第7話:新しい依頼
ホノカの爆走により直ぐに王都に着き、門を通らず王宮の目の前に来た。
一様これにはホノカなりの考えがあっての事だった。
どこに裏切り者がいるかわからないため、人と接触する場所を避けてきた。
「はぁ…はぁ」
「大丈夫か?」
オーレンはホノカの事を少し睨み、平静を装ってから、いつも通りのオーレンに戻った。
「ありがとう、確認したい事もあるので王宮に来てくれないかい?」
「嫌だけど友達の頼みだ。行くよ」
「助かります」
オーレンはホノカの何気ない言葉に照れて、ホノカに背を向けてせっせと歩き出す。
オーレンは他所行きの顔になり堂々と門番の前へ行く。
「第三王子オーレン・ペンドラゴンだ。通してくれ」
衛兵達はオーレンに気づくと慌てて近寄る。
「オーレン様!」「お戻りなられたのですね!」
「オーレン様、そこの者は?」
衛兵達はホノカに警戒して、武器握り戦えるように備えた。
オーレンはホノカが公爵邸で暴れたようになる前に急いで弁明する。
「彼は僕の護衛をしてくれた。S級冒険者、「黒刀」のトーカ殿だ。失礼の無いようにしてくれ」
衛兵達は「黒刀」の名を聞いた瞬間、ホノカを更に威圧する。
オーレンの言葉は逆に衛兵の警戒心を強めてしまった。
そんな衛兵達を止める声がする。
「やめろ!」
その声の主はオーレンではなく、太った金髪の男性だった。
「すまない『黒刀』殿。私はオーレンの兄。ブレン・ペンドラゴンだ。
弟を助けていただいたのに衛兵達が無礼を働いてしまって…でも衛兵も職務を果たそうしたにすぎぬ…どうか彼らを許してやってくれ」
そこに現れた太った男性はペンドラゴン王国の第二王子。ブレン・ペンドラゴンだった。
(「コイツ本当に王子なのか?“鑑定”」)
…
隠蔽
氏名ブレン・ペンドラゴン
種族 人族
レベル36
第一職業 修道士
第二職業 商人
第三職業 聖棍使い
称号なし
…
(「隠蔽?もしかして影武者か何か?この見た目じゃ、すぐバレると思うけど…」)
ホノカが途轍もなく失礼な事を考えている。
「兄上、どうされたのですか?このような場所に来るなんて?」
オーレンは本物の兄であるブレンが王宮の外に出ている理由を尋ねた。
何故ならブレンは頭が良い為、武人でないにも関わらず国の政治に口を出す事が出来る数少ない人物だからだ。
この世界のペンドラゴンでは武人の言葉が重要視される。
それほどブレンの頭脳は逸材なのだ。
「お前が暗殺されそうになったと聞き、更に騎士団に裏切り者が出たと聞いたら、私も重い腰を上げて動かざるを得ないよ。お前の為、強いては王族、王国の為にね」
(「弟が襲われたのにあくまでも国が優先か…本物ならかなりドライな兄貴だな」)
未だに失礼な事を考えてるホノカをじっくりと観察するブレン。
(「何でコイツ、俺の事ジロジロ見てんだ?」)
「あぁ、すまないね『黒刀』殿。
君程若いS級冒険者を見た事が無かったからね」
ブレンはホノカの不快そうな顔に気づき謝罪した。
オーレンはホノカの明らかに王族だと思っていない失礼な目に気づき、耳打ちをする。
「少し肥満なお身体だけど歴とした血の繋がった僕の兄で王子だ。」ボソ
「本当か?影武者とかじゃないのか?」ボソ
「プッ、やめてくれ…影武者ではない。本物の第二王子だよ…くく」ボソ
ホノカの不意に言われた『影武者』という単語に思わず笑ってしまうオーレン。
ブレンはそんな二人に笑顔を向ける。
「何を楽しそうに話しているんだい?」
「いいえ、兄上…グフ」
ブレンの太った顔を見て再び笑ってしまうオーレン。
ブレンはそんなオーレンを見て微笑む。
「お前に友が出来たのだ…嬉しいよ。兄として…」
(「ぽっちゃり王子、ドライな奴かと思ったら良い奴なんだな」)
ホノカは“看破”を使用し続けている為、ブレンやオーレンの言葉に嘘がないのは気づていた。
「すみません…あ、兄上」
「気にするな。笑っているお前をみるのはいつぶりだろうか…」
その言葉にオーレンは気まずそうになってしまった。
ブレンはホノカを信じて弟を任せる。
「「黒刀」殿。弟を…オーレンをよろしく頼むよ」
「あぁ」
ブレンは少しだけホノカに近づき握手を求め、ホノカもそれに応じる。
「叔父上がすまかったね…」ボソ
近づいてきたブレンは叔父であるガルルグの事を謝ると振り向き王宮に戻ってしまった。
(「コイツもうそんな情報を手に入れてるのか…政治も出来るとは聞いてたけどコイツ恐ろしいな…あまり近寄らない方がいいかもな…」)
ここでホノカは情報通のブレンに関わりすぎると復讐が実現する前に自身の正体がバレる事を危惧した。
「僕らも行こうか」
「俺も行った方がいいのか?」
「流石にね、国王様に説明をしないといけないからね。言葉は気にしなくていいよ。でも立ち振る舞いは前もって、矯正させられると思うから、気をつけてね」
「あぁ…」
「大丈夫。国王は武人が好きだからね、S級冒険者のトーカがミスしたくらいで何も言われないよ」
「左様ですか」
「はは、あともしかしたら貴族に誘われるかもしれないから怒らないで欲しいんだ。兄上、ブレン兄様が注意してると思うけど…もしかしたらがあるから…」
「わかったよ。」
ホノカはその後、最低限の立ち振る舞いを教えられ国王との謁見が始まった。
「表上げよ」
ホノカは顔を上げる。
国王ゲオルグはホノカの顔をじっと見る。
「我が息子オーレンの護衛ご苦労様だった。お主のおかげで裏切り者の騎士を捕まえることも出来た。感謝する。
して、お主に褒美をやろう。何を望む?」
「金を」
前もって欲しい物が無ければ金を頼むようにと言われていた。
「わかった。金貨千枚を授けよう」
「有り難き幸せ…」
「S級冒険者トーカよ、お主に陥って頼みたいことがある。我が息子オーレンの護衛をこのまま続けて貰いたい。報酬はお主が望むだけ用意しよう」
「失礼ながら王よ。
私にはやらなければならないことがあります。ですので王の頼みを応えることはできかねます。」
謁見の間はホノカの断りの言葉により、一瞬ピリつく。
「そうか…わかった。これ以上は無理言わん…」
国王は目を閉じて少し考えるが、謁見は無事に終わった。
ホノカはオーレンに帰るために王宮の案内をされていた。
「トーカもああ言う断りの言葉が言えたんだね」
「悪いな、お前が嫌な訳じゃない。本当にやらないといけない事があるんだ…」
「あぁ、わかってる…君とは付き合いは短いけど、何とかだけどわかるよ」
「そうか、ありがと」
「じゃあまたね」
「またな」
二人は友情を握手を交わして、ホノカはギルドへと行く。
(国王の書斎)
国王と宰相、大臣そしてブレンが集まって、ホノカの事を相談していた。
「ブレンよ、あの者をどう思う?」
「恐らく没落貴族の子息だと思われます」
「やはりそう思うか…」
「しかし、この数年で没落したは10数の家があります故、特定には時間がかかるかと…」
宰相であるドゥルー侯爵は難を示すように言った。
「あぁ、ブロン公爵の手によって没落させられた家なのは間違いないでしょうな」
財政大臣であるキクチ伯爵がドゥルーに同意した。
「不正の証拠が見つからない以上、彼を裁くことはできない…」
ゲオルグもブロン公爵が不正をしていることには気づいていたが、その証拠は見つからない、国王であるゲオルグや神であるホノカが探しもブロン公爵の不正の証拠は一切見つからない。
「彼の英雄の話に戻しますが、私が調べた限り『魔刀使い』などここ12、3年以内に現れたという話も噂も聞いたかとがない」
ドゥルーはホノカ、トーカの出生に疑問を思っていた。
調べても調べてもそんな情報はない…このペンドラゴン王国の家ではないじゃないかとまで思っている。
「確かにそこも気になるな『魔剣使い』なら、英雄の一族トライーガ家に産まれたと聞いたが、その子は魔剣使いと格闘使いなったはずだ」
キクチはトライーガの事をよく思っていた。
実は彼はクーガの恩師でもある。
「この話は一旦止めよう…」
ゲオルグが武人と戦いが好きだ。
ブロン公爵の所為でここ数年でペンドラゴンの戦力は低下していた。
戦闘に優れた名家の失墜、名だたる冒険者の失踪。
ゲオルグは人望はあり人気のある王ではるが、脳筋なところがあり、力で解決出来ない事は嫌いだった。
「王よ、彼の英雄に対して妙案がございます」
◇
(ホノカ視点)
はぁ…面倒だったな…
オーレンには悪いけど、もう貴族とか王族とは関わりたくない…
忘れよう…
ポーラは元気かな?
早く婆さんに報告して家に帰ろう。
「婆さんはいるか?」
「ギルド長ですね?はい。少々お待ちください」
よかった。あの婆さん偶にいないからな…昔よりはいるみたいだけど、副ギルド長の事を反省してねぇだろ。
まったく…
来たな。
「待ったかい?」
「いや」
「無事、王子を守ったみたいだね。でもどうやって王都に入ったんだい?門はあんたと王子の所為で大騒ぎだったみたいだよ?」
「企業秘密だ。」
王子担いで屋根跳ね回ったなんて言えるわけないし。
「相変わらず秘密が多いね」
あんたが言うな。
「それより、今回の報酬は?」
「まったく…はいよ、これが今回の報酬の金貨50枚だよ。」
報酬も受け取ったし帰るか。
ポーラも待っているだろうし…
「ちょいとお待ち」
またかよ…
「あのな婆さん王子の護衛は…」
「そっちじゃないよ。早とちりしたね」
ニヤニヤすんな狸婆。
「あんたには冒険者ギルド対抗バトルに出てもらいたいんだよ。」
「なんだそれ?」
「最近うちのギルドの収益や実績はあんたのおかげもあって鰻登りでね…それを嫉妬した王国の他のギルド長に仕掛けられていてね。」
「あんた王国の総支部長だろ?」
「私を蹴落としたい奴は多いんだよ。あとあんたがいるから受けて立っちまってね」
ったく…
「なら自業自得だ」
ふざけんな!お前の尻拭いじゃねぇか!
「ここで負けちまうと私は他のギルドに移されちまうんだよ…」
「だから」…ん?
待てよ?この婆さんがいなくなっちまったら…最悪俺の身元の調査が入るかもしれない。
冒険者ギルドは本来身元を最低限は調べて登録する。
婆さんの事を嫌いな奴がここに移って、婆さんと関わっていた俺を気に食わないとあり得る…
くそ…!ば、ば、あぁ…
プルプル
血管キレそう…
「わかったよ、その対抗バトルに参加してやるよ」
「助かるよ。私のために。」
ニヤニヤしやがって!わかってやってるな!
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