第27話:ワダカマリ
(ホノカ視点)
妹のポーラが産まれ、母上が亡くなって3年が経ち俺は10歳、ユーガは7歳、ポーラは3歳になった。
あれから大分うちの様子は変わってしまった…
父上はモンスター狩りと戦争に明け暮れ、戦果をあげ続けている。
◇
(ペンドラゴン王国・黒の平原)
ペンドラゴン王国とイグラシオ王国が戦争をしていた。
その前線にクーガがいた。
「“剣砲・炎”」
クーガは炎を纏った剣技で敵軍の兵隊を薙ぎ払う。
その攻撃でクーガに気づいた敵兵が狼狽える。
「アイツは…「戦火」だ!」
自国での異名が敵軍の兵隊に知られるほどになっていた…
まだクーガに気付いていなかった徴兵された兵隊もこの名を聞いて敗走し始める。
徴兵されたもの達にとって、確実な死は戦う意味を見出せない。
今のクーガはそれほどの存在になっていた。
兵隊の混乱した様子をイグラシオの軍人であるアライグマの獣人がつまらそうに眺めていた。
…
氏名 アラインズ・ラーコ
所属 イグラシオ王国の貴族、イグラシオ軍23師団 師団長
種族 獣人族:アライグマ
Lv.139
第一職業 剣師
第二職業 騎士
…
アラインズは部下とクーガの前に向かう。
「貴様が「戦火」か聞きしに勝る闘い振りだな。おかげ平民や奴隷が逃げてしまったぞ」
「…」
敵の軍人が前に出て来てクーガに語りかけるが、クーガは何も語らない。
アラインズは部下から二対の大剣を受け取る。
「ふん、剣で語るタイプか?まぁいい貴様を討ち取りその名を貰うぞ!?」
アラインズは剣技“双剣”と更に強化スキルを使う。
「“獣化”!」
スキルを使用したアラインズは自慢のスピードで一瞬にして距離を詰め、クーガに斬りかかるが…
クーガはすぐに対応する。
「“奥義・徹甲斬”」
クーガの剣技はアラインズの剣と鎧を斬り裂き、一撃で勝利した。
クーガはこの二年で実力を伸ばしていた。
…
氏名クーガ・トライーガ
所属 ペンドラゴン王国の貴族
種族 人族
Lv.177
第一職業 炎剣師
第二職業 騎師
称号 戦火
…
師団長がやられたことにより、部下が慌て始める。
「師団長がやられた!!速やかに撤退せよ!!」
わーわー
逃げていなかったイグラシオの正規の兵隊達は敗走し始めた。
クーガはそれらに冷たい眼差しを向ける。
「投降するものは捉えて捕虜にしろ、抵抗するものは斬り伏せろ…」
「「「はっ!」」」
敗走する敵の軍団に追撃を加える。
◇
(ホノカ視点)
父上は母上のことを考えたくないのか、それとも母上の生写しのような妹ポーラに会いたくないのか、家にいるのは三日ぐらいしかない。
そんな戦いに明け暮れてる父上に私兵は着いてくれるわけがない…
どんどん人が入れ替えり、俺の知ってる兵士はドノン、エレンそして、新しく入ったトシヤという元冒険者だけだ。
彼は未確認のモンスターの狩り行ったときに参加してくれた一員だ。
今のトライーガは居心地が悪い…
コンコン
勉強中に扉をノックする音がする。
「入ってくれ」
「失礼します。ホノカ様、旦那様がもうすぐお帰りなられます」
このメイドも知らない…
「あぁ…わかった。ありがとう」
「ポーラは僕が連れていく」
「かしこまりました」
それでも父上のおかげで今は裕福な生活を送れている。
食べ物だけでなくメイドや執事も変わってしまったけど大分増えて、貴族らしい…
(ポーラの部屋)
コンコン
「はい」
中からメイドが返事をする。
「私だ、ホノカだ。父上が帰って来る。ポーラと一緒に出迎える」
「かしこまりました。ではすぐに準備をします」
暫くポーラが着替えるのを待つ。
「準備できました」
「おにぃしゃま!」
メイドの話が終わったすぐにポーラが飛び出してきた。
「やあ、ポーラ。一緒に父上をお迎えに行くよ」
「あい!」
(玄関)
ポーラと玄関で父上を待つ。
「「お帰りなさい。父上」おとうしゃま」
「只今帰ったぞ…ホノカ」
父上は疲れきった顔で俺に笑いかける。
ポーラも出迎えたのにポーラには声をかけずに頭を撫でるだけだ。
ポーラはそれでも嬉しそうだ…
「はぁはぁ父上!お帰りなさい!」
ユーガは訓練で少し遅れて出迎えにきた。
「ただいまユーガ」
父上はユーガに高い高いをする。
「父上、ポーラにもやってあげてください」これを言えない…
代わりに俺は普通の事しか言えない…
「父上、お食事の準備ができてます」
「そうか、では食事にしよう…」
(食卓)
「ホ…ホノカ、最近はどうだ?」
「はい、剣術、炎魔法は80まで上げることできました。算術は算九(中三レベル)まで理術も理九まで履修しました。」
高校レベルの内容は上級貴族が学ぶことが許されているため、下級貴族のうちでは学ぶこと許されない。
「それは凄いな。それなら学園へ行っても大丈夫だな。もしかしたら一級クラスで学べるかもしれん」
ペンドラゴン王国には人材育成を目的に『ストデウム学園』が設立されている。
その学園12歳から通い、5年制で五つクラスが存在している。
一級クラスは上級貴族と優秀な下級貴族の子息生徒を育てるクラス。
二級クラスは魔法と錬金などの研究員を育てるクラス。
三級クラスは騎士を育てるクラス。
四級クラスは下級貴族と優秀な平民を育てるクラス。
五級クラスは平民を育てるクラス。
トライーガ家は代々、領主候補2名のみを三級にいかせる。2名なのはお金の問題だ。
父上のときは、父上と一番の上の叔父さんが行っていたらしい。
うちはお金が無いけど普通は子息令嬢なら全員いかせる。
「そうなれるようにこれからも努力をしていきます」
「…うむ。精進するのだぞ
…だが無理はするんじゃないぞ?」
「はい、勿論です。父上」
「ユーガはどうだ?」
「はい、僕は…」
そして食事会は進んでいくが父上はポーラには何も聞かず声をかけずに食事は終わる。
ポーラを部屋に帰すためにポーラと手を繋ぎ歩く。
「兄上」
ユーガが俺に声をかけ、俺はユーガの方へと振り返る。
「どうした?ユーガ」
「そ、その僕に剣術を教えてください!」
ユーガとはいつも別々で稽古している。ユーガは主にドノンに稽古をつけてもらっているが、俺は山で訓練をしている。
こういう提案初めてで嬉しい。
「いいぞ」
「ありがとうございます!」
ユーガは去年“就の儀”を終えて、
第一職業は炎剣使い、
第二職業は騎士見習いと
この世界だととても恵まれた職業だ。
しかし、何人かの使用人には、
「お兄様が居なければ…」
「ホノカ様と比べちゃうと…」
「正直出涸らしじゃない…?」
こんな事を言うものがいる…
最初は俺が怒っていたのだが、ユーガ本人が俺を止めて、
「本当に僕は兄上の出涸らしだから…でも、でもね!その分僕は兄上に追いつくように頑張る!」
と俺に言いうと、それからは一人もしくはドノン達と稽古するようになった。
でも数人はしっかりと辞めさせた。
「対人か、対魔獣か、どっちの訓練をつけてほしい?」
ユーガは少し困った顔する。
「く、訓練ですか?」
「当たり前だろ、稽古だけじゃ実戦で判断できなくる。訓練を重ねることで瞬時に判断できるようにしていくんだ」
俺の言葉を聞き納得してくれたようでユーガの目は輝いて、訓練を楽しみにしてるようだ。
「は、はい!では明日からお願いします!」
ユーガはまるで後輩や部下がするようなお辞儀をする。
慕ってくれいるのは嬉しいが兄弟…家族としては悲しい。
ポト
振り返り際にユーガは自身の伝統の指輪を落としていってしまう。
ユーガにも首にかけるネックレスを渡されているのだが、ユーガはよく父上の真似をして指にしている。
俺が拾うとしたがポーラが代わりに拾い、ユーガに渡してくれた。
「ちいさいおにいさま、これ!」
「…!」
ユーガはそれに気づき…
バシ
ポーラに手を上げた。
「これは母様と父様と僕の思い出の証だ!!母様を殺したお前が触っていいものじゃない!!!」
「何をしているんだ!!」
「う、うわーーーーん」
「だって!兄上、こいつは母様を殺したんだ!メイド達もコイツを『忌み子』って呼んでる!!」
「何っ!?」
俺は言いそうなメイド達を数人を睨むと2、3人が目を逸らす。コイツらに後で話を聞かなくては…
今はユーガの考えを何とかしなくては!!!
「違う!母上は病気で死んだんだ!殺したとしたら病気を直せなかった俺だ!」
「コイツが産まれなければ…」
ユーガが言っていけないことを言いそうになったとき、俺とユーガが口論をしていた父上がそれを止めた。
「やめなさい!」
「ユーガ、お母さんが死んだのは決してポーラのせいではない…今はまだ理解できないかもしれないが、後できっと理解できる…」
「そんなことわかりたくない!」
弟は泣きながら走りだしてしまう。
父上も俺をそれを止めることが出来ない。
「ユーガ…」
「旦那様、ここは私が落ち着くまで話をしてきます」
「そうか…すまないが頼む…」
ヨハンがユーガを宥めてくれるようだ。
俺はこのメイド達に話をきく…
◇
(ユーガの部屋)
「僕は…ひっぐ、母様ことを…皆なとの思い出を、ひっぐ…」
「ユーガ様は何も間違ってはいません。皆さま、奥様に似たポーラ様に厳しくすることができないのです。例え畏怖していたとしても…」
「アイツは母様じゃない!」
「そうです。ですが皆さんユーガ様同様に奥様を失った悲しんでおられるのです」
「わかってる!そんなことわかってるよ…」
「大丈夫です。ユーガ様…何があろうとも私はユーガ様の味方です……」
ユーガは暫く悲しさと悔しさと苦しさが混ざった感情で泣き続けた。
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