第9話:魔導師vsエセ魔導師

ホノカは先鋒戦のウォードを見ていた。


(「コイツ、随分余裕そうだな」)


 ウォードは試合前だというのに串焼きを食べて、その美味しさに鼻歌を奏でる。


「おい、ウォード」


 ホノカはそんなウォードに声をかた。


「何すか?「黒刀」のアニキ」


「アニキって」


「アニキの漢気に惚れたんスヨ」


 ウォードはスカーレットの一件でホノカの事を尊敬し、急にアニキ呼びをになった。


 ホノカは複雑な顔するが、少しだけ嬉しそうな顔を一瞬だけ見せる。


「そうか」


(「アイツが雑魚に見えるのはわかるからな…でも油断はよくないしな」)


「それでだ、ウォード…

あのパーダって奴はアイテムで力を底上げしてるから気をつけろ」


 ホノカはウォードに忠告した。


「気づいてたんすか!?」


 実はウォードも「鑑定」スキル持ちなので気づいていた。


「あぁ、お前もか?」


「うぃっす」


「それなら大丈夫」


「なんでっスか!?」


「アイテムの性能を知って、その余裕なら大丈夫だろ」


「あっ、すんません、安…なんか腹減っちゃって…」


 ウォードはパーダのレベル、装備を見て、勝てる算段が立つと心に余裕が出てきて飯を食ってしまっていた。


「気にすんな、でも格下相手に油断しすぎるなよ」


「うっす!見ててください…あのおぼっちゃまに教えてやりますよ。本当の魔法を」


「あぁ、たのしみにしてる」


(闘技場)


 ウォードもパーダ程ではないが装備を揃えてきた。


追い風のローブ

レア度 団長級シルバークラス

風属性値+20

効果:「風属性耐性Lv.10」


疾風のブーツ

レア度 団長級シルバークラス

AGI+35

効果:「縮地Lv.1」


魔付の指輪

レア度 精鋭級ブロンズクラス

効果:「土魔法 ランドランス」1/1


生木の短杖

レア度 団長級シルバークラス

攻撃力 1

耐久力 90

重さ 20

効果:「詠唱省略Lv.10」


「両者前へ!!」


 二人は闘技場に上がり審判の横に立つ。


「お前を潰して!「黒刀」に送ってやるよ!恨むなら「黒刀」を恨め!!!」


「…」


 パーダはウォードを煽ってきたがウォードはガン無視する。


「無視してんじゃねーぞ!俺はオツァム伯爵の嫡子だぞ!!!!」


「だから?」


「ふん!これだから平民は…」


(「コイツ馬鹿なのか?自分もさっき家名を紹介されてなかったのに、何で自分さけ貴族だと思ってんだ?」)


 ウォードはパーダの無能さに呆れ過ぎて気疲れしてきた。


 そもそもウォードはウィステリア侯爵家の四男にあたり、更にウィステリア家は第二公都のフジムラサキ公爵の分家にあたり、オツァム伯爵家よりかなり格上である。


 こんな大事な事を知らないパーダはウォードに不敵な笑みを向ける。


「決めた。お前は半殺しだ」


(「コイツ、まだ言ってるよ…」)


 ウォードはパーダの傲慢さに辟易してきた。


「互いに礼!」


 二人は礼をして距離をとる。


「それでは…はじめ!!!!」


「フレイムブレス!」


 パーダは開口一番に4回しか使えないフレイムブレスを使う。


「“縮地”」


 ウォードは炎の塊を一瞬で避ける。


「おどぉぉれぇ!!!」


 パーダはアイテムの力を自身の力だと勘違いして興奮して、何度も魔法を放つ。


「フレイムブレス!」


 ウォードは


「“縮地”」


「防戦一報だなぁ!!!フレイムブレス!!!」


「我が力よ

土で土石を形創り、

我が敵を撃ち払え!

土魔法 ストーンショット」


 ウォードは石で地面を攻撃する。それより砕けた土石が砂煙になりウォードの位置を把握できない。


「目眩しか…」ニヤ


 パーダはまた不気味な笑みを浮かべた。


「我が力よ

龍の息吹を炎で再現せよ

龍の炎よ…」


 パーダはフレイムブレス詠唱し始める。


 その瞬間ウォードが詠唱をしながら砂煙から出て来る。


「土魔法 ランドランス!」


「アイアンシールド!」


 しかしその攻撃は鉄の盾に阻まれる。


「馬鹿が!!!!!貰った!フレイムブレス!!!」


「お前がな、ランドスフィア」


 ウォードがさっき撃ったのは魔付の指輪の魔法だ。

 『ミソクリ』では詠唱を途中で止めると魔法が消えてしまう。

 この世界でも詠唱の間にはスキルは使えないが詠唱が終わりさえすればある程度好きな時に撃てる。喋ったりもスキルを使用出来る。

 そして魔付の指輪を発動することも出来る。

 何で魔法を維持出来るかというと言霊にされた魔力は体内に残っている為、詠唱を終えるか、その魔力を発散する必要がある。

 勿論、放出するために使おうとした魔力なので長時間は意地できないが、数分の間ならいつでも発動出来る。

 そのために大会では公平制を保つ為、試合前に数十分の空きがある。


 これはゲームの時は出来なかったこの世界独自の技術だ。

 因みに魔力を発散しないと魔力が暴発して人は死ぬ。


 土はウォードではなく、パーダを覆う。


「畜生出せ!!!!」


 パーダは自身の炎をアイアンシールドで軽減し受けた。

 自分の耐性スキルもあるのでピンピンしている。


「我が力よ。

対象の重力を奪い浮かせろ

重力魔法 グラビティリバース」


 ウォードが魔法を唱えると土結界改めて土の玉が空に浮かぶ。


「そらよ」


 ウォードはその玉を押すと、玉は闘技場から出る。

 中のパーダは数回転する。


「糞!どうなってる!?出せ!!!!」


「今出してやるよ…ランドスフィア解除」


ボロボロ


 土の玉は崩れて、パーダは地面に落ちる。


「糞!!!え…?」


 パーダは自身が置かれた状況を理解する。


「そこまで!!勝者「楽土」ウォード!!!」


 王都チーム、先鋒戦勝利である。

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異世界再生神話〜神は万能ではない〜 犬星梟太 @fatowl

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