メッセージ4

「留守番電話サービスに接続します。ピーという音の後にメッセージをどうぞ。ピー……」


「宿題終わらーん! マー君教えれー! 宿題が終るまで夏休みは遊ばないとかさ……いきなり真面目ムーブは無しだと思いまーす! 学校はズル休みするくせに! 抗議しまーす! デモ隊がお前の家を包囲するぞ! ちょっとー!? 聞いてんのかー!? お姫様が助けを求めてるんだぞー!? 可愛い彼女が困ってるんだぞー!? むーしーすーるーなー!」


 問題集を解きながら彼女の声を聞いているとすぐに二度目の着信が来た。


 どうやら暇つぶしじゃなくて本当に宿題が難航しているみたいだった。


 僕はスマホに手を伸ばして短いメッセージを送信する。

    

           「図書館いく?」


「いく!」

 

           「いつ?」


「今でしょ!?」



 その後に続くモンスターみたいなスタンプの意味はわからなかったけど、彼女が画面の向こうでシシシって笑ってるのだけは、何となくわかったんだ。


 僕は黒いリュックに参考書と資料集を詰め込んで図書館に向かった。


 始まったばかりの夏休みに図書館に行くやつなんてさ、きっと僕らくらいだから。思ったよりずっと、僕の足は軽かった。


 それくらい僕も、早く彼女に会いたかったんだと思う。

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