第27話 受験と別れ
それから…
何気ない毎日が繰り返され…
受験シーズンになった。
その年のホームの受験生は5人。
施設の子は優遇されることも多い。
もちろん中学の先生からの推薦も必要だけれど…
公立は、推薦で受ける子も多かった。
成績があまり良くない子は…
私立の推薦を受ける子もいた。
ただ…他県から来た施設の生活に慣れていた子は、
出席日数が足らず…
一般入試で私立を受けることになった。
施設では、高校に行かないといけないルールになっていた。
基本…通信の学校はダメだから…
遠くの高校の寮に入る等、パターンは色々用意されたが
その子は、ここから通える高校を希望したので
私立の高校と、遠いけど公立高校を受験することにした。
その子の希望は、私立高校だった。
それなのに、その子は呑気に遊んでいたから…
「勉強してるの?」
「してるよー」
「本当かなー」
「本当、本当」
と、そんなやり取りをよくしていた。
受験当日、その子は他県の子で土地勘が無かったから
私はその子の引率をして受験会場に行った。
すごい坂の学校だった。
駅で何時間も時間を潰した…
試験が終わる頃…また、すごい坂を上がって迎えに行った。
「どうだった?」
「うーん。結構、問題解けたと思う…分からないけど…」
と笑いながら答えた。
私は、みんなの受験の前に…
御守りを貰いに行って…5人に渡した。
「ありがとう」
とみんなが言ってくれる中で…
1人の子が…
「私、御守り貰ったの…初めてかも…先生、ありがとう」
と言った…
それは、なかなか話をしてくれなかったB子だ…
私は、嬉しかった…
結果、全員合格した…
そして3月…
中学を卒業。
2人の子が、同じ施設だけど…
場所が違うホームに行くことになった。
1人は、ホームで一番権力を持っていた子…
そして、もう1人は…
なかなか話をしてくれなかったB子だ…
施設を出る数日前に…
B子が手紙をくれた…
―――いつも、我儘や愚痴を聞いてくれて有難うごさいます。
初めて会った時「なんだこいつは!」と思ったけれど…関わっていくうちに、とてもいい人だと思いました。
たまにキツイことを言ったりするけど、いつもちゃんと聞いてくれるからスッキリするし心が軽くなるので助かっています。
話を聞いてくれるだけでなく、私が間違ったことを言ったら、そこはちゃんと教えてくれるので、ちゃんと考えてくれているなと思います。
先生は、いつもホームの人の事を考えてくれているので、とても嬉しいし、有り難いなと思っています。
みんなから色々頼まれても、ちゃんとやってくれている所とか凄いなと思うし、いつも助かっています。そして、自分の仕事も他の人の仕事もコツコツと、ちゃんとこなしていて凄いと思うし尊敬します。いつもお疲れ様です。
先生の優しいとこ、面白いとこ、ドジなとこ、他人の事を考えるとこ、人一倍頑張っているとこ、すべてがステキでカッコいいと思います。
これから色んな形で恩返していけたいいなと思っています。
もし、先生が良かったら私が高校を卒業して、ここを出たらご飯とか一緒に食べに行きませんか?
ま、とりあえずいつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
大好きだよ―――
こんな風に見ていてくれたことが…すごく嬉しかった…
涙が止まらなかった…
私は、本当はいけないのだけど…
ラインのQRコードを渡した。
施設では、高校生になったら携帯を持てる。
いつかのために…
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