第8話:ギルド対抗バトル
(ホノカ視点)
あの婆さんにしてやられたな。
いつまでも愚痴を言っていたってしょうがないもんな…
ポーラにはイライラしてるとこ見せたくないし、今は忘れよう。
「ただいま」
「お帰り!お兄ちゃん!」
細い腕で一生懸命抱きしめてる…ほぼ一日いなかったから寂しい思いをさせてしまった…
「今日は一緒に遊ぼうか?」
「うん!」
ポーラは5歳だけど、もう大人びていて遊びっていうより修行に近い。
体術や弓、投擲の練習をする。
お絵描きも好きだけど基本は戦闘訓練をしている。
恐らくではあるがポーラは母上やユーガのように筋力はない。
普通の5歳よりはあるけど、ユーガのように鉄球を投げたり、剣で木を斬り崩したりはできない。
昨日は“気功術”を覚えたからそれも段々と可能になってくる。更にいえば格闘王に昇級させることができるかもな…
「お兄ちゃん!行こう!」
「あぁ」
そういえばあの婆さん今回行うのは団体戦って言ってたな…回って来ないといいな…
◇
対抗バトル当日。
ここはペンドラゴン王国が管理してる第二闘技場である。
平民向けに開放されているが勿論貴族も来る。
総支部側の冒険者5人が集まっていた。
「よ!『黒刀』!」
「あぁ、ハーグ。あんたも婆さんに言い包められた口か?」
「いや?なんだ、あんたは言い包められたのか?」
ハーグはホノカの失敗を面白そうに聞く。
「まぁな」
「実は俺の爺様とあの婆さんは元同じパーティで活躍してたんだよ。だからその縁で協力するんだよ。まぁ、あの婆さんには鍛えられた恩とか色々あるしな。」
「そうか。他の奴を知っているか?」
ホノカはハーグ以外の事を知らない。
「来たばっかだからな…でもアイツは知っているぞ。」
そうして指された男は細長く、槍を3本持っていた。
「アイツは「投槍」って呼ばれているA級冒険者だ。アイツの槍を投げるところ見たことあるが、
250mは投げ飛ばしてた。」
「それは凄いな。」
(「俺ならスキルを重複して使用すれば、900はまず行くな」)
二人が話していると「投槍」と呼ばれた男がきた。
「「大剣」、S級冒険者様に勝手に私の事を紹介しないでくれないか?」
「投槍」と呼ばれた男はキザな言い方と立ち振る舞いをした。
ハーグはそんな変な振る舞いをする奴に苦笑いをしながら謝る。
「それは悪かったな、「投槍」」
「投槍」はハーグの謝罪に満足して、ホノカへ自己紹介を始めた。
「「黒刀」殿、お初にお目にかかります。私「投槍」ことボンレです」
今度はキザというより、しっかりとした貴族の様な振る舞いをする。
「燈火だ」
二人は挨拶に握手をする。
「あんたらだけで挨拶すませんなよ」
他の二人も挨拶をするために近づく。
紫と茶色の髪色の青年がまず挨拶をする。
「自分はA級冒険者『楽土』ウォード・ウィステリアっす。よろしくっす」
軽そうな感じで話す彼は貴族である。
次は先程声をかけてきた青髪の青年が挨拶をする。
「俺はA級「激流」のスカーレットだ」
ボンレはスカーレットの事を馬鹿にした様に笑う。
「スカレート?」
「何だ?」
「いや別に」
ボンレはすかした仕草でスカーレットを更に煽る。
スカーレットは食って掛かろうとするが、ホノカが質問する。
「何でスカーレットなんだ?」
スカーレットは一度落ち着いて、自分の名の由来を話始める。
「俺の生まれた町は秋になると紅葉が綺麗な事で有名な町でその年に俺が一番最初に生まれたんだ。それで母さんがスカーレットって」
「いい名前だな。親もその町もお前がA級冒険者になって喜んでいるだろう」
「あぁ、ありがとよ」
「なぁ、お前」
ホノカはボンレを睨みつけ、ボンレの名を呼んだ。
ビク
ボンレはホノカに声をかけられてビクついてしまう。
「人の名前には意味がある。
それは子供を思ったり、何かを背負って名付けられる。
親にとって、勿論子にとっても希望であり大切なものなんだ。
何も知らない他人が馬鹿にしていいもんじゃないんだよ」
ボンレは顔面が蒼白になり、壁に寄りかかり謝罪する。
「わ、わかりました…」
その様子を見ていたウォードはホノカの行動に感銘を受け、ホノカを褒める。
「「黒刀」さんは噂と違っていい奴なんすね」
「いや、そうでもないさ…」
ウォードは謙虚な人だと考えてそれを以上は何も言わなかったが、少し違う…
(「子供の頃…これを言えればよかったな…爺ちゃん…」)
ホノカは前世の子供の頃を思い出していた。
彼はこの名前で酷いイジメを受け、辛い時期がある。
ホノカはその事で祖父や家族に酷い事をしてしまったことを大人になっても、転生した今でも後悔している。
幸いこの国では『ホノカ』という名前が女性っぽいという価値観がないため、前世のような想いはしていない。
「冒険者の方々、入場を」
四人は立ち上がり、闘技場が入場しようとするが、ホノカはいつも違う装備に変える。
刀を肩にかけ金属の軽鎧を着て、目と輪郭を隠す鬼の仮面を着ける。
「ん?「黒刀」そんなのしてたか?」
「あぁ、これは俺にとっての正装なんだ」
「そうなのか…なんか、いつもよりこえぇな…」
「だろ?」
ホノカは少しハーグを揶揄った。
そして5人は入場する。
「王都支部!冒険者入場!!!!
先鋒!A級「楽土」のウォード、
次鋒!A級「激流」のスカーレット、
中堅!A級「大剣」のハーグ、
副将!A級「投槍」のボンレ、
大将!S級!「黒刀」のトーカ!」
「第一公都、第二公都連合チーム入場!!!
先鋒!新生のA級パーク、
次鋒!3代目『斧姫』ベロニカ…」
(「『斧姫』!?」)
そこにはホノカの母であるグレンダと同じ異名を持つ長身の女性がいた。
『斧姫』は襲名制になっていて、グレンダにはランという可愛いがっていた後輩がいた。
そのランはグレンダに憧れた風斧術師だ。
グレンダと違いのパワーは無いが、2本の風斧で戦う姿は与えられた名に負けていなかった。
しかし、彼女はそれがコンプレクッスで先代「斧姫」であるグレンダのような豪快かつ繊細な戦いを憧れていた。
そして後継にはグレンダのような戦える女性を探した。
それがベロニカだ。
「中堅!S級「怪人」ギードラ
副将!S級「炎雨」カサンドラ
大将!S級「宝剣」カフィ・ラテアー!」
会場はざわついていた。
四人のS級を見れるのもあるが、『宝剣』のカフィは他国のS級でこの国にも名は轟いていたがこの国で活動したことがないからだ。
それもその筈、彼はヘレスティナ失墜のため、送られてきた冒険者なのだから。
更にホノカが鍛えたS級はこの日に他の任務で他国に行っていた。
これもヘレスティナ失墜のために根回しされていた。
(「“鑑定”」)
ホノカは敵を分析し始めた。
…
氏名パーダ・オツァム
種族 ペンドラゴン王国 貴族
種族 人族
レベル40
第一職業 炎魔導士
第二職業 騎士見習い
称号 偽りのA級
…
(「コイツ…たしか…?」)
彼はこの前ホノカにB級不合格を言い渡されたパーティのリーダーだった。
彼は親の知り合いである第一公都のギルド長によってA級にしてもらっていた。
しかも…
…
魔付の指輪
レア度
耐久性 50
効果 【炎魔法 フレイムブレス】使用回数3/3
魔付の指輪
レア度
耐久性 50
効果 【炎魔法 フレイムブレス】使用回数1/1
魔力強化のネックレス
レア度
耐久性 25
効果 INR+100
魔力増強の指輪
レア度
耐久性 25
効果 EP+1000
魔付の指輪
レア度
耐久性 25
効果 【氷魔法 アイアンシールド】使用回数10/10
…
彼はアイテムで自身の強さを底上げしていた。
(「コイツだいぶ旧式のアイテムを揃えて来てるな」)
ホノカ達『ミソクリ』経験者にとって旧式装備だ。
アイテムに魔法を付与すると威力は固定され自身のステータスを活かすことが出来ないため『ミソクリ』では不人気のアイテム。
しかし魔力、EPを消費しないこのアイテムはこの世界では貴族や王族は常用している。
(「アイツも…」)
…
氏名 カフィ・ラテアー
種族 人族
レベル99
第一職業 聖騎士
第二職業 付与魔道士
第三職業 鉄魔導士
称号 偽りのS級
真・クリスタルブレード
レア度
攻撃力 50
耐久力 1,000
重さ 100
効果【土魔法 ランドカット】使用回数10/10
【氷魔法 アイスカット】使用回数10/10
【風魔法 ストームスラッシュ】使用回数1/1
ゴールドオイルワイバーンの鎧
レア度
耐久性 5,000
頭…DEF+100
胴…DEF+500
腕…DEF+500
腰…DEF+500
脚…DEF+500
効果 スキルを同時に二つ使用可能
魔付の指輪
レア度
耐久性 100
効果 【金魔法 ゴールドシールド】使用回数20/20
魔付の指輪
レア度
耐久性 100
効果 【水魔法 ウォータースフィア】使用回数1/1
魔付の指輪
レア度
耐久性 100
効果 【風ウインドボール】使用回数35/35
魔付の指輪
レア度
耐久性 100
効果 【付与魔法 パワーハイブースト】使用回数3/3
身体強化の指輪
レア度
耐久性 500
効果 “身体強化Lv80”
魔付の指輪
レア度
耐久性 100
効果 【回復魔法 ハイヒール】使用回数5/5
…
(「コイツは更にてんこ盛りだな…)」
カフィは他国の王族で、一族からのS級冒険者を排出という野望から作られたS級なのである。
(「他の奴は装備は普通だな。)」
ホノカが観察してる間、審判のがルールの説明をしていた。
「一つ!この戦いはでは殺しを禁止とする。
二つ!ポーション等のアイテムは使用不可。
三つ!闘技場から落ちた場合も負け扱いとする。
以上!互いに礼!!」
両チームは互いに礼をして、各陣営の席に戻る。
「10分後に先鋒戦を開始する!」
(連合チーム)
「『黒刀』に見せてやる…僕の本当の力を!」
パーダはホノカの事を逆恨みしていた。
「元はといえば、お前が悪いんだぞ!」
パーダはベロニカの方を睨み、凄んでみせるが、ベロニカは気にも留めない。
「私は依頼通り、仕事をやったまで…合格しなかったのはお前の実力不足だ」
彼女はパーダの昇格試験のとき重騎士だ。
「なんだぁ〜と!?」
「『黒刀』の見解は正しい」
「黙れ!女風情が!!」
パーダは自身を馬鹿にされ激昂してアイテムを使用とするが…
「「黙れ」」
「ヒッ」
S級2人がパーダを殺気を放ち黙らせる。
「俺、馬鹿、嫌い」
「女に喧嘩売ってんの?クソガキ」
カサンドラとギードラはパーダの態度に憤慨していた。
そんな二人をカフィが宥める。
「まぁ、いいじゃないですか。血気盛んだと思えば」
しかし二人は余計に不機嫌になる。
「ふん」「無視」
「あ、ありがとうございます。カフィ様」
パーダはカフィに謙り感謝する。
「いいのですよ。仲間ですから」
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