第30話 部屋に入れないのに…

4月になり…

ホーム編成が行われた。

私は引き続き、同じホームになり後輩が出来た。

子ども達は、退所したり違うホームに行ったりした子もいたから10人になっていた。

そして、小学6年生になった5人が異動して来た。

ホームは15人になった。


5月になり…

上の孫が保育園に入れることになって…

長男は、日勤で復帰することになった。

毎日、長男が保育園の送り迎えをする。

保育園の支度、家事も1人で頑張った。

普段、お嫁さんに任せっきりだった長男…

長男にとって、この時が一番頑張った時だったと思う。

週末になると、長男が病院の付き添いをした。

お嫁さんは、その時しか帰れない…

お嫁さんは痩せてしまった…

時々、長男の1人の時間を作ってあげるために

上の孫を預かってあげた。


7月になって…

孫は、病院で3歳の誕生日を迎えていた。

ようやく、付き添いを代わっても良いと許可が出た。

半日だけど…付き添いを代わって…

その間に、長男とお嫁さんは2人の時間を作った。

孫は、我儘になっていたが…

私の事を覚えていてくれた…

ただ…病気の影響か…視力が悪くなっていた。

病院の中をベビーカーで散歩をする。

他の科に行ってはいけないから、同じ所をグルグルと…

それでも、喜んでいた。


施設のほうは…

小学5年生までの女子ホームの子達が…反感を持って…

問題を起こすようになっていた…

夜も寝ないでウロウロしたり…

騒いだり…

新人の職員に食って掛かったり…

職員は疲弊していた…

同期の子も会うと目が赤い…

少し突付くと泣いてしまうんじゃないかと思うくらい…

疲れ果てていた。


そして…

新人が辞め…

先輩が辞め…

同期も辞めそうになったから…

上は、私がいるホームと統合すると言い出した。

そうすると…子どもは27人になる…

職員は、4人…

それでも…やるしかないと思っていた。


そして、ホームが統合する日…

ホームの上司から、A子の部屋を開けて使用する。

片付けをしないといけないと言われた。

私は…

「あの部屋には入れないんですけど…」

と言った。

「なら、私と他の人でやるから大丈夫よ」

と言ってくれたけど…


私は、あの部屋に入らないことで保っていた…

あの部屋は3年は使用しないと言っていたのに…

あの部屋は、お母さんがA子の物を少ししか持って帰らなかったから

そのまま、残っていた。


心理の先生にも、あの部屋に入れないと相談したら

入らなくても良いと言われていた…


私は、明けで帰る時に辞めそうだった同期が一緒だったから

27人だろうと仕事はするけど…

あの部屋に入れるか分からないと話をしていた。

2人で愚痴を言い合って…


帰ろうと車に乗り込んで…

運転して帰っていたら…

なぜだか…涙が止まらない…

運転しながらだったから…

目の前が涙で見えにくくなって…

怖いから…こらえようとするけど…

それでも、涙が止まらなかった。


日曜日だったから…

あの人がいると思って、なんとか涙をこらえて

「ただいま」

と明るく帰った。

あの人が

「お腹空いたでしょ。お弁当買ってるよ」

と言ってくれたから…

「ありがとう」と明るく言った。

でも…

お弁当を食べていたら…

勝手にまた涙が出てしまって…

止まらなくなってしまった。


あの人がビックリして…

「どうしたの?」

と聞いてきたから…

泣きながら…すべてを話した。

それを聞いたあの人は…

「ずっと、心に蓋をしていただけで…何の解決もしていなかったんだよ」

「病院に行こう。そして辞めた方がいい…」

と言ってくれた。


幸い…

翌日から3日間休みだったから…


翌日、病院に行くことを決めた…

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