第5話:剣(手加減)の修行
(ホノカ視点)
憂鬱だな…
「ホノカよ、剣はこうして握るんだぞ」
「はい、おとうさま」
剣嫌いじゃないけど…刀か槍の方が好きだし…
こんなに剣を推すってことは父は剣士系の職業構成なのか?
見てみるか。
“鑑定”
…
氏名クーガ・トライーガ
所属 ペンドラゴン王国の貴族
種族 人族
Lv.90
第一職業 炎剣師
第二職業 騎士
第三職業 なし
称号 戦火
…
ん?第三職業がない…バグか?
あと炎剣師ってなんだ?魔剣師じゃなく?
でもゲームじゃないもんな…
後で変態教師に聞いてみるか。
兵士A「完璧だな」
兵士B「子供なら剣に身体を持ってかれてもおかしくないのに」
兵士C「かと言って力任せに振っていないのが流石トライーガだな」
兵士達に誉められてしまった。
「ミソクリ」でも一時期使ってたから下手ではない。
こんなわけで父に剣の修行を受けている。
刃が木で柄が鉛で重いらしい…
俺にとっては葉っぱを乗せている感覚だ。軽々と振れる。
「ホノカは母さんに似て力持ちだな!」
にこ
調子乗って振りすぎたか?
何て言えばいいのか分からず笑って誤魔化してしまう…正直気まずい…
母に似たんじゃなくてゲームの力だなんて…
「母さんは幼い頃、剣術の練習でおぉおおきな丸太を使っていたんだぞ」
父は俺のパワーが母似なのが嬉しかったのか、母の自慢を話始めた。
幼い頃ってこの世界では取り敢えず剣の稽古をするのか?スキル構成とかどうすんだ?
「「「おー」」」
兵士D「流石はあの斧姫様だな」
兵士E「ワイバーンと戦い、牙を切り裂き撃退させたのはそのパワーか」
兵士F「元Bランク冒険者は違うな」
兵士達が母の話で盛り上がっている。
「斧姫」ってなんだ?父にも「戦火」って称号があったけどゲームには無かった筈だ。
「グレンダは冒険者時代にな、斧一本で屈強なモンスターを斬り伏せ、自分に言い寄ってきたゴロツキ冒険者をコテンパンに倒してだな…」
お、母上の事を褒められたからか、饒舌になってきたな。
でも数人は気まずそうな顔してるな…
なんでだろ?
「あら、貴方そんな昔の話やめてください」
母の冷たい声が聞こえる。
「グレンダ、な、何故此処に?」
ブリキ人形にようにカクカクと動かして母の声の方に首を向ける父。
「クーガがホノカを怪我させないか見にきたのよ?」
あ、まずい父を名前で呼んでる。これはガチギレだ。
今のうちに母の職業も見とくか。
“鑑定”
…
氏名 グレンダ・トライーガ
所属 ペンドラゴン王国の貴族
種族 人族
Lv.70
第一職業 斧術師
第二職業 回復魔道士
第三職業 なし
称号 斧姫
…
母にも第三職業がないな。
「来てください」
「ちょっと待ってくれ、お前の話をホノカに…」
「クーガ」
「は、はい」
どうやら母は俺に昔の話を聞かせるのを嫌らしい。
でも気になってしまう。特に冒険者ってのが気になる。ゲームのときにはなかった職業だ。
この場合は兵士に聞くか。えっと口の軽そうな…
「エレン」
「何ですか?坊ちゃん」
彼はわざわざいつも俺の目線に合わせてくれる。
あ、“鑑定”
…
氏名 エレン
所属 トライーガ家の私兵
種族 人族
Lv.19
第一職業 剣使い
第二職業 なし
第三職業 なし
称号 なし
…
エレンは第ニ職業までないな…
何でだろう?
彼はエレン。15歳で兵士になってトライーガ家に使えてくれてるらしい。俺と同じくらいの弟がいて、俺にあまく色んなことを教えてくれる。
「冒険者ってなんですか?」
「冒険者ですか?冒険者ってのはですね。冒険者ギルドに加入していて、基本はパーティを組んで、モンスター討伐、調査、要人護衛、ダンジョン踏破、未開地の調査。とにかくいろんなことを仕事にしてる。流離のお仕事人です。」
おーなんか聞いたことがある気がするな。
「すごいですね!じゃあBランクってなんですか?」
「冒険者には個人にランクがありましてね。下からF、E、D、C、B、A、S、Xになっていましてね、そのランクと同じレートのモンスターをソロで狩れるくらい強いと成れるんですよ!」
「つまりはおかあさまはBレートのモンスターをソロで倒せるんですね!」
「正解です。坊ちゃん!
因みにS級の殆どが国に使えているほど凄い人達なんですよ。
X級はこの光の大陸には2人しかいないんですよ!?」
「エレンそのくらいにしてとけ」
「すいません。おやっさん」
「坊ちゃん。奥様に冒険者の話しちゃいけやせんぜ!旦那様みたいに怒られちゃいやすから」
「はい。わかりました」
“鑑定”
…
氏名 ドノン
所属 トライーガ家の私兵
種族 人族
Lv.75
第一職業 槍術師
第二職業 なし
第三職業 なし
称号 なし
…
このおやっさんことドノンは父上の私兵で兵士長っていう役職持ちらしい。
父上の幼馴染で昔から付き合いで、父上の相談相手も担ってるみたいだ。
おやっさんってあだ名は顔が老けているからだ。とてもじゃないが、父上と同い年には見えない。
そしてドノンも第二、第三がない…
「お、帰ってきた」
(ホノカと私兵一同)
「「「「えっ」」」」
父の顔がパンパンに腫れている。父だよね?
「ほにょかよ、きゅうのけんのれんしゅうはおわりゅだ」
多分だけど「ホノカよ、今日の剣の練習は終わりだ」でいいんだよな?
「は、はい」
「みにゃんもきゅうはおわりゅでいい」
「「「は、はい…」」」
剣ちょっと振っただけで何もしてねーーー。
父はあんなことになってしまったが自主練はしよう。
木剣をまず「鑑定」と…
…
特注木剣
レア度
攻撃力10
耐久力50
破壊力10
重さ50
効果:無し
…
特注木剣って…お金がないのに…
手が掛かる息子で申し訳ない…
気を取り直して!
鉄剣に比べたら耐久力と重さが高いな。
ブン
片手振ったけどやっぱり軽いな。
問題はこれで物に打撃を与えつつ、この剣を壊さないようにすることだ。
剣技は使わない方がいいな。
まぁあ、壊れてもスキル“錬金”で元通りにできる。
コソコソ
ん?うわ!めっちゃ見てる。母とメイドがコソコソ隠れながら俺の様子を伺っている。
覗き見すんな!
こどもの演技しないといけないじゃんか!
人に見られながらやるのも嫌だし!
どうしよ…はぁ…
しょうがない手加減の練習にも成るし、打ち込み人形で遊ぶか。
すんごい昔から使っているであろう、子供用の打ち込み人形。
鎧は片方の肩当が壊れているけど真新しい、でも土台の木はボロボロだ。
きっと父もこれでやっていたんだろうな。
「ふん」
ゴン
寸止めして剣圧だけで凄い音がするな。
まぁ、これくらいなら何とかなるか?
とりあえず隠れている母が満足するまで暫く打ち込んで手加減の練習でもするか。
「ふん、ふん、とお、てい」
肩!肩!腹!横っ腹!
ゴス、ゴス、ズド、スッパン!
あ!打ち込み人形の鎧に切り傷が!やってしまった!
ドドドド
まずい母が猛ダッシュでこっちに来てる。
「ホノカ!」
母が俺の肩を掴む。
まずい!
「ご、ごめんなさい!」
次に母は俺を持ち上げてグルグルと回り始める。
なんで?
「すっっっごいわよ!まだ3歳なのに!私だって6歳のときだったのに!」
何?!6歳からその馬鹿力なのか?!
というか…
「おこってないんですか?」
「何で怒るの?素晴らしいことよ!」
ふーよかっ…
「お父様に報告しに行くわよ!」
母は急にもの凄いスピードで走り出した。
父の書斎の扉を勢いよく開けると父とヨハンがいた。
「貴方!」
「ひっ」
ありゃーさっき程の母のお叱りがトラウマになっちゃてる…
「どどどどうしたんだい?グ、グレンダ…」
「ホノカがね!木剣で打ち込み台の鎧に斬り傷を入れたのよ!」
「何?!!!本当なのか?!」
「本当よ!ね!ホノカ!」
「は、はい」
母上よ、この担ぎ方で話を進めないでくれ、俺はバックじゃないんだ。
「すごいじゃないか!」
父は立ち上がって喜んでる…
父よ、頼む。喜ぶ前に母のこの持ち方をツッコんでくれ。
「明日からはちゃんと訓練を開始しますよ」
貴女の乱入で訓練が終わったんだけどね。
「よろしいでしょうか?奥様」
「どうしたの?ヨハン」
「そろそろホノカ様を降ろして差し上げてわ」
ナイスだ!ヨハン!
「あらそうね。私ったら興奮してつい、ごめんなさい」
やっと下ろしてもらった。
「いいえ、たのしかったですよ。おかあさま」
本当に楽しかった。でも恥ずかしいが勝つ。
「あらそう?じゃあ今度またやってあげますよ」
「グレンダ、余り無茶しないでくれ!こっちの心臓がもたん…っていない」
こうして母に屋敷だけでなく、馬に乗せらて領内の村に自慢しに行かせらてしまったのだった。
親馬鹿ってレベルじゃないよ…
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