第15話 元夫の行く末 後編
二男には、お父さんが亡くなったと告げたが
亡くなった理由は、睡眠薬を飲み過ぎて亡くなったと伝えた。
本当のことは言えなかった…
長男と直葬プランをしている葬儀屋に行った。
そこは、すごく小さな事務所だった…
そこで事情を話したら…
向こうも慣れているようで…親切に対応してくれた。
葬儀屋さんが警察署と連絡を取って、後の書類も全部してくれるそう。
当日も、葬儀屋さんが警察署に行って、そのまま火葬場に連れて行ってくれるという。
葬儀屋さんが
「生活保護を貰っていたなら葬儀費用が出ると思いますよ」
と教えてくれた。
とりあえず、色んな手続きが済んだら連絡しますと言われ…葬儀屋さんをあとにした。
その後で、葬儀費用が少しでも出れば…と思い、長男が、生活保護の担当に電話をしてみた。
父が亡くなったと告げ、葬儀費用の事を聞いてみたが…
「そうですか…それでなくても、もう今月分の生活保護費を支払っているので。葬儀費用は出せませんね」
と冷たく言われた。
「母さんが出すからいいよ」
「ごめん…」
火葬する日が決まり…
二男を学校に休ませるのに、何て説明しようかと悩んでいると…
あの人が…
「俺が学校に電話をするよ。忌引き扱いになるのかも聞いてみる」と言ってくれた。
あの人が自分は義理の父で、実父が亡くなったから休ませること、出席日数に影響は無いのかを聞いてくれた。
忌引きになるから大丈夫と言われたと…
二男は推薦で大学進学を目指していた。
だから…あの人が聞いてくれたのだ…
私は、お棺に手紙を入れようと手紙を書いた。
1度目の人生と同じ手紙を書いたかは分からない…
でも今の気持ちを正直に書いた。
二男にも手紙を書くように言った。
二男は「父さんのこと、ほとんど覚えていないし…」
と困っていたけど、何とか書いたようで…
当日手紙を手にしていた。
直葬当日、親友も来てくれた。
それと…元夫の面倒をみてくれていたという女の人も、火葬場に来たいと連絡があった。
火葬する前に、元夫の顔は見ることは出来なかった…
お酒やおつまみを買って入れようとしたが、お酒の瓶は入れられなかった。
手紙は入れた…
火葬のボタンは、長男が押した。
親友が
「今度は、あんたがゆうこと息子たちを守ってやってね」
と叫んだ。
待っている間に、面倒をみてくれていた人が
「私がもっと早く家に行っていれば…すみません」
と言われたので…長男と2人で
「いえいえ、見つけて頂いてありがとうございます。見つけてくれなかったら、もっと酷い状態になったかもしれないので…」
その人は
「元夫は、二男と奥さんが映った写真を大事そうにしていましたよ」
「二男さんにも会いたいと言っていました」と…話した。
元夫が、住んでいた部屋の片づけは、その人がしてくれると…
どんな関係だったのかは分からないけど…
良い人だ…感謝しかない。
遺骨は、長男が持って帰った。
警察署から持って帰った荷物の中にノートと障害者手帳があった。
障害者手帳の写真は、まるで別人だった…
どこかで会ったとしても誰か分からないほどに、元夫の顔つきは変わってしまっていた。
ノートには…
二男とも、もう一人の子供とも会えない…
もう生きていても仕方ない…等と書かれていた。
そのノートは、すごい匂いがした。
匂ったことがないような匂いだった…
友達に元夫が亡くなったことを話したら
「元夫の人生は何だったのかね…悲しい人生だね」
と言った。
私は、本当に元夫のことを愛していた。
でも、どうしようも無かった…
覚せい剤は、本当に怖い…
精神まで蝕んで行く…
元夫が覚せい剤に出会わなければ幸せな人生が送れたのかな…
可哀想な人生だったけど…
ちゃんと送ってあげられて良かった・・・
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