第二章 復讐の黒騎士編
第1話:二つの目標
(ホノカ視点)
嘘だ…父上が…ユーガが…
「うう…」
ポーラに何て言ったら…はっ…ポーラ…
ポーラは無事か?ポーラまで…
早く帰らないと…
「あれ?」
足がフラフラする…
「しっかりしろ!」
自分のことはいい。今はポーラを優先しないと…じゃないと俺は…
力を振り絞り、無理矢理足を動かす。
そんな足取りで何とか仮設ハウスに着いた。
ガチャ
扉を開けるとポーラが俺の足に飛びついて来た。
「おにいしゃま!おかえり!」
よかった…居てくれた…
でも今は構う気になれない…
ポーラの顔を見たら力が抜けていく…
やっぱり疲れが溜まっていたんだな…
「ごめん…ポーラ…にいさまは疲れているんだ…寝かせてくれ…」
俺に拒まれたと思ったのかポーラは悲しそうな顔をする。
「うん…おやしゅみなしゃい…」
「ごめんね…コイツらに遊んでもらえ…
……お前ら妹を絶対に外に出すな…」
コクン
「悪い…頼む…」
お前らもごめんな…全部…全部、俺の所為なのに…
でも、今は寝たいんだ…
耐えきれない…
◇
ホノカは崩壊しそうな心を保つためにベットに倒れ込んでしまった。
ポーラはそんな兄を心配そうな表情で見守っていた。
そしてポーラは従魔五体と…
「たぬしゃん、きつゅねしゃん、ぶたしゃん、いぬしゃん、むししゃん。
ポーラです」
ポーラは丁寧なお辞儀で挨拶をしていた。
「くお!」「こん!」「ぷご!」「わん!」「きゃしゃ!」
そしてタヌ太郎達も挨拶を返す。
「おにいしゃまはどうしちゃったんだろう…みなしゃんしりましぇんか?」
「わふ…」「ぷご…」「きゃしゃ…」
従魔達は理由は知っているが、ポーラに何て言えばいいかわからない、言葉も話せないため、気まずそうな雰囲気を出すことしかできない…
「そういえば、ちいしゃいおにしゃまは?」
「「「「「!……」」」」」
従魔達は幼い子の疑問に心を締め付けれる。
本来はホノカの役目だが、自身の行動の遅さで父と母を死なせたと、自身の判断ミスで弟を行方不明にしてしまった事で、ホノカの心の許容量は既に超えている。
「にばんめのおにいしゃまはポーラのこときらいだからどっかいっちゃたのかな?」
ブンブン
五体は本当のことはわからないがポーラを悲しませない為に必死で首を振るう。
「そうかな…?」
コクンコクン
五体は頷き、ポーラの不安を拭う。
しかしポーラは納得できないのか、悲しい顔を浮かべて俯いてしまう…
それを見て従魔達が慰めようと動く。
「ぷご!」
「!…コン!」
トン三郎は炎魔法を出し始める。更にそこにコン次郎が光魔法を加えて、光輝く炎の玉を造り出す。
ポーラはそれに気付き、魅了される。
「?、きれぇ…!」
ポーラは魔法に拍手する。
「すごい!すごい!」
魔法を使った二体は褒められたのが嬉しく、テレてしまう。
「ぷご〜…」「コ〜ン…」
「みなしゃん!ポーラにまほうをおしえてください!」
「「「「「!」」」」」
「ぷご?」
「きしゃしゃ!」
「コン!」
「くおー!」
「わん?????」
四体はそれぞれ、トン三郎は教えて方に迷い、カブ五郎はそれに反対し、コン次郎は「私たちなら教えられるよ!」と、タヌ太郎は喧嘩しそうな三体を宥める。
因みにウル四郎は話について行けず、困惑している。
ポーラは話をしている四体に抱きつき始める。
「おねがいしましゅ!ポーラまほうをおぼえて、おにいしゃまをげんきづけたい!」
「ぷご!」「コン!」
「きゅ〜ー…」
二体は「おーー!」とポーラに賛同して、カブ五郎はポーラの健気さに折れてしまう。
「いいの!?」
「ぷご!」「こん!」
ちょんちょん
カブ五郎を二体につつく。
「きゃしゃ、しゃしゃ!」
カブ五郎は二体に「危険になったら、直ぐに中止だぞ!」と注意する。
「ぷご」「こん」
二体とも真剣な顔で頷く。
そうしてポーラの四体の魔法練習が開始された。
◇
(ホノカ視点)
あれからかなりの時間を寝て寝てしまった。
朝か…ポーラに朝ご飯を食べさせないと…
自分の部屋から出ると部屋の窓を閉めていたために朝日がとても眩しくて、蹌踉てしまう…
「ごめん…ポーラ…」
「おにいしゃま!おはよう!」
ポーラとトン三郎が俺に朝の挨拶をしてくれる。
「おはよう…ん?」
魚と果物…?どうして?
「きゃしゃ!」
丁度カブ五郎が果物を取りに行って戻って来ていた。
「カブ五郎…お前…」
本来、俺がやらないといけないのに…
「くおん…」「コン…」「わん」
他の三体は申し訳なさそうに俺に近寄ってくる。
そんな姿を見て俺はポーラと五体を引き寄せる。
「お前達ごめんな…こんなに頼りないお兄ちゃんで…テイマーで…ごめんな」
「おにいしゃまなかないで…」
ポーラも俺に吊られて泣いてしまう。
弟と父を探すために、これからは貴族ってバレないようにしないとな…
「ポーラ、今日から兄様のことをにお兄ちゃんって呼んでほしいんだ…」
「うん!おにいちゅ、ちゃ…ちゃん?」
「ありがとう…ポーラ。もう一つ大事な話があるだ…」
「どうしたの?」
「…」
言うんだ!言わなきゃいけないんだ!
「…はぁ…ゴク…ユーガお兄ちゃんがいないだろ?」
「うん…」
「ユーガお兄ちゃんは迷子になっちゃったんだ。だから俺はユーガお兄ちゃんを探したいんだ。
そしてな…父上が悪い人に捕まってしまったんだ…」
嘘をついてしまった…
父上が死んだ証拠はない…でも生きている証拠もない…
父上を陥れた奴の狙いがわからないけど、そんな奴が父上を生かす理由がない…
でも俺にはポーラにそんな事を言えない…
「その悪い人を見つけるために今日からここで暮らすことになるんだ…」
「うん!ポーラ、おにいしゃま、ちゃんとならへいき!」
「そうか…ありがとう…」
本当にありがとう…ポーラ
「そうだ…ポーラ、食後のデザートを食べないか?」
「!、いいの!?」
「あぁ、その代わり食べたら歯磨きをするんだぞ?」
「うん!」
アイテムボックスからケーキを六つ取り出して机に並べる。
「ほら、お前らも食べろ」
「「「「「!!」」」」
五体は勢いよく机に群がり、食べようとする。が…
「だめ!ちゃんといただきますしないと!」
ポーラに注意される。
「おにい…ちゃんもすわって!」
何て優しい子なんだ…
「あぁ」
自分の分も出して食卓に座る。
「「いただきます!」」
「おにいしゃま、これおいしいね!」
「いちごケーキっていうんだ。
そんなに勢いよく食べると喉が詰まっちゃうだろ?」
注意しながらポーラのほっぺの食べかすを取り、更に「アイテムボックス」から紅茶を取り出す。
そして和やか食卓は終わり、ポーラと五体はお腹一杯になり眠ってしまった。
一人になりこれからの事を考え始める。
第一優先は妹を守る。
第二優先はユーガの捜索。
第三優先は…父上を陥れた奴を探しだし…
殺す!
第ニ、第三には情報が必要だ…
王都なら様々な情報が行き交うだろう…
弟を探すに当たって、孤児院とスラム街が重点的に探すべきだろう…
陥れた奴を探すのは…
闇ギルドで情報を?
いや、闇の情報では開示は望めないか…
この前闇ギルドの奴の様子だと依頼人を知らずに調べずに仕事をしているみたいだった…
それなら冒険者ギルドで権限を獲得するべきか。
エレンが密かに教えてくれたけど冒険者は国に認められると貴族以上の権限を手に入れれるって。
それなら裏で闇ギルドで活動するより、冒険者ギルドの方が名声が上がるにつれ、貴族の依頼とかで貴族の情報を手に入れることだって出来る筈だ。
決めた。
明日、冒険者ギルドに行って俺は冒険者になる…
母上が聞いたら怒るだろうな…
ごめん、母上…でも俺にはやらなくちゃならないんだ…
絶対に…!
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