあそういうことにしといてあげる」


機嫌がなおったみたいでよかった。


「てか離れろ。暑い」


「はいはい、もー照れちゃって」


「照れてない」


暑かったのは事実である。


「そんなことより!何しよっか」


「何かするから泊まったんじゃないのか」


「何もなくても泊まりたくなる時もあるんだよ」


普段は何かしらやることがあるからと言って泊まるんだが、やはり今日は何かおかしいみたいだ。


「明日も学校だしそんなに長い時間遊べないぞ」


そう言うとまた不満そうな顔になった。


「分かったよ。じゃあマッサージして」


それはもはや遊びでは無くただのサービスだ。


だが断るとさらに機嫌が悪くなりそうだったのでマッサージをすることにした。


「下手くそだからな、痛くても知らないぞ」


「痛かったら言うから大丈夫だよ」


そう言って舞は床のマットの上に寝そべって目をつぶっている。


「俺はどうやってやればいいんだ」


「またがっていいよ。やってほしいところは私が言うから」


そう言われたので容赦なくまたがった。


「じゃあとりあえず肩からお願いしようかな」


そう言われたので肩を適当に揉んだ。


「あー、い〜じゃん。気持ち〜よ」


「これっていつまでやればいいんだ」


「私が良いって言うまでだよ」


これしばらく終わらないやつだな。


まあ機嫌を損ねても嫌だし仕方ないか。


そう言ってしばらく揉み続けた。


「そろそろいいや。次は腰で」


「はいはい」


腰の位置に手を置きやすいように足の辺りまで体を移動した。


運動をしてなかったせいでだいぶ疲れてきた。


明日は筋肉痛になりそうだ。


「さ〜いこ〜。私の専属マッサージ師になってよ」


「絶対嫌だ」


「ちぇ〜、まあいいやたまにやってもらうことにするよ」


飯作ってもらってるしそれはいいけど毎日とかになりそうで怖いな。


「さ、腰はもういいよ。ちょっとどいて」


言われた通りに一旦どいたら仰向けになった。


「じゃあ次はこっち」


そう言って指さしたのは胸だった。


パジャマ姿のため控えめな胸も立体的に見えた。


「はい、じゃあ終わりだな」


そう言ってソファに腰掛けた。


これ以上は付き合ってられない。


「もー、照れちゃって。私ならいつでもおっけーだよ」


何を言っているんだこいつは。


いつにも増して変だ。


「はいはい、じゃあもうそろそろ寝るからな」


そう言って歯磨きを済ませに向かうと舞もついてきた。


俺が歯磨きをしている間も隣でずっと歯磨きをしており、俺が終わると舞も同時に終わった。


本当にいつもより距離が近い。


歯磨きが終わった後一旦リビングのソファに戻った。


また隣にくっついてきた。


「どうしたんだよ。暑いぞ」


「今日はもうちょっとこうしてたい気分」


そう言ってきたので引き離すわけにもいかなく満足するまで付き合うことになった。


今日は今まで生きてきた中で1番長い1日のように感じた。


疲れが一気に来たのか眠くなって少し目を閉じることにした。

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