第21話 新しく来た子ども達

勤務の翌日…

家に着くのは13時頃…

昼ごはんを食べて、それから少し寛いでいたら

睡魔が襲って来る…

私は、いつの間にか…ソファーで寝てしまう…

疲れて寝ている姿を見て、あの人が

夜ごはんは自分が作ると言ってくれた。

あの人は、なんでも自分で出来る。

車の事もパソコンの事も、お任せだった…

本当にありがたい…


身体はキツイのだけど…

子どもと触れ合うのは、すごく楽しい。

子ども達とは、だいぶ慣れて話かけてくれる子も増えた。

でも…1人だけ話をしても答えるだけで…

話をしてくれない子がいた…

同期の人には、話かけているのに…

私には、話してくれない…

そう思いながら1か月くらい経って…

いつの間にか…話しかけてくれるようになった。

「先生って、オバサンだから話しにくかったけど

みんなと話しているのを見ていたら、話しやすいってわかったから…」

って言ってくれた。

オバサンは余計だけどな…

と思いながらも…嬉しかった。


その頃、先輩が随分年上の私を気遣って…

「身体、大丈夫ですか?キツクないですか?」

と声を掛けてくれた。

「歳なんで…キツイけど何とか大丈夫です」

と答えると…

「年齢は関係ないですよ…私もキツイですもん」

と言ってくれた。

歳だからキツイのかと思っていた…

その話を20歳の同期に話したら

「私もキツイですよ」

と言ったから、安心した。


その月に、1人の中学2年生の女の子が入所した。

その子は、小学生4年生の妹と一緒に来たが

私のホームには、お姉ちゃんの方が来た…

その子達は、母のネグレクトで

スーパーに助けを求めて児童相談所に保護された。

一番上の姉がいたが…その子は来なかった。

母は精神的に不安定なお母さん。

離婚してシングルマザーだった。

家は荒れ放題だったそうだが…猫を何匹も飼っていた。


その子は、周りの友達や先輩との関係が不安で

よく話をしに来てくれた。

女の子の愚痴は、ほとんどが人間関係だ…

正直、面倒くさい時もあるのだけれど…

なるべく聞くようにした。

決して相手の子には言わない…


その時は、ホームで一番年上の子は

中学3年生…それも一番古い子が、支配している。

その子に嫌われないように、みんな必死だ…


6月になり…

もう1人…新しい子が入って来た。

その子は、中2の母子家庭の女の子だった。

母は精神的に不安定で…

仕事も出来ず…水道も止められて…

公園のトイレに行くしかなかった状態だった。

母が困って児相に相談に来て、そのまま保護された。

その子は、不登校で…

対人関係に不安があった子だったのに…

ここに来てしまった。


その子が最初にご飯を食べた時に

「ごはんが美味しい。こんな美味しいごはんを

毎日食べられるなんて…嬉しい」

と言った…


7月…

また新しい子が入所した。

その子は、中3で他県から来た子だが…

小さい頃から他県の児童養護施設にいた子で

施設の生活にも慣れた子だった。

母は2回離婚歴ありの、シングルマザー。

養育困難で施設に入っていたこともあった。

母は、交際している人を追って来た。

種違いの妹や弟は母の元にいるが

その子と弟だけ、その家から逃げて来た。

その子は、こういう施設に慣れているので

すごく要領も良く、周りの子ともすぐ打ち解けた。

でも、虚言癖がある子だった…


ホームの子どもの人数は17人になった。

泊りの日は、その人数を一人で見る。

リビングで、洗い物や片づけをしていても…

「先生、あれ取って」

と職員の部屋にある物を取って欲しいと言ってくる。

「もうー!いっぺんに言ってよー」

そう言いながら、私は取りに行っていた。


1人1人、色んな問題を抱えている。

私は、出来るだけ…聞いてあげたかった…

その気持ちは、今回の人生でも変わらない…

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