第25話 助けられなかった…

私は、A子の部屋でA子を見つけた…

それは…明らかに自死だった…

まだ温かかったA子を抱いて動かそうとした…

でも私だけの力では、どうしようもない…

私は、ホームの上司にすぐ電話をした。


「A子ちゃんが自分で………」

「え!?すぐ行きます」

それから上司が2人来てくれた…

「救急車呼んだんで…どこですか?」

「部屋です」

2人でA子を床に寝かせて…人工呼吸を始めた…

私は、呆然として…何も出来なかった…

どうか…夢であって欲しい…と願った。

2人が交代で人工呼吸をするけど…

回復しない…

上司の1人が…遺書らしき物を見つけた。


救急車が来るまで、ずっと人工呼吸をした。

救急車が来て…

「最初に発見したのはどちらですか?」

と聞かれたから…

「私です」と答えた。

「第一発見者なんで、一緒に来て下さい」

そう言われ…副園長と一緒に救急車に乗った。


病院に着くまでの間、A子には救急隊の人が人工呼吸をしていた。


病院に着いて、事情を話す。

それから、しばらくして…

医師から呼ばれ…

「手を尽くしましたが…ご臨終です」

と言われた…

私はひたすら「ごめんね…」を繰り返し言うしかなかった。


児相には連絡をしていたので、児相の担当の人が来られた。

お母さんに連絡をしてるけど…繋がらないと…

警察の人も来て…簡単な事情聴取が始まった。

その日の様子…

他の子の状況…色々聞かれた。

17人を1人で見ていたと話すと…

「1人で17人ですか?」と驚いて

「日曜日だからですかね」と言われたので

「そんな感じです」としか答えられなかった。


それから、「詳しくは警察署で聞かせて下さい」

と言われ…母への連絡等は児相の人に任せて…

警察署に行くことにした。

副園長は、車を取りに行ってから行くと…

そこから…私は歩いて警察署に向かった。


歩きながら…涙が止まらない…

分かっていても、どうしようもなかったことを悔いた…

もし…過去に戻れるとしたら…

絶対にA子を助けたいと思っていたのに…

時間が変わったら、他の子が見つけたり

大騒ぎになるかもしれないと…変えることを恐れてしまった。

結局…私にはどうすることも出来なかった…


私は、やり切れず…

あの人に電話をしていた。

あったことを話し…今から警察署に行くと伝えた。


警察署に着いて…事情聴取を受けた。

警察は、施設でも捜査をしたようだが…

他殺の可能性も探っているようだったから

色々聞かれて…

最後に供述調書を書いて…

今度は、児相に向かった。


そこには数人の人がいて

そこでも色々聞かれた…

A子の遺体は、警察署に運ばれたが…

母とはまだ連絡が取れていないと…


私は、そこから副園長に送って貰って

駐車場に行った。

23時過ぎていた…

泊りは、代わりの人が入ってくれていたので

今日は、もう帰っていいと言われた…

明日、日勤で入るようにと…


それから、家に帰った。

あの人と二男が待っていてくれて…

「お腹すいてるんじゃない?」

と言われて…

そういえば、夜ごはん食べてなかったと気付いた。


あの人がインスタントラーメンを作ってくれた。

こんな状況でも、お腹は空くんだ…

と悲しくなった。


後悔しかなかった…

A子は、慕ってくれていたのに…

どうして…もっと話を聞いてあげられなかったのか…

どうして…あの時に声を掛けられなかったのか…

どうして…助けられなかったのか…


あの人は、「私のせいじゃないよ…」

と言ってくれたけど…

私のせいとしか考えられなかった…

私は、ほとんど眠れず…

翌日、施設に向かった…

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