図書館

 「シシシ…!」って彼女が、声を出して笑うたびに、誰もいやしないのに司書さんが睨んでくる。


 その度にさ、僕は唇に指を当てて彼女にシーって言ったんだ。


 何が可笑しいのか、彼女は慌てる僕を見てまた「シシシ…!」って笑うから、ついつい僕も釣られて笑った。


「コホン…!」


 とうとう司書さんが咳払いなんかするから、向かいあって座ってた僕らは、おでこをくっつけてあって肩を震わせる。


 学校なんて無くなればいい。


 僕は本気でそう思ってしまったんだ。


 だってそれなら、ずっと彼女と図書館で、こうして勉強していられるから。


 勉強に飽きてきた彼女はさ、鉛筆を転がしてサイコロを始めた。


 いつの間にかノートにはさ、女の子らしいイラストの人生ゲームが出来上がってて僕は苦笑いしたんだ。


 よく見ると、やたらと結婚のマスが多い。


 その文字は、なぜが僕をドキドキさせる。


 顔を上げるとさ、ニヤニヤ笑う彼女の顔がすぐ目の前にあったんだ。


 気が付くと、司書さんはどこかの棚に、本の整理に行ってしまってて、僕らの周りには誰もいなかった。


 机の下で、靴を脱いだ彼女の足が、僕の足に重なった。そ彼女はギュッと目を閉じて、ちょっと照れくさそうに笑ってる。


 ズルい。ズルいズルい。


 僕はほんの一瞬だけ、彼女の唇に自分の唇を重ねた。


 そしたらすぐに目が合って、僕らは何回も恋に落ちるんだ。

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