第13話:謎な点

(ホノカ視点)


 モンスター狩りはちょっとしたハプニングもあったけど無事に終わった。


 バッドラビットは俺が抱えて、ゴブリンの右耳が詰まった麻袋をヴィナタが持って、集合地点に向かう。


 森を抜けると集合地点の父親達が見えてきた。

 

 父親達が見えた瞬間皆んなが走っていく。


「父様!」「父上!」「お父様!」

 

 俺も帰還した挨拶しないとな。


「父上只今戻りました」


 挨拶をすると父上が俺の頭撫でてくれた。

 照れ臭くて恥ずかしいけど…やっぱりこういうのは嬉しい…


「ああ、よく無事に帰ってきた」


 俺と父上が和気藹々としているとリバーシュ子爵が来た。


「ホノカ君が抱えてるのが今回の獲物かい?」


「はい、リバーシュ子爵」


 狩りの戦果を見るために大人が集まってきた。


「バッドラビットを狩ってきたんだな。見事だな」

 

 オーアロー男爵も誉めてくれた。


「しかし丸焦げだな。確かにこいつの毛皮は頑丈ではあるが弓矢で充分倒せたと思ったが、魔法で倒すほど強かったのか?」


「実は…」


 俺たちは今回の出来事を説明した。


 リバーシュ子爵は不安な表情で俺に質問する。


「なんてことだ…それでそのゴブリンの大群はホノカ君が一人で倒したのかい?」


「はい、これ討伐証明として持ってきました」


 ヴィナタがリバーシュ子爵にゴブリンの耳入り麻袋を渡す。


「…28、29、30。本当だ。これは全部ゴブリンの右耳だ」


「トライーガ卿すまないがご子息を“鑑定”させていただきたい」


 リューズ男爵はどうやら俺達の言ってることが信じられないらしい。


「…えぇ、構いません…しかしその内容は内密にしていただきたい」


「了承しています。ジェシー!こっちへ。ホノカ君を「鑑定」しなさい」


「は、失礼致します。“鑑定”」


ホノカ・トライーガ

レベル30

第一職業 魔剣使い

第二職業 格闘士


「なんと…ホノカ様のレベルは既に30、第二職業は格闘士になっております。」


 皆んな俺の鑑定結果に驚き、目を丸くしている。

 そして「鑑定」の結果を聞いてリューズ男爵が父上に謝罪する。


「疑ってすまないトライーガ卿、だがご子息の強さはどういうことだ?7歳の子どもがゴブリンを圧倒するほど強いとは未だ信じられない、元からレベルが高かったのか?」


「すまない、私にもそこまではわからない。でもこの子は幼いころ妻に似て馬鹿力でいろんな物を壊してたから。元から力だけはかなり強かった」


 母上が話題に出てくると大人達は一気に納得したみたいだ。

 母上の馬鹿力は貴族の間で有名なのか?


「ムーン辺境伯家のグレンダ嬢か…か、彼女の子どもなら確かにできそうだな…」


 おーリューズ男爵がぶるってる。

 この人も母上に恐怖を植え付けられた人か…


「しかし兵士達はどうしたんだ?そんな連絡は来ていないぞ!?」


 そうだよな、前もって聞いていた話と違うぞ!

 オーアロー男爵も怒ってるぞ!


「確かにそのことも気になりますが、今はホノカ君に我らが子を助けていただいたことを感謝すべきじゃないかな?」


「いやでも、僕も必死でしたし、その場は自分が生き残るために戦っただけですし、お気になさられないでください」


 下位のゴブリンを数匹倒しただけで感謝なんて大袈裟だよ。

 この世界でも下位のゴブリンはかなりの雑魚モンスターの筈だし…


「そうはいかないよ。私にとって子供は領と同等以上に大切だ。それは彼らも同じだよ」


「あぁその通りだよ」


 父上まで…


「私達貴族は決まりに縛られてはいるが子どもを思う気持ちは人並みにあるのだよ」

リューズ男爵は少し悲しそうに言う。


「ホノカ君「「ありがとう」」」


「は、はい」


「それでトライーガ卿、今日はどうやらこの森は危険なようだ。残りの兵士が戻って気次第帰りましょう。」


「その方が懸命ですね。」


 今日は御開きか。


「ほ、ホノカ!あの…さっきはありがとう…私冷静じゃなかった…ホノカのおかげで自分が傲慢になっていたのに気づけた…ありがとう」


「あ、うん」


 若干だけ言い過ぎた気もするけど素直になってくれたみたいだから結果は良かったよね?


「ヴィナタ君もごめんなさい…」


 ん?なんで俺は呼び捨てだったん?


「いいよ!僕が武器を忘れちゃったのが悪いんだから!」


「ヴィナタお前にも友人ができたみたいでよかったよ」


「はい!父様」


「でも武器を忘れたってどういうことかな?」


 リバーシュ子爵は笑顔で話してるが笑ってないのがわかる。


「え…えとパ、パそのそれは…」


「家に帰ったら話そうか」


「はい…」


 どんまいヴィナタ。


(クーガ視点)


 今日はとんでもない日になってしまった。

 

 よりによってゴブリン共に襲われる何て…


 ゴブリンは統率する個体がいるだけで難易度が一気に増す…

 30体の規模なら私やリバーシュ卿が相手にしないといけなかっただろう…

 リューズ卿やオーアロー卿も弱くはないが二人とも乱戦は不慣れだ。


 ホノカがいなかったらどうなっていたことか…


 あの後、我が家とリューズ家の兵士だけが帰ってきた。

 兵士が帰ってこない二つの家は我々に帰ることを勧め我らはそれに同意した。


 さっき連絡用魔導具を使用し経過を聞いた。


 彼らは一部の兵士を残して、後に増援をして調査を行った結果、リバーシュ家、オーアロー家の兵士、計4名の死体を発見した。

 その死体を見る限りゴブリンやモンスターに襲われたのでなく、急所を一撃で仕留められていた。


 今回の兵士はどんなモンスターが来た場合でもそれぞれ時間を稼げるレベル25以上の接近戦を得意とする戦闘職と逃げて情報を持ち帰るための斥候などを配備し、子供達の東西南北に配置した。

 別行動したとしてもそれぞれ行く方向に見守っていた。

 我が家は東を、リューズ家は北を、死亡してしまった兵のリバーシュ家は南を、オーアロー家は西を担当していた。


 リバーシュ家はこの件について王国、冒険者ギルドに報告をしたほうがいいとの言ったが…

 オーアロー家が配属した兵士は甥っ子だったらしく、甥っ子を殺されためその復讐を終えるまで、王国の騎士や冒険者に捕られたくないようだ。

 リバーシュ家はそれを何とか宥め、王国に報告することになった。

 オーアロー卿は我ら二人も怪しんでいたようだ。


 あの時の剣幕は凄かったな…


(数時間前)


 クーガは貴族達と魔導具越しに連絡をしていた。


「甥っ子と部下の仇を我が家に取らせてくれ!」


「お気持ちは分かります…ですが、これは王国に報告して調査を行わなければならない事案です」


「その通りだ。オーアロー卿、冷静になり情報を確かめないと…」


 サルジャが四人で情報を確かめて今後の行動を決めようとするが、ホルクに遮られてしまう。


「分かっている!!だが…弟の大事な子を…あの子が産まれたとき、私が名付けて私が弓術を教えてやったのだ!

そもそも…部下を失っていない貴方達二人には分からないでしょうし…貴方達が…!」


「オーアロー卿!それ以上の失言を、私は看過することは出来ませんよ」


 ゴルロージはホルクの失言を止めた。


「では子供達の情報しかありませんが、情報をまとめて今後の事を決めましょう」


(クーガ視点)


 子ども達の証言と足跡からゴブリンの大群は西からやってきていたことがわかった。

 恐らく兵士の殺害とゴブリンの大群は偶然ではなく誰か仕組んだものと思われる。

 しかしゴブリンとはいえ30体もの数を一人で使役できる者はまずいない。

 だが死んだ兵士以外の痕跡は見つけられなかった。


 ゴブリンが誘導された場合も考えたがゴブリンメイジもいたのにそのことは考えにくい。

 ゴブリンメイジは人語が話せないだけでホブゴブリン並みの賢さを有するのに人に誘導され利用されるのはまず無いだろう。


 ゴブリンはオーク並みの精力で繁殖のことしか考えない。

 女が生きてさえいれば餓死するまでヤリ続けるモンスターだ。

 ゴブリンメイジも例外ではない。

 それなのにうちの息子達はまだしもリューズ家の御令嬢も殺そうとしていたらしく使役下にあり子ども達を皆殺しするのが命令だったと考えられる。


「こんなこと今迄無かったのにな…」


 つい口に出してしまった。

 子ども達にこんな姿を見せられないな。


 家族のために戦果を挙げることを考えてきたが、それだけでは駄目だ。


 私は勿論、ホノカのレベルを上げ、剣技も魔法も高めていかなくてはならない。

 明日からは猛特訓だな。



(ホノカ視点)


 結局うちとリューズ家の兵士しか帰ってこなかった。

 そのためうちとリューズ家は先に帰った。

 その後、父上が書斎で時代遅れの魔導具で連絡してたみたいなので、話の内容を聞こうとしたが、弟に遊んでとせがまれてしまい。

 今遊んでる真っ最中だ。


「とぅ、いきましょ!ゆうしゃしゃま!」


「わかった!我が友ユーガよ!」


「キャハハ」


 遊び内容は木を怪物に見立てた勇者様ごっこだ。

 この遊びを彼此2時間弱やってる。

 嬉しいことに弟は俺を慕ってくれ、勇者様役をらせてくれている…と言いたいが恥ずかしい。

 側から見たら弟の勇者役を奪った悪い兄貴に見えるだろ。


「なぁ、やっぱり勇者役はユーガが演ったらどうだ?」


「いいの!おにいしゃまがいいの!」


「そうか…」


 この通り頑なに俺に譲ってくる。


「おにい…ゆうしゃしゃま!かいぶちゅをたおすのでしゅ!」


「わかった!我が友ユーガよ!」


「キャーーー」


 さっきもそうだが弟はこのセリフが大好きでめっちゃ喜ぶ。


 そういえばオーアロー家はうちと似ていて戦争で活躍していて分隊の副隊長を務めているらしい。

 さらにお金が無いところも…

 うちと違うのは戦争がないときの副業が農業ではなく狩りで生計を立てていて、5人兄弟でスパルはその次男だ。


 兄弟で何して遊んでるか聞けばよかったな。

 子どもの遊びはわからん。

 そのせいで弟が一番喜ぶこれをやってるいるのだが、さすがに飽きる。

 前まではキャッチボール(鉄球)で遊んでいたが、ブームが過ぎてしまったらしく現在ブームの勇者ごっこで遊んでる。


「おにいしゃま、しゅうちゅうしてくだしゃい!」


「あ、あぁ。ごめんな」


 結局オーアロー家とリバーシュ家の兵士は帰ってこなくてあの後どうなったんだろう。

 兵士の一人はオーアロー男爵の甥っ子にあたりオーアロー男爵は心配して焦りを露わにしていた。


 リバーシュ子爵の提案で俺たちは先に帰った。もちろん父上は協力を提案したが、「我が兵士の安否に他家を巻き込むことはできない」と拒まれしまった。


 今日のゴブリンで解ったことだが、おれの拳が当たったゴブリンの頭が爆ぜた。

 やっぱり装備を整えないと危ないな…

 あとINT《法術力》を下げるのも容易しておきたいな。魔法の焼け跡とかは誤魔化しが効かないからな。


「いだ」


「おにいしゃま、しゅうちゅう!」


ゴン


 弟に脛を木剣で叩かれてしまった。


「ユーガ様、お兄様を叩いては駄目ですよ?お兄様は今日は狩りでお疲れになっているのですよ」


 いつの間にかヨハンがいた。

 声かけてよ。


「んーー」


 あー不貞腐れてしまった。

 俺か母上以外だといつもこんな感じになってしまう。

 ちなみ父上はそもそも怒らない。


 今日ばっかりは注意しないとな。

 将来シューナ嬢みたいになってしまったら嫌だ。


「ユーガ、兄ちゃんが集中してなかったのはごめんな」


「いいよ!」


「でもなヨハンは兄ちゃんのこと心配して更にはお前のことを思って注意してくれたんだ…だからさっきみたいな態度はヨハンが可哀想だろ?」


「…うん」


「じゃあ何を言わなきゃいけないかわかるな?」


「…はい。ヨハンごめんなさい」


「いいのです。ユーガ様。私も言葉足らずでしたので、ユーガは何も悪くないのです。お気になさらないでください。」


 ん?ヨハンってこんな事言うっけか?

 ヨハンに怒られた事ないからかな?


「ではもうすぐご夕食ですのでお二人とも戻りましょう。」


「わかった」「はい!」

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