第9話 遺産相続

後妻さんは、父が亡くなった時に

「ふん、あっけないもんだね…」とつぶやいた。


それからみんなで葬儀場に向かった。

そこで勧められた「湯灌」という遺体を湯で清めてくれる儀式を、私がお金を出すからしてあげようと提案した。

父は、暫くお風呂に入ってなかったみたいだったから…


お通夜までの間に、葬儀屋さんから死亡届けの提出や火葬の話

お坊さんの手配などの話を聞いている時

私は、父の亡くなった日が、1回目の人生の時より1日早いことに気が付いた…

確か父は25日に亡くなったはず…

それが24日になっていた…

なんで?

もしかしたら、父に会いに行ってない日に会いに行ったから?

出来事を変えてしまったからかもしれない…


やっぱり変えられないんだ…と思い知った…


お通夜が始まって少しした頃、親友が来てくれた…

親友も父と一緒に遊びに行ったりしていたので、悲しんでくれた…

そして、親友が帰るのに、私が送って行くことになり行こうとすると…

後妻さんが私も帰ると言い出した。

みんなびっくりして顔を見合わせた。

その場に馴染めないのは分かるけど

父のお通夜なんだよ

と誰もが思ったはず…

仕方なく送って行ったけど…


喪主は兄がした。

葬儀は、父の会社関係の人も来てくれた。

親戚も来てくれ、父の思い出話をしながら

和やかに葬儀は済んだ…


父の生命保険は私が受取人になっていた。

父から葬儀のお金はそこから出してと言われていたから私が出すことにした。

葬儀が終わって、後妻さんを送って行って落ち着いた時

後妻さんが、香典を数えておこうと言い出した。

私は、あの人と顔を見合わせた。

ま、葬儀代は私が払うし…

香典から香典返しもしないといけないから…

そう思って数えながら記録してから帰った。


兄、兄嫁、私、あの人で話し合って、お金もマンションも後妻さんにあげようと話していた。


年金の停止とか色々と手続きをしないといけないから、会社を数日休んで、後妻さんと手続きに向かった。

国の葬儀費用の手続きをしたけど、それは後妻さんにあげると言った。

一緒にいる間、後妻さんは父の良い話を一切しなかった。

悪口ばかり…

年金事務所に行った時に遺族年金の手続きをした。

それから、後妻さんの年金が貰えるかどうか調べてくれたけど…

後妻さんは、年金保険料をほとんど払ってなくて貰えないと言われた。

それでも、遺族年金が12万入る。

その後、一緒に車に乗り込んだ時…

後妻さんは…

「保険金も、ゆうこさんの名義にしてからねー」

と怒って言った。

私も流石に腹が立って

「そんなこと言っても遺族年金が12万あるならまだ、いいんじゃない?国民年金なんて月に6万とかしかないんだよ。」

「兄がお金もマンションも全部、後妻さんにあげると言ってるけど気が変わったらどうなるか…」

と言ってしまった。


誰もが、父をもっと早く病院に行かせてくれていたら、もっと生きられたんではないか…と思っていた。

介護もベットを高くしたり、雑に行われていた…けど

面倒を見てくれたからと思っていた。

なのに…父が亡くなって感謝の言葉も全くない…


父は後妻さんと知り合って、後妻さんの仕事がなくなるから生活出来なくなると聞いて、一緒に住もうと家に連れて来た。

後妻さんは年金も貰えなくて困っていた。

嫌なこともあったかもしれないが…

父がいたから、これまで生きて来れたんでしょ…

なのに感謝している態度ではなかった。


私は、思わず…兄に電話をしていた。

後妻さんに言われたこと…態度

すべて話をした。

兄も怒って…

やっぱり遺産相続は法定通りにしようと言った。


私と兄は、後妻さんに会いに行って

それを告げた…

後妻さんは、文句を言っていたけれど…

私と兄の意志は固かった…

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