第19話 ヴァルキリープロファイル①



「おお! OPアニメがあるんすね!」



 ディスクを挿入し、そのまま何もボタンを押さないでいるとOPアニメーションが始まる。

 他にOPアニメーションが流れるRPGといえばテイルズシリーズが思い浮かぶが、あちらは歌まで入っているうえに映像にも力が入っているので、出来という点では負けている気がする。

 ただ、ゲームグラフィックに関してはヴァルキリープロファイルの方が凄い、と個人的には思っている。

 ドットグラフィックのRPGの中では最高峰と言っていい作品だ。



「ちなみに、タイトル画面を暫く放置したりタイトルからプロローグを選択するとちょっとしたストーリーが見れるんだが、結構長いから今度一人でプレイするときにでも見ておいてくれ」



 初見では正直何もわからないと思うが、物語を進めていくとそれなりに理解できる……かもしれない。



「じゃあ、普通に始めちゃうっスね」



 麗がスタートボタンを押す。

 音やBGMが物凄く懐かしい。



「難易度選択があるんスね。妥当なのはノーマルっスけど、アクション初心者はイージーの方がいいっスかね?」


「普通のRPGなら俺もイージーやノーマルを勧めるが、ヴァルキリーに関して言えば絶対にハードを勧める」


「え、何でっスか?」


「理由はいくつかある。まず、このゲームにはエンディングが全部で三つあるが、イージーは二つまでしか見ることができない。他にも仲間にできるキャラ数やダンジョン数、アイテムの種類などに違いがある。イージーはマジでお勧めしないぞ」



 難易度による違いは他にチャプター数、隠しダンジョン攻略アイテムの入手数、取得経験値などが違う。

 このうち取得経験値量に関してはイージーが一番多いが、それ以外のデメリットが多すぎる。



「それはウチ的にも嫌っスね……。ちなみに、どれくらい差があるんスか?」


「仲間についてはイージーが13人に対し、ノーマルは20、ハードは24と大きく違う。ダンジョン数もイージーとハードでは10以上違うぞ」



 ただ、実はイージーとノーマルでしか入れないダンジョンも存在する。

 このゲームはハードを選ぶ人が多いため、攻略したことがないという人も多い。



「ウチ、ハードでやるっス! やっぱり仲間にできるキャラは多いに越したことないっスからね!」



 俺もその通りだと思う。

 普通のRPGは戦闘に参加できる人数が4~5人程度のため、好みによって使用キャラが変わることが多い。

 選択肢は多い方が個性が出るし、より楽しめるというものだ。



「ちなみに、このゲームのOPイベントは長い。セーブできるようになるまで30分以上かかる」


「マジっスか……。ね、ねぇ先輩、先輩は何度もこれ見てるんスよね? できれば、解説が欲しいっス……」



 麗はアニメなどでも黙って観るのが苦手なタイプだ。

 一人のときなら問題ないようだが、誰かと観ているとウズウズするらしい。



「……わかった」



 というか、最初からそのつもりだった。

 何故ならば、このゲームのシナリオは大変良いのだが、容量の関係で端折られていることが結構多いのである。

 コンプリートガイドなどを見ないと、しっかり理解できない可能性があるのだ。



「ちなみにこの美人が主人公っスよね? この激マブ少女は誰っスか?」


「名前を見ての通りフレイアだ。北欧神話にいるだろう」


「……フレイアちゃん、こんな可愛いなんて素晴らしいっス!」



 ヴァルキリープロファイルの女性は癖が強いキャラが多いが、このフレイアは比較的真っ当な可愛い系と言える。



「ちなみにこのフレイアは、設定上凄まじい潜在能力を秘めていることになっているが、残念ながらゲームではOP以外ほとんど関わってこない」


「なっ!? 酷いっス! 絶対仲間にしようと誓ったばかりなのに!」


「俺だって悲しかった。ちなみに既にサ終してしまっているが、スマホアプリの『ヴァルキリーアナトミア』では使用可能だった」



 さらに言うと、同じくサービス終了してしまっているスターオーシャンアナムネシス(SOA)でも使用可能であった。

 SOAではコラボシナリオでヴァルキリープロファイル、ヴァルキリープロファイル2に続くシナリオが書かれるという凄まじい気合の入りようだったのだが、何故サ終の可能性のあるスマホアプリでやってしまったのか……

 できればコンシューマに移植して欲しいものである。



「フレイ……? このお姉さま感あるのが、あのフレイっスか? フレイって、確か北欧神話じゃ男だったような……」


「そうだが、このゲームでは女体化している」


「こんな時代から偉人の女体化はあったんスね……」



 偉人というか、神だがな。

 ついでに言うとフレイは北欧神話でヴァン神族だが、ゲームではアース神族に変わっている。



「そしてこの渋いオジサマがオーディン様っスか。確かに、これはあのオジサマをそう呼びたくなるのも頷けるっス」



 本当、良いキャラしてるんだけどな。

 何故か俺の中では、フレイの尻に敷かれているイメージが強い。



「話の流れ的に、実際の北欧神話みたいな物語なんスね」


「そうなるが、麗は結構北欧神話について詳しいのか?」


「簡単な流れくらいは知ってるっス。中二病のたしなみっスからね!」



 確かに、中二病と北欧神話の親和性は高い。

 俺もこのゲームの影響でそれなりに詳しくなってしまった。



 ヴァルキリープロファイルは北欧神話をモチーフにした作品であり、神々の黄昏(ラグナロク)と呼ばれる最終戦争に備えるべく、主人公のレナス・ヴァルキュリアがエインフェリア(簡単に言うと戦士の素質ある死者の魂)を集めるというのが基本となるストーリーである。

 その背景には別の思惑や暗躍する者などが隠されており、それらに触れることで物語の真実が明かされるという仕組みになっている。


「なつかしい? 今フレイ姉様がなつかしいかって聞いてきたっスけど、どういうことっスか?」


「説明はなかったが、このレナスは特殊な存在で半神半人の女神だ。普段は人間として暮らしているが、任務があると神に転生し、任務が終われば再び人間に転生する」


「へ~、でも人間のときの記憶はないみたいっスけど。その割にはフレイ姉様のこの表情……、何かあるっスね」



 勘のいいガキは(ry

 今見ると確かに何か匂わせている感じなのだが、それに初見で気付くとは流石だ。

 ネット小説を投稿しているようだし、ストーリーの構成には敏感なのかもしれない。



「精神集中……、あ~成程、この能力があるからこそ主人公が神界に呼ばれたってワケっすね」



主人公のレナスには、死の運命にある魂の声を聴いたり、不死者の波動を感じ取る能力がある。



「そういうことだ。この能力を駆使して死が近い人間を探し出し、エインフェリアとして仲間にしていく。ただ、この能力では他に神族の敵である不死者の存在するダンジョンも見つかるので、必ずしもエインフェリアが見つかるワケじゃない」


「あ~、そういう設定なんスね」



 そうでないとダンジョンに入る理由がなくなってしまうため、ゲーム的には必要な設定である。



「ということで、ここから本格的にストーリーが始まる」


「ワクワクっすね!」



 ワクワクしているところ悪いが、ヴァルキリープロファイルのストーリーは重いのばかりなんだよな……

 麗がそれに耐えられるのか、そこに少々不安要素がある。




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