第12話:モンスター討伐

(ホノカ視点)


 今日は行事の一環で下位貴族の子息同士で雑魚モンスターを倒してレベ上げ、スキル上げの両方が目的としたモンスター狩りを行う。

 下位貴族の男児は生産職でもやらされるみたいだ。

 これにはもう一つ目的があるらしい。

 それは貴族間の横の関係をより強固にしたり、新しく結ぶためにやるようだ。


 今日一緒にやるのは、

 男爵家で弓の名手を輩出してるオーアロー家。

 また男爵家でうちのように風剣士を必ず輩出してきたリューズ家。

 子爵で父上と同じ分隊長で同僚のリバーシュ家の四貴族でモンスター討伐をやっていく。


 今日は主に子供達だけで狩り行うみたいだ。

 このようなパーティを組んでモンスターを狩るときもあれば、子供一人で競争としてモンスター狩ったり、子息が兵士を率いて戦争を想定して訓練をさせる。


 俺は父上と一緒に天幕に居て、貴族の人達と挨拶している。


「久しいなリバーシュ卿」


「やぁ、トライーガ卿、貴殿の顔を戦争でないときに見ると変な感覚がするよ」


 今父上と話してるのがちょっと膨よかで明るい茶髪の黒眼の人がゴルロージ・リバーシュ子爵だ。


指名 ゴルロージ・リバーシュ

所属 ペンドラゴン王国の貴族

種族 人族

Lv.65

第一職業 軍師

第二職業 薬師

称号 なし


 この人ドノンより弱いな。

 軍師は一様、「侍」の派生先の一つだから、近接戦闘も出来ると思うけど、この世界だと違うのか?


「確かに。彼の英雄、戦火殿を戦場以外で目にするのは貴重というか奇妙とも言えますな」


 この若いのにお堅そうで緑髪、碧眼の人がサルジャ・リューズ男爵。父上のことをライバル視しているらしい。


指名 サルジャ・リューズ

所属 ペンドラゴン王国の貴族

種族 人族

Lv.75

第一職業 風剣師

第二職業 騎士

称号 なし


 父上の風バージョンみたいだな。


「まぁまぁ英雄殿の話はそれくらいにして、今日の主役は子供達なんですから」


 この黒っぽい茶髪の灰眼の人が鷹鼻のイケメンがホルク・オーアロー男爵だ。


 …

指名 ホルク・オーアロー

所属 ペンドラゴン王国の貴族

種族 人族

Lv.75

第一職業 弓術師

第二職業 剣士

称号 なし

 

 魔法職がない、魔法は使え無い感じかな?


 これで貴族の名前と顔の一致させて覚えれたな。「鑑定」あるから大丈夫だけど、地位まで見れないからそこはちゃんと覚えないとな。


 そして子供達は俺と同じく、父親の隣にいる。

 リバーシュ家だけは父親の後ろに隠れているけど…


「それもそうですな。ところでトライーガ卿、御子息は?」


「ここにいますよ。ホノカ、皆さんに挨拶を」


「はい。どうも初めてまして、ホノカ・トライーガと申します。今日はよろしくお願いします」


 ん?なんでそんなビックリした顔で見てくんの?

 父上から今日は無礼講だから貴族の堅い挨拶はなしで最低限でいいって聞いてきたんだけど駄目だった?


(ゴルロージ「えーー?!女の子かと終わったら男の子?!」)


(サルジャ「は?!あのトライーガから天使みたいな子が!?髪色はそっくりだが似てなさすぎだろ!?」)


(ホルク「下の子供だと思ったら上の子なの?!ていうかグレンダ殿に似過ぎだろ!?たしか先代当主殿も御兄弟も強面だったはずなのどうやってこんな子が!?」)


「す、すみませんご子息がまだ幼いのに立派なご挨拶されていたので驚いてしまいました…」


 お!オーアロー男爵、褒めてくれてありがとうございます!

 いや待てよ?もしかして貴族特有の皮肉か?


「私もそう思います。この頃のうちの長子は人見知りで全然話せませんでしたよ」


「同意します」


 あら?これはちゃんと褒めてくれている?


「さぁお前も挨拶なさい」


 オーアロー家の子供が前に出てきた。

 髪色は親父さんと同じだけど、目は青眼だな。


「は、はい!オーアロー家の長子、スパルであります!何卒よ、よろしくお願い申し上げます!」


 おーこの子めっちゃ緊張してる。大丈夫か?


「ならば次はうちが、シャーナ挨拶を」


「はい。父様、私はシャーナ・リューズです。よろしくお願いします」


 髪色と目も親父さんと同じだ。

 女の子が参加するのは珍しいはずだ。

 リューズ家には恐らくまだ男児が生まれていないのだろう。それか赤ちゃんか。


「最後はうちだね、ほら」


 リバーシュ男爵に背中を押されて子供が前に出てきた。


「は、はい。あのその…ぼ、僕はヴィナタ・リバーシュです…」


 この子は茶髪っていうよりかは、金髪ぽいな。


「はは、この子は人見知りでね、家では騒がしいんだけど人前だといつもこうなんでよ」


 ははーん内弁慶ってやつだな。


「では後は子供達で話させますか。皆んな予め言っとおくが周囲10m以内に兵士が各家ごとにそれぞれ2名づついるが、緊急時のみしか助けない。なので気を引き締めて取り組むように」


「「「「はい」」」」


「ではまた会おう」


 リバーシュ卿が忠告して大人達が何処かに行ってしまった。


「…」



 え?なんで皆んなしゃべんないの?


「あ、あの質問いいでしょうか?ホノカくん、いやさん」


「別にいいけど。ホノカでいいよ」


「そう言ってもらうと嬉しいです。じ自分も緊張強いなので、自分トライーガ卿のファンなんです。自分弓使いと炎魔法使いの職にしていまして将来炎弓士を目指してまして、ぜひ同じ属性の炎属性が得意な方に聞きたいっす」


 急にめっちゃ喋るじゃん。いやいいけどね。


「えーっと…」


「待って!貴方失礼じゃない?そういう技術は門外不出だったりするのよ?私達はまだ会ったのが初めてで信頼も何もないのに礼儀が足りないんじゃない?」


 うっわーこの子めっちゃ厳しいし怖いじゃん。


「め、面目ないです。ホノカごめん」


「別にいいよ、気にしてないから。そろそろ狩りの打ち合わせしない?」


「いい考えだわ。まず戦力確認をしましょう。ホノカ君。貴方もお父上と同じ炎剣を扱うってことでいい?」


 言ってもいいのかな?駄目だったとしても後で神法術で記憶を改竄すればいっか。


「いや僕は魔剣使いだよ」


「な、なんですって?!それって剣聖様の昔の職業じゃない!?」


「ホノカはすんごいだね!」


「そう言って貰えると素直に嬉しいよ。ありがとう。あともう一つは格闘使い、だから耐久力に自身があるからタンクをやろうかなって。」


「そうだね!ホノカなら前線を任せられるよ」


「悔しいけど私もそう思うわ。貴方のせいで微妙な感じがするけど私は風剣使いで水魔法使いよ。スパル君はさっき聞いたからいいとして次はヴィナタ君教えてくれるかしら?」


「…僕は狩人と薬使いです」


 皆んな父親と少し似た職業構成だな。

 血縁で職業がある程度決まってしまうのか?


「薬はもう何か作れる?」


「い、一様、下級回復薬と解毒薬と目潰しの粉を…」


 貴族の英才教育の賜物だな。6歳になって間もないのに、ちゃんと職業に合った能力を磨いている。

 

 あれ?でもこの子だけ「狩人」の「適正武器」である剣も弓も持っていないけど大丈夫かな?


「すごいっすね!まだ自分達に慣れてないみたいっすから、今はサポーターをお願いしたいっすね!」


「そのほうがいいわね」


 あれ?皆んな剣と弓の事は?

 一様聞いておくか。


「ねぇ、ヴィナタ君、いいかな?」


「なんでしょうか…?」


「剣と弓はどうしたの?」


「あのー、その…弓…持って来てないです…」


「え…」「はぁ?」「あちゃー」


「貴方いい加減しなさいよ!?狩りを甘くみたら死ぬのよ!?」


「まぁまぁ落ち着いて」


 スパル君落ち着かせようとしてるけど今は無理だよ。


「落ち着いてるわよ!うじうじするのはまだ許せたわ!でも狩りとはいえ命の奪い合いなのよ?!」


 ほらー。

 かなりお怒りだよ。

 心配して言ってあげてるんだろうけど、興奮しちゃってるな。

 ここはこれの本質を敢えて言ったほうがいいかな


「確かにそうだね。でもこの狩りの目的って横の繋がりを作る、強固にしていくのが目的だよね?」


「ええぇ…私もお父様にそう聞いてるわ…」


「じゃあこの事はさ、ヴィナタ君への貸しってことで僕たちが困ったときはヴィナタ君が助けてくれるってこといいんじゃないかな?ね。ヴィナタ君?」


「う…うん」


 無理矢理言わせちゃったなー、ごめんよ。

 

 空気を悪くしちゃった俺が代替案を出すか。


「ヴィナタ君、もう一つ質問していいかな?」


「な、なんでしょうか?」


「「投擲」は習得してる?」


「は、はい。習得…しています。」


「じゃあ問題ないね」


「ホノカ、なんでそんな質問を?」


「目潰しの粉を投げるのに有ったほうがいいし、こっちもそれに合った動きをする必要があるからね」


「なるほど勉強になるよ!」


「モンスターの指定はないけどどうする」


「スライムがいいんじゃないかしら。ゴブリンとかだと徒党を組まれたら厄介だし、私達はまだ連携のいろはができてないわ」


「ゴブリンを相手にしないのは賛成だけどスライムだと流石に手答えがなさすぎるんじゃないかな?」


 おー、流石貴族の子供。

 皆んな意見をはっきり言うな。ヴィナタ君以外…


「でも無理は禁物だし…」


 手頃に強いモンスターか…あ。


「ならバッドラビットはどう?」


「「バッドラビット?」って何?」


「知らない?紫色でけむくじゃらの兎」


「知らないわ」「知らないな」


「僕…本で読んだこと…ある…」


 お、ヴィンタ君は知ってるみたいだな。


「おーそうなんすか?教えて欲しいな」


「え、えでも…そのホノカさんが説明したほうが…」


「僕も本ほどの知識はないからぜひ教えて欲しいな。」


 ほら今なら名誉を挽回するチャンスだよ。


「そ、そう…ななら説明します。バッドラビットは発情期以外は群れで活動せず、大きさは熊と同じくらいで体毛が厚くて剣や打撃とかでは傷つけにくく、弓や槍が推奨されるモンスターで、強さ自体はゴブリン二体くらいだからこのパーティでも勝てるとお、思います」


 お、この子モンスターの話になったら饒舌になったな。

 モンスターが好きなのかな?

 でもこれでモンスターの本の知識は少しだけど知れた。


「説明ありがとうね。じゃあ作戦はお引き寄せて僕とシューナ嬢が陽動をするから投石ではなく弓で遠距離からスパルとヴィンタ君が攻撃するってのはどう?」


「いい作戦だね!僕は大賛成だよ」


「そうね。確かにいい作戦だわ。私も賛成。」


「でもどうするの?弓の名家とはいえ一人分の攻撃だと決定打にかけるし、剣や打撃が効かないなら石で敵意を向かせる無理よ?」


「それなら心配ないよ。僕が作るから」


「貴方鍛冶士じゃないでしょ?」


「木で簡易版を作るんだよ」


「そんなことできるの?」


「まぁ見ててよ」


 んーどの木がいいかな…

 あそこの木の枝でいいな。


「ふん」


 高くジャンプして…


「せい」


 斬る!


「ねぇ、あの高さをジャンプで行ったよ」


「ありえないわ、スキルも強化魔法も何も使わずに10mはあったわよ」


「自分、伸ぼるんだったらなんとかできるけどあんなの無理だよ」


「僕も」


「「え?」」


「あ、ごめん…な、何でもない」


 本当は割いた方がいいんだろうけど、無理矢理石で形を細く整える。

 弦はこの樹皮を剥がして紐状にしてさらにこれを編んでと、弓に弦を通す穴あけてと片方を弦を通し壊さないように慎重にしならせ、また穴に弦を通して結んでと。


「はい。完成!これを使って、持ち手の部分は持ちにくいだろうけど我慢してくれよな?あ、壊れたら大きな声で知らせてにげてくれ」


「わかった。あ…ありがとう、ございます」


「じゃあ行こうか!」


 俺とシューナ嬢で1時間ちょい探し続け漸く見つけた。


「いた。どっちがお引き寄せる?」


「私がやるわ」


「わかった、任せるよ」


「えぇ、じゃあ行ってくるわ」


「うん…そうだ。お引き寄せが終わったら数分は休んでててよ」


「なに?私を馬鹿にしてるの?ここからチェックポイントまでそう遠くはないわ。そのまま戦えるぐらい体力があるわ」


 あれ?怒らせちゃったな。面倒くさいな。


「あのさ、シューナ嬢、さっきヴィナタ君に狩りをナメるなとか命の奪い合いだって言っただろ?」


「そ、それが何?」


「今お前はそれぐらいできるって言ったけど本当にできるのか?モンスターも地形も完全に把握したわけでもないのになんでそんな不確定なことに命を預けないといけないの?」


「そ、それは…」


「シューナ嬢、君のプライドを守るために死ぬつもりはないし、誰も死なさい。だから休め」


「わかったわ…」



(スパル視点)

「あの二人大丈夫かな、

シューナ嬢、性格きついもんなー、

暇だけど大声で話したら駄目だし、

ヴィナタはあれだもんなー、

やっぱトライーガ卿かっこよかったな〜、

俺も将来はああなりたいな〜、

ホノカが羨ましいよー、

でもホノカを可愛い女の子かと思ったのにガッカリしたな…」


 父上には婚約のお願いしようと思ったのに…男って…


「ん?きた!」


(ヴィナタ視点)

 はー緊張して駄目だ。全然喋れない!

 ああああ、皆んな俺のことキモイと思ってんだろうな…

 俺好きでこんな性格じゃないんだよな…

 兄さんより喋れるけど兄さんの場合は喋らないことを決めてるようなもんだもな…

 でもホノカ優しいな。

 こんな俺でも優しく接してくれてもんな。

 女の子だったらパパに婚約をお願いしたかったなー。

 シューナ嬢は性格キツすぎ!いや弓とか短剣とか忘れた俺が悪いよ?

 でもそんなの皆んな見飽きてると思ったから薬の勉強頑張ったし、モンスターの知識も蓄えてきて、今日が楽しみで眠れなくて薬以外忘れてきたさ、でもあんな言い方なくね?…

 あれ?来てる?…まずい来てる!


(シャーナ視点)

「はぁ、はぁ、はぁ」


 こいつかなり速い。チャックポイントまでまだあるの?


 彼が言っていた通り私は狩りをナメていたみたいだ。


 私達リューズ家とトライーガ家はライバル関係で長年競ってきた。

 だから、トライーガ家の男児ってことで敵対視していた。

 彼は私の方がお姉さんなのに…

 私よりしっかりしていて、剣聖様の魔剣使いで、私や父の完全な上位互換。

 それなのに彼は奢らず誠実で逞しく、そして…可愛い…

私はどこか彼に嫉妬していた。

 完璧な彼に…


 これが終わったらあとで謝ろう。


 やっとチャックポイントが見えた!


(ホノカ視点)


 お、見えてきた。


 ちょっと言い過ぎちゃったかな?

 息切れしてるし、力ませちゃったな。


 大人げないなかった気もするけどああ言わないと休んでくれなかったよな。


 チェックポイントにつくな。

 じゃあ俺がヘイトをとるか。


「シューナ嬢!後は俺がやる」


「わかったわ!」


 体術のパンチと見せかけて投擲!

 投擲は固体だけじゃなく気体や液体も投げられる。もちろんレベルを上げないと無理だが、手加減ができない俺にとって、これが今できる最適解だ。


ドン


「ゴワァーーー!」


 よし上手くいったな。


「二人ともシューナ嬢はここに連れてくるので体力を消耗した!今休憩している!暫く俺らでやる!」


シュッ。

ダス。


 返事はないが攻撃したってことは理解してくれたみたいだな。


シュッ、シュッ。

ダス、スカ


「グウウ」


 こいつ俺が一人じゃないって判るや否や逃げようとしてやがる。


「“剣打”」

と見せかけて投擲!


「ゴアアア」


 逃す気がないってわかったのか戦う気になったな。


「ゴガーーー!」


 噛みつきを避けて投擲でカウンター!


シュッ!

グサ!


「グギャーーーーー」


 今のスパルか!良いタイミングだ!しかも眉の辺りだな!


「グッ」


 今のでキレてタックルしてきたな!

 それぐらい避けらるぞ。


「“剣爪”!」


 お、シューナ嬢が休憩から戻ってきたな。


「余計なお世話だと思うけど助けさせてもらったわ」


「いや助かったよ。ありがとう」


「ふん」


「じゃあトドメ…!?ヴィナタ!危ない!そこから降りろ!」


ドッカーン


 良かった…ビックリした勢いで滑って落ちたけど直撃はしなくよかった!

 今ので怪我をしていないか確かめないと!


「大丈夫か!」


「だ、大丈夫。さっきのはいったい…」


「!」


 “縮地”


 あっぶねー、当たる寸前で逃せた。

 今度はシューナにがっつり打ってきたぞ。


「あれはゴブリンか…」


 ゴブリンどもが割り込んで来やがった!てか兵士達は何してんだよ!

 割り込んで来ないないように見張っているはずだろ!

 “感知”のスキルを発動してなかったら危なかったぞ!

 しかしどうやら俺のお手製弓は落下で大破してしまったみたいだ。

 しょうがない俺の持っていた剣を渡す。


「これ使って!」


ヴィナタの足下に剣を投げる。


「ありがとう!でもホノカは?」


「大丈夫だ俺は格闘使い、素手でも戦える。みんな!俺がゴブリンを相手にする」


「無茶よ!雑渡見ただけでも30体はいるわ!しかも今の攻撃、メイジがいるのよ!」


「大丈夫。だからなるべく早くそいつを倒して加勢してしてくれ」


「…わかったわ」


 心配ありがとう。


(シューナ視点)

 ゴブリン達が乱入してくるなんてしかもあんな数、いくら魔剣使いで格闘使いのホノカ君だとしても無理よ!

 だから愚図愚図してられないわ!


「ヴィナタ!目潰しの粉をやつに投げて頂戴!」


「わかった!」


「スパル!降りてきて!私と魔法を同時に射って一撃で仕留めるわよ!」


シュッタ


「わかった!でもアローまでしか使えないよ!」


「アローで十分よ!」


「わかった!」


 二人で詠唱を開始する。


「「我が力よ!

炎・風の矢を形造り、

我が敵を射て!

炎・風魔法!ファイヤ・ウインドアロー!」」


 私達の魔法は合わさり、バッドラビットの胴体を貫いた。


「ゴワーーー!」


 まだ倒れないの?!、こちらに向かって突進してくる…二人とも防御系の魔法は使えない!避けないと!


「“剣打”!」


ゴキ


 一瞬迷ってるうちにヴィナタ君が木から飛び降りながら剣をバットラビットの首に叩き込む。


ドサ


 流石に今ので倒せたみたい。じゃあ次は!


「彼を助けるわ…よ?」


「「「へっ?」」」


 どうなってるの?ゴブリンの軍勢をもう半数以上を倒してる。素手だけじゃなくゴブリンの武器を奪って倒してる。


「すげぇ」


 彼がその一言に同意してしまう。

 安直な言葉だけどその安直な言葉が全てを物語ってる。


「ふぅ」


 彼は最後の一匹を仕留めた。


「そっちも終わったんだ。うげ丸焦げじゃん。エグいことするね…」


「いや君には負けるよ…」


「う、うん。大人顔負けていうか大人でも勝てるのは少ないと思うよ…」


 二人が彼の無自覚な一言を反論している間彼は慣れた手つきで討伐証明であるゴブリンの耳を切り取っていく。


「魔法使ったんだろ?あんまり意味ないと思うけど回復薬でも飲んで休んでいてよ」


「えぇ」「わかった…」


「僕は魔法使ってないから手伝うよ」


「そう?じゃあお願いするよ」


「シューナ嬢なんでホノカはあんなに強いと思う?」


「あのパワーじゃない?斧姫って謳われたBランク冒険者の子供だからあの理不尽な事ができると思う」


 私は自分で言っといてこれが違うってわかっていた。

 あれはパワーだけじゃない。

 魔剣使いも関係ない。

 彼の技術が為せる動き、洗練された動きだった。

 きっと彼は剣聖、剣豪あるいは剣王になるのだろうと私は確信した。


「終わったよ!帰ろうか!」


 そして私はそんな強い彼に恋をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る