第9話:就の儀
(ホノカ視点)
あれから更に2年が経過した。
手加減は…まぁ…置いとくとして…
この世界の常識もはしっかりと勉強した。
これも変態…いやもうこう思うのは止めておこう…
この2年、勉強以外のこともお世話になったし、
俺と母上を題材にした本が母上に見つかって、マルタは母上に凄いお叱りを受けて、本はマルタの実家が必死に回収した。
もうマルタに文句はない。
そういえば母上がマルタのお尻を手で叩いたのは、凄い光景だったな…
マルタは最初喜んでいたけど…あまりにも痛すぎて泣きながら謝ってたもんな…
痛すぎて暫く立ても座りも出来ない生活を送っていたっけ…
「大丈夫か?酔っていないか?」
「はい、大丈夫です!」
今、俺と父上は馬車に乗ってる。
今の乗っている馬車は貴族用のレンタル馬車で、お金がないのでヨハンが御者やってくれている。
そもそも何故馬車に乗っているかというと今年「就の儀」があり、その「就の儀」を行うた神殿に向かっている。
改めて「就の儀」とは、7歳になった、なる子供が行う職業を選択する儀式だ。
しかし、、自由に選択できるわけでもない。
その者に合ったいくつかの選択肢が出現し、平民は一つだけ、貴族は二つまで、王族は三つ選ぶらしい。
更に職業選択は才能から自由に選んではいけないらしい。
平民は完全自由だが、貴族、王族は戦闘職に一つは付かなけばならない決まりがある。
生産職は一部の代々続いてる一族のみが二つ以上選べるようになっている。
生産職しかない場合は生産職の一族の養子もしくは使用人として働くことになる。
これって、あまりにも不公平過ぎる。
貴族もだけど王族が有利過ぎる。
なんで有利かというと、「ミソクリ」では職業には「適正武器」や「職業スキル」がある。
「適正武器」とは、各職業にあるダメージ強化補正がかかる武器のことだ。
「剣使い」には「剣」、
「槍使い」には「槍」と決まっている。
勿論、「騎士見習い」や「狩人」などの複数の「適正武器」がある職業もある。
「剣術」や「槍術」など武器のスキルは訓練することでも、「剣使い」に就くだけでも習得することが出来る。
そして全て職業で武器の装備自体は自由に出来る…しかし「適正武器」だと強化補正され、更に強化補正は重複して威力が上がっていく。
そのために三つの職業に就くことを許される王族は有利過ぎるのだ。
どれだけ頑張ったとしても王族の最高威力に到達しないというわけだ。
「ミソクリ」だと職業は初期職なら選びたい放題だった。
課金すれば勇者にもなれた。
しかしこの世界だと初級職以外も才能さえあれば最初から上位の職業に成れるみたいだ。
更に職業に関わってくる「得意属性」があり、それが職業の才能に影響して、「炎剣使い」や「炎魔法使い」が存在しているみたいだ。
「『就の儀』が終わったら、どうする?」
「王都を観光してみたいです!」
「そうか、何処か行きたいところあるのか?」
「いえ、初めて来た王都なので、色んなところ見てみたいな」
「ふふ、ホノカは女の子みたいな事を言うな」
「え?」
「私が幼い時は「就の儀」の後はスキルを習得して使いたくて仕方なったからな…兄貴達が「就の儀」の後にスキルを見せとせがんだもんだ」
あー、な、る、ほ、ど…だってね…
「いや、俺達の場合オヤジもおふくろも戦闘狂だったからか?」ボソ
聞こえちゃったけど…え?何?うちの家系は鬼人族か何か?
まぁ、いいけど…
スキルは散々使ってきたし、最近も使ってるから特に使いたい欲とか見たい欲とかは無いんだよな…
スキルには職業に就くことで習得出来る「職業スキル」、
訓練などで条件を満たすと習得できる「習得スキル」、
その種族だけが習得出来る「種族限定スキル」がある。
「習得スキル」は「身体強化」や「硬化」、「縮地」、「属性耐性」スキルなどがある。
「職業スキル」は「錬金」や「鍛治」、「建築」などがある。
「種族限定スキル」は「龍化」や「魔装」、「鬼化」などがある。
あとスキルにはコモン、エクストラ、スペシャルと格がある。
ゴトン
お、止まった。
どうやら王都に着いて検問を受けているみたいだ。
衛兵が父上の顔を見た瞬間頭を下げて、中を確認せずに通してくれた。
え?いいのそれで?
「着いたぞ、ホノカ。ここが王都だ。」
「大都市ですね!僕ワクワクします!」
懐かしいな〜
「私も小さいときから何度か来ているがワクワクしてしまうよ」
父上は優しい笑顔をむけてくれる。
そんな父上は俺の所為で白髪になり初めてしまった。
でも父上も王都が楽しそうだ。
「終わったら観光がてら魔導具店に連れてってやろう。良いものが有ったら買ってやるぞ」
「いいんですが?!でもその…お金は大丈夫なんですか?」
「はっははは!安心しろ!貴族御用達ではなく、冒険者の方だ。実用的で値段も安い。」
「てことは金貨20枚もしないんですね!」
「マルタのあの杖のことは言ってるんだな。あれでもかなり安い方なんだぞ?あの杖は訓練用だからな。戦闘用は金貨180枚はするからな」
180?!うちの領内の農作物とかで払ってる税収の10倍?!
そんなあんのか?!
「ふふ、うちには縁遠いし、途方ない額だな。戦争で活躍しても分隊長の私の金貨20枚だからな」
俺のビックリした顔に父上が楽しそうに話す。
「旦那様着きました」
「ああ、助かるヨハン。ホノカよここからは歩きだ」
「はい」
まだ神殿には着いていないが貴族、王族の慣例で王族が神殿に直に到着し、後は上から近い順に到着する。公爵家の場合はデュークロード、男爵家の場合がバロンロードとなっている。
そういう道があるためか、街並みも少しだけ「ミソクリ」のペンドラゴンとは違う。
と周りを見渡している間に着いた。
「ここは変わらないな」
そうですね、父上。
「私達は待合室で待っているから行ってきなさい」
「はい」
案内の神官に着いて行きながら、神殿をちょっと見学する。
「ミソクリ」にも神殿はあったが少し違うな…
神の像が沢山ある。
「法術神」、「光神」、「生産神」…
「生産神」が女!?、俺の知っている「生産神」はずんぐりむっくりで筋肉バキバキのおっさんだ。
この世界の「生産神」は綺麗な癖毛に低身長で筋肉バッキバキだ。腹が出ていない分筋肉が目立つな。かっこいい。
この世界は色々と違うことが多いな…
続きに「鍛治神」、「神狼 フェンリル」、「獣神」…と他にもまだ神の像がある。
見学しているとあっという間に子供達が待っている部屋に着いた。
「此処で暫く待っていてください」
「かしこまりました」
俺は中間当たりの長椅子に待つよう言われた。
一緒に座っているのは俺と同じ下級貴族の子息令嬢らしい。
これは父上に聞いていた。
みんな大人しく待って…いや寝てる子が多いな…
暫く待ち、子供達が全員揃ったのか偉い神官っぽい人が入ってきた。
それと同時に寝ていた子供達も起きた。
「よく参った子供達よ。“就の儀”は君達の人生を決めるものだが、気を負いすぎることはない…」
この神官の人。校長先生パターンだ。決まったマニュアル通り話していてうおうで話がクソ長い。
おいおい、もう寝てる子供がいるぞ。
(1時間後)
あー長い。1時間はずっと話しるぞ。
しかも楽しそうに話している。
平民の子供はもちろん、上級貴族の子供すら寝てしまったぞ!
起きてるのは数人…
「君達に神の加護が有りますように…
それでは!いよいよ“就の儀”に開始する」
お、今の大声で寝てた子供が全員起きた。
この神官中々のやり手だな。
「呼ばれた者は、部屋に入れなさい。その者から「就の儀」を行う。それではまず…」
次々と子ども達が呼ばれ出たり入ったりしている。
それにしても反応は様々だ。
喜ぶ子もいれば悲しむ子もいる…
それはそうだもんな…これで人生が決まってしまうんだから。
子供によっては家族と別れないといけない子もいるだろうから…
「次、ホノカ・トライーガ前へ」
ざわざわ
(侯爵令嬢「あれ?お父様はトライーガ家はみんな虎のように怖い顔しているって言ってたけど可愛い顔」)
(伯爵子息「あれがあのトライーガ家の跡取りか」)
(男爵令嬢「男爵家じゃなかったら、婚約を申し込んでいたけど…でもあの顔は捨て堅いは」)
「スキル“職業鑑定”」
このスキルは聞いたことのないスキルだ。
職業が限定されるこの世界特有のスキルか?
忘れずに。
“隠蔽コード”
…
ホノカ・トライーガ
魔剣使い
剣使い
斧使い
格闘使い
…
法典のような本から文字が浮かびあがる。
内容は来る前に考えて仕込みは完了してある。
この世界の職業は魔法使いではなく炎魔法使いなど「得意属性」ごとになってしまう。
しかし、俺の「隠蔽コード」は鑑定結果を完璧に隠せるが、元々そのワードがないと無理だったのが分かった。
おれの「隠蔽コード」には「ミソクリ」のデータしかない。
この世界だけの言葉は無理だったようだ。
この神官が言った通り、この「就の儀」は貴族にとって超重要で弱いのはもちろん、普通でもナメられてしまう。
一様プライバシーの保護は存在するが守られないことの方が多いってマルタが言っていた。
なので俺はいい手を考えた。
ワードの問題をこれで打ち消すことにした。
魔剣使いは50年に1人くらいはいて現剣聖も元は魔剣使いらしい。
その事を色々と考慮した結果となっている。
ちなみに『ミソクリ』での魔剣使いだがあまり強くない。
所謂、不遇職ってやつだ。
初期のプレイヤー全員が憧れ目指した職業だが…
いざ成ってみると新しく覚えれるスキルは無い、
強化補正の値もかなり低い、
進化先の職は魔剣王とかではなく「剣王」で「剣使い」と「魔法使い」の両方を強化してきたのに結局「剣王」にしか成れないと、存在価値を否定されて続けた職業だ。
でも「剣使い」や「騎士」などの剣を扱う職業自体は優秀だ。打撃、斬撃、貫通を使用でき、同時に複数の攻撃タイプを使用できる。
複数攻撃タイプがある分、ダメージ値は低い設定だけど、弱点がわからない初めてのモンスターと戦うには重宝した。
「なんと!魔剣使いか!素晴らしい職に恵まれましたな」
「はい、これも神のご加護があってこそです」
褒められたら、こう言わないといけないらしい。
「うむ、それでは何を選ぶかね?」
「第一職業を魔剣使い、第二職業を格闘使いでお願いします。」
「あい分かった。スキル“職業”」
“隠蔽コード”
…
ホノカ・トライーガ
第一職業 魔剣使い
第二職業 格闘使い
…
あとは全員の儀式が終わるまで待つだけだ。
最後の子が終わり、また神官の話が始まった。
「これにて「就の儀」は終わります。
恵まれた職業に成れた子達よ、おめでとう…
しかし成れた職業で慢心してはいけません。人を蔑んではいけません。皆役割があり、その役割を果たすためにいます。
皆さんに神の加護が有り続けることを願います」
神官は会釈をして退出した。
これで終わりらしい。
また長い話をされると思って身構えてしまった。
儀式が無事に終わったので外で待ち合わせしていた父上の元に向かった。下位貴族は外で待ち合わせするのが暗黙のルールなのだ。
どこだ?…キョロキョロ。
いた!
「父上!」
「ホノカ!こっちだ!」
「父上!無事に儀式を終えました。」
「そうか。どんな職業にしたんだ?」
「はい!ってあれ?ヨハンはどうしたんですか?」
「あぁ、薬草のストックを買い足しに行ってもらっているんだ。馬車の乗り場で合流することになってるぞ」
「そうでしたか!職業の話でしたね。第一職業は魔剣使いに第二職業は格闘使いにしました。」
「何?!そ、そうかやはり魔剣使いになったか」
どうやら予想はしていたようだ。
「僕、父上や皆のために頑張っていきます!」
「そうか。グス…頼りにしてるぞ。ホノカ」
父上泣かないでくれ、あ、やばい涙が!泣いちゃ駄目だ!ここは元気な一言返事をしなければ!
「…はい!」
「観光に行くか」
コク
父上の顔を見たら涙を我慢するために声がでなかった。
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