第12話 ダイナマイト刑事2
ドリキャスの蓋を開け、『ダイナマイト刑事2』のディスクを入れる。
ソフトの保存状態があまり良くなかったため、起動するか少し心配だったが、問題は無さそうだ。
ちなみに余談だが、ドリキャスのソフトはGD-ROMという専用のディスクを使用している。
他規格ではアーケードゲーム以外ではほぼ再生されないため、本当に専用と言っていいディスクだ。
こんなところも、セガの商売下手さを感じさせる一面と言えるかもしれない。
「おお、如何にも古い感じのポリゴンっスね」
「これでも当時としてはかなり画質が良いんだぞ」
「わかってるっスよ! ウチも現役ドリキャスプレイヤーっスからね!」
麗の家にあるメインのゲーム機はドリキャスとPS2らしいのだが、PS2は読み込まなくなってしまったので専らドリキャスをプレイしているらしい。
現存するドリキャスプレイヤーはかなり希少なので、同じ現役ドリキャスプレイヤーとしては
「へ~、『ダイナマイト刑事2』はキャラが3人から選べるんスね」
「それもだが、実は女性の方はそもそも1からキャラが変わってる」
「あ、確かに、1は金髪だった気がするっス」
「ほぅ、その通りだが、よく覚えてるな……」
「ふふん! 記憶力には自信があるっス!」
CMで見ただけでそこまで覚えているのは、本当に凄いと思う。
確かに麗の言う通り、1の女性キャラはシンディ・ホリデイ警部といって金髪の女性だ。
当時は主人公であるブルーノ・デリンジャー警部補の上司であった。
ちなみに2のアーケード版でシンディは登場しないが、ドリキャス版では隠しキャラとして使用できる。
「でもあの金髪美女が使えないとなると、この怖そうなお姉さんを使うしか――」
「いや、それはやめておけ。そのキャラは上級者向けだ」
「そうなんスか。じゃあ、他二人だとどっちがオススメっスか?」
「オススメは断然、このエディー・ブラウン伍長だな」
2からの新キャラクターであるエディー・ブラウン伍長(21歳)は、ムエタイ使いの米海軍特殊部隊SEALSの新人メンバーで、バイという設定だ。
他にも面白いキャラ設定があるエディーだが、実はキャラのモデルはあの俳優のエディ・マーフィであり、彼が主演した映画の内容のパロディでそんな濃い設定がされているようだ。
ちなみに主人公であるブルーノ・デリンジャー警部(2では警部補から警部に昇格している)のモデルは、あの『ダイ・ハード』のジョン・マクレーンを演じたブルース・ウィリスである。
後の時代にプロジェクトクロスゾーンというゲームに参戦したが、その際CVがついており、それがブルース・ウィリスの吹き替えを担当している樋浦勉さんだったということで、もうまんまジョン・マクレーンにしか見えない(実際、海外では『ダイ・ハード』の公式ゲーム化作品として発売されている)。
「じゃあ、コイツにするっス」
エディー・ブラウン伍長の性能だが、攻撃範囲が広く、出も早く、威力も高いという、まさに初心者向けの性能をしている。
初心者である麗にはピッタリのキャラなので、素直に受け入れてくれて良かった。
それでも女性キャラ――ジーン・アイビー軍曹を使いたいと言われれば、俺は止めるつもりがなかったからだ。
ゲームは楽しんでなんぼ。好きなキャラを使うのが一番だからである。
――しかし、もしジーンを選んでいれば、麗はそれなりに苦労することになっていただろう。
キャラ愛は、時に人を苦しめることになるからだ……
「ジーンは俺が代わりに使おう」
「先輩が女キャラ使うの珍しいっスね。ブルーノは弱いんスか?」
「別に性別にこだわりはないぞ。面白ければ男だろうが女だろうが、オカマだろうが使う。ちなみにブルーノは中級者向けキャラだが、結果的には一番弱いキャラと言えるだろうな」
「あ~、あるあるっスね」
ジーンは上級者向けキャラだが、使いこなせば雑魚戦では無類の強さを誇る。
どのゲームにもありがちだが、初心者向けのキャラというのは上級者が使うともっと強くなり、結果的に最強になることが多い。
上級者向けのキャラは使い勝手に難があるが、使いこなせばかなり強くなる。
最終的に弱キャラ扱いされるのは、中級者向けキャラになりがちだ。
「先輩、とりあえず何をすればいいっスか?」
「エディはとにかくキック三連打が強い。それだけやってればなんとかなる」
「わかったっス!」
麗はゲームセンスがあるので、強行動がわかるや否やすぐに立ち回りが良くなる。
俺も負けてはいられない。
「おお! なんかそのコンボ凄いっスね!?」
「ジーンは関節技のスペシャリストだ。これは「ゴールデン13レッグホールドコンボ」という」
「名前もハイセンス!」
パワーアップアイテムを取ると技の性能が強化されるのだが、ジーンの場合関節技のコンボ自体が長くなる。
実に様々な関節技が披露されるため、見た目が最高にカッコいい。
しかも、このゲームの関節技中は無敵時間のため、防御面でも強い行動となる。
雑魚戦ではこれを繰り返すことで被弾を減らせるため、非常に有用なテクニックだ。
「ボス戦もその調子で頼むっス!」
「いや、それは難しい」
「なんでっスか!?」
「ボスは中々組むことができないんだ」
関節技を入れるためには、まず相手と組む(掴んだ状態)になる必要がある。
しかし、ボスは組み難く設定されているため、関節技が決めにくいのだ。
「ボス戦はなるべくアイテムを駆使して立ち回るといい。特に爆発物は拾わないで取っておくといいぞ」
「ラジャーっス!」
俺達はその後、難易度やキャラを変えながら『ダイナマイト刑事2』を遊び尽くした。
このゲームは大体30分ほどでクリアできてしまうため、一人でやるとすぐに飽きてしまうのだが、二人でプレイすると一気に楽しさが倍増する。
麗もかなり楽しんでくれたようで、またやりたいと言ってくれた。
自分の好きなゲームを、他の人が楽しんでいるのを見るのは、やっぱり胸が熱くなる。
相変わらず不健康に過ごしてしまったが、俺達にとってはとても充実した一日となった。
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