暁天に鳴く　幕末あやし異聞

　人間と妖の特性をあわせ持つ『あやし者』という種族が生きる世界。極東の島国である日ノ元においては、絵戸幕府の方針により「あやし者とはことごとく悪である」と法で定められ、あやし者は発見されしだい殺されていた。
　安定していた絵戸幕府の治世だったがある日、異国と結ばされた条約により、異国の妖やあやし者の日ノ元への自由な出入りが認められ、彼らに対する一切の手出しが禁じられることとなる。この状況を受け、幕臣に見つからぬよう各地に隠れ住んできた日ノ元のあやし者たちは、異国のあやし者だけが幕府に存在を許されたことに憤り、倒幕を掲げて活発に動き始めた。

　そんな動乱の気配が日ノ元に燻り始めた頃。あやし者の駆逐を生業とする幕臣たる『狩人』の家に生まれた少女・理桜（りお）は、異国より日ノ元へと訪れた妖に襲わ…続きを読む