第6話:プレゼントと思い出

(ホノカ視点)

 あれから1年と数ヶ月が経過した。


 そして何と今日は俺の誕生日で今年5歳になる。

 さらに母上がおめでただ。

 おめでたと言っても、妊娠から暫く経っているのでお腹は少し大きなってきている。


 この男爵領は金がない、そのため税収もない、それでも国には農作物や木を収めてる。

 うちの父上が戦争のない年は兵士と一緒になって農家や木こりの手伝いをするくらい金がない。


 そのためいろんなお祝いごとはまとめてやる。


 1歳のときは、豊作のお祭りと一緒に。

 2歳のときは、不作すぎて、祝ってもらえなかった。

 3歳のときは、父上の戦争での戦果と一緒に。

 4歳のときは、子宝に恵まれたから、新生児達と一緒に。


 あと例外だけど産まれたときはデカいお城に連れてってもらった。

 父上が上司みたいに人に泣かれながら肩を叩かれていた。何を言っていたかは言葉を覚えていなかったので覚えてない。


 そして今回の5歳は母上のおめでたと一緒にだ。

 前世は兄弟なんていなかったのでかなり嬉しい。

 まぁ、性別はまだわからないけど正直どっちでもいい。


 5歳の誕生日では何とプレゼントがあるらしい。

 今まで美味しい食べ物だけでプレゼントはなかった。今となっては美味しい食べ物だけでも嬉しいけど…


 今回のプレゼントは特別らしい!


 トライーガ家は5歳になると、虎の指輪を貰えるらしい。


 これは二つ嬉しいことがある。

 

 一つは普通にプレゼントを貰えのが嬉しいってこと、

もう一つは俺は装飾品を見につけても不思議じゃないって事だ!


 この指輪を改造してSTRとAGIを低下させる装備にできる。


 どれだけ訓練しても手加減を1/3の確率で失敗してしまう。


 特注木剣を壊す事、1000回以上。

 打ち込み台の鎧を消す事、100回以上。

 家具が爆ぜる事、3000回以上。


 錬金で修復したり、法術で戻したり、大変だった。


 そこで発覚したことなんだが、最初、法術が発動しなかった。


 スキルがあるのに発動できないのは変だと思い、変態教師に聞いたら、どうやらスキルがあっても、現象を理解し想像しないと発動しないんだとわかった。

 魔法に関しては一から勉強だった。


 ゲームを初めたころ以来やってなかったことだから、久しぶりに詠唱して懐かしさと同時に恥ずかしかった。


 俺に才能ないのか無詠唱まで半年掛かってしまった。

 しかし理由は単純だった。

 スキルを一つしかイメージしてなかったからだ。

 ゲームだと「無詠唱」のスキルはパッシブスキルだったけどこの世界では違かったようだ。

 しっかりと「無詠唱」とイメージしてないと法術だけでなく魔法を発動しなかった。

 これがわかった事で今ではゲーム同様に自在になった。


 そのおかげで今日貰う指輪の改造で苦労しなく済む。

 

 話を戻すが今日は母の懐妊祝い兼俺の誕生日だ。

 

 そのために今日は朝からお祝いに参加する領内の村長や偉い人達に挨拶して、

昼には父と一緒にその偉いと人とお食事会をして、

夜は身内の兵士やメイド達とで宴会をすることになってるらしい。


 そして朝の挨拶する前に指輪を貰うことになっている。


 今、おれは父上の書斎に父上と母上と一緒にいる。


「ホノカよ。5歳になるお前に贈り物だ。トライーガ家の伝統によりお前に虎の紋章が刻まれた指輪を贈る」


「ありがとうございます。父上」


「そうだ。渡す前に忠告だ!

ホノカよ、成人するまでは首にかけておきなさい」


「はい。父上」


「失くすんじゃないぞ」


「はい!」


 おい、変なフラグ立てないでくれ。


「もう。失くしたのは貴方でしょ?」


 え?そうなの?


「お、おい、グレンダ。それは言わない約束だろ?!」


「うふふ。いいじゃないそろそろ、私達の馴れ初めを」


 馴れ初め?指輪を無くして恋愛が始まるって少女漫画かよ!

 羨ま妬まししい。


「ま、まぁ、そろそろ婚約者を決めてもおかしくない年頃だし、ホノカは優秀だからな。私たちの馴れ初めくらいは教えてやってもいいか…」


「是非!聞きたいです!父上と母上の馴れ初めを!」


「そ、そうか」


 この世界での恋愛話しかもイケメンと美女の実話だ。気になるに決まってる。


「じゃあ私が教えてあげるね!」


「いやここはわた…」


「お父様と会ったのは…」


「はぁ」


「私がまだぼうけ…フラフラしてた頃の話なんだけど武闘会が開かれてたの。」


 ペンドラゴンに武闘会。

 この世界のペンドラゴンは軍事に力を入れているんだな。

 俺の知っているペンドラゴンは商業が盛んで色んな文化が行き交っていたのに…

 ここのペンドラゴン種族も少ないらしい。

 人族が多く、獣人族やエルフ族、ホビット族、あとゲームに居なかったハーフエルフって種族の5種族しかいないらしい。

 あとは超少数だけど人魔族、またゲームにはいない種族「四腕族」がいるらしい。


 おっと、ボーっとしてしまった。

 母上の話を聞かないと!


「そしてね!準決勝の直前で初めて会ったの!」


 準決勝ってやっぱ父上と母上は昔かた強かったんだな。


「でもお父様のことはある程度知ってたの。お父様は男爵家だったけど美男子で強くて、出世間違いなしって言われててモテモテだったのよ!、今もモテてるみたいだけど」


ビク


 どうやら本当にモテてるみたいだ。

 額に汗が滲み出てる。羨ましい…


「まぁ、最初はそんなお父様のこと好きじゃなかった……っていうより興味がなかったわ。顔もすんごい怖かったし、剣士相手に負けたことなんて無かったし、とにかく興味が無かったの。でもね…」


 母上はそっと父上の手を握った。


「お父様がね、凄い困った顔で走って私にぶつかってきたの。それなのに謝らずに逃げて行こうとしたのよ?私は怒って止めたの」



 青年が辺りを見回しながら何かを探し走り回っている。


ドン


 少年は少女に気付かずにぶつかってしまう。


 しかし青年は謝らず走り去ろうする。

 

 少女は勿論それを許さない。


『ちょっと待ちさない!』


『すまない。今ちょっと急いでるんだ!』


 少年は一瞬振り返るが目も合わせずに謝り、その場を去ろうする。


 少女はそれに怒り、走って追いかけて少年の腕を掴む。


『はぁ?!人にぶつかっといて謝りもしないなんて、流石は炎の貴公子と言われているトライーガ卿、御身分が違いますね!』


 少年は自身の恥ずかしい呼び名を呼ばれて顔を真っ赤にして怒る。


『な?!君!あまりにも失礼じゃないか!』


『どうせ大した用事でもないんでしょ?女の子の約束とか…』


『そんなじゃない!指輪を失くしてし…はっ!』


 少年は口張ってしまい、自身の口を押さえる。


 少女はそれを聞き逃さなかった。

 少女は意地の悪い顔して、少年を揶揄い始める。


『へー思い人に渡す指輪かなにか?』


 しかし少年の顔は赤くなるどころか青白くなり、怯え始める。


『違う!私の指輪だ!トライーガ家は虎の指輪を代々持つ慣わしがあるんだ!』


『ふーんそれを失くしたんだ』ニヤニヤ


『そ、そうだ。もし持ってないことを気付かれた…オヤジに斬り殺される…』


(『へー。剣聖に免許皆伝を認められた、キザなモテ男だと思っていたのに、こんな顔するんだ。可愛いとこあるじゃない』)


 少女は噂と違う青年に好印象を持ち、助けたくなった。


『いいわよ。手伝ってあげる』


『え?いいのかい?ていうか君は次の対戦相手のBランク冒険者『斧姫』じゃないか?』


 少年は漸く少女が何者か気づけた。


『今気づいたの?周り見えてなさすぎ、余計手伝うわよ。そんなじゃ本気出せないでしょ?』


 少女の言葉に少年は頭を下げて感謝する。


『すまない。助かる』


『名乗るのがまだだったわね。私はグレンダ』


『あぁそうだな。私はクーガ・トライーガだ』


(ホノカ視点)


「2人は握手して見つめ合い、その後無事指輪を見つけて。準決勝を戦ったのでした!」


 母上は楽しそうに思い出を締め括る。


「おー。それで勝負はどうなったんですか?!」


「それはもちろん…」


「母さんの勝ちだったよ。」


 父上は母上の言葉を遮る形で話した。

 なんでだろ?


「流石母上!僕も母上みたいに強くなりたいです。」


「ほらこれがお前の指輪だ。私のように失くしちゃ駄目だぞ?」


 父上は俺の髪色と一緒のオレンジと黒の二色が右と左にそれぞれに色づけられた虎の指輪とそれを首にかけるチェーンを俺の首にかけてくれた。


「はい!父上」


「ほら。皆んなに自慢して来なさい」


 お、改造チャンス。


「はい!ではまた武闘会の話を聞かせてくだいね!」


 是非将来出てみたいからな!


「あぁ、また今度な」


バタン


「もう貴方たら嘘なんかついちゃって」


「秘密をバラしたお返しだ」


「だって…私と貴方の出会った思い出じゃない。

思い出したら悔しくなってきたわ!貴方と戦うまで剣士に負けたことなんてなかったのに、」


「私も剣士こそが最強だと思ってたのを覆されたよ」


「「ふふ」」


「あの子にもこんな出会いをして欲しいな」


「ええ。あの子ならきっと大丈夫よ」




 明日はこの指輪を改造して迷宮に挑むぞ!


 手加減をマスターしてみせる!

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