第31話 診療内科

翌日…

予約をしなくても診て貰える病院を探した。

そして…直接行ってみた。

受付を済ませ…名前を呼ばれて行ってみると…

そこには看護師さんがいて…

「今日、ここに来られるまでのお話を聞かせて下さい」

と言われ…

聞かれるまま、生い立ちからの話をした。

結婚や出産、離婚に至るまで話をして…

そして、ここに来ようと思った話をし始めると…涙が出て来た。

話が終わって…

「次は先生から呼ばれると思いますから」

と言われ…待っていると、名前を呼ばれた。

診察室に入ると…男の先生…

だいたいの事情は見ているようで…

補足で色々聞かれた。

先生は…


「あなたは家族のように思っていた子だったけど…その子にとっては、あなたは家族ではなかった。そう、思うようにしたほうがいいです。あなたのせいではない。職場のケアも足りなかった。病名をつけるとしたら、PTSD寄りの適応障害です」


と言われた…

退職しようと思っていると言うと…

「それが出来るならその方がいい」

と言ってくれ、2週間分の漢方薬を出してくれた。


私は、家に帰ってから…

園長の奥さんに電話をして、病院に行ったことを話した。

「そんなに酷いとは思ってなかった…ごめんね。どうしたい?」

と言われたから

「正直、もう行けないんです。退職させて下さい。申し訳ないです」

と言ったら…

「分かりました」と言ってくれた…


私は、退職した…

気掛かりは、子ども達のことだった。

小学生の子が「先生、次いつ来る?」

と言ったから「4日後に来るよー」

と言って帰ったのに…

他にも、色んな子から「先生、やめないでよ」

と言われていたのに…


施設に行くことを考えるだけで…

涙が出て…手が震えた…

私は逃げたのだ…

子ども達には、私は体調不良で辞めたと伝えられた…

子ども達は、寂しがっていたと…

先生は子ども達にとって大きな存在だったようです。

と後で教えて貰った…


携帯を持つようになって時々連絡が来ていたB子から

「先生、生きてる?大丈夫?」とラインが来た。

私の上司から辞めたと聞いたと…

「元気なら良かった。時々安否確認するね」

そう書いて来てくれた…


それから…

就職で県外に行っていた息子が、仕事に耐えられず帰って来た。

家には無職が二人になった…

私は、前から気になっていた肩に出来た脂肪を診て貰いに通院を始めた。

検査の結果、脂肪は良性で手術で取ることが決まった。

9月のある日

二男と病院に行った帰り…

ふと思い立って、父が住んでいたマンションに行ってみた。

まだ、後妻さんが住んでいるのか気になったから…

下のポストを見ると…まだ名前があったから

―――まだ住んでいるんだな…

と安心して帰った。


それから…

10月の終わりに…

やっと、孫が退院することになった。

8ヶ月半に及ぶ入院生活だった…

私は、二男と一緒に迎えに行った。

そして、みんなで一緒にご飯を食べて過ごした。

退院できて良かった…

また家族が揃って過ごせるようになって良かったと…みんなで喜んだ。

孫は…

「おうちに帰らないの?」と言ったそうだ…

病院をおうちだと思っていたらしい…

孫は、会う度に髪の毛が伸びて…女の子らしくなっていった。

これからも、定期的に病院には行かなければいけない。

でも…

どうか…再発しないように…と祈るしかない…


そして…11月になり…

以前勤めていた会社の同僚と1年ぶりに会って食事をしている時に

電話が鳴った…

表示されているのは…

警察署だった…

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