第24話:山の真の異変
(大牙山)
二人の若い狩人が仕事を終え、帰ってる途中だった。
彼らの狩りは狼3頭、兎を6匹を狩り、満足のいく結果なり、一人の狩人は喜びのあまり、まだ森の中なのに大声を出していた。
「いや〜、楽な狩りになったな」
しかしもう一人は緊張を解かずに辺りを見渡していた。
「あぁ…なぁ、もっと早く帰ろうぜ…」
そんな彼をみて、調子に乗っている狩人は心配症な狩人を見て、揶揄い始める。
「なんだよ、ビビってんのかよ?」
その揶揄いに心配症な狩人は小声で怒鳴る。
「ちゃかすな」
「怒んなって、ブルートのおっさんが言ってたこと気にしてんのか?」
ブルートとはクーガの友達で狩人の後進育成をしている人物だ。
「当たり前だろ…あの人の直感はよく当たる…何よりモンスターがいない。今日はゴブリンすら一体も見かけてない。ブルートさんが言ってた通り、この山に何かある…」
「ふーん(アホくさ)」
調子乗りな狩人は心配性なもう一人を馬鹿にしていた。
心配症な狩人は調子乗りな狩人の態度に気づいていて、彼のその態度を窘める。
「お前はあの人の話を少しは聴いたらどうだ」
「ちっ…」
調子乗りな狩人は仲間の注意を無視して、心配症な狩人はそれにため息を吐く。
「(みんなブルート、ブルートってさ、キモいって、自分で物事を決めろよな。
てか貴族様と仲良しだから頭良いんだろ…それをひけらかしてキモいって」)
調子乗りな狩人は村への不満を心で募らせていた。
彼は村のみんなが頼りにしてるブルートが嫌いだった。
「んじゃさっさと帰るか」
調子乗りな狩人は心配性な狩人のお小言が続きそうだったので帰ろうと提案する。
心配症な狩人は誰の忠告も聞かない不遜な態度に物申したそうにするが、この場は諦めた。
「あ、ああ…」
ゴシャ
急に気持ちの悪い音が聞こえる。
気持ちの悪い音を聞いた心配症の狩人は振り返る。
「な、なんだ?」
彼の目の前には見たこともないモンスターがいた。
「な、なん、ななん…」
心配症の狩人は驚きのあまりに思考が停止してしまう。
「ゴワァアアアアア!!」
「逃げるぞ!」
心配症な狩人はモンスターの咆哮のおかけで我に返る。
逃げるためにもう一人に声をかけるが…
「マーノ…ち、畜生!!!」
調子乗りな狩人マーノはモンスターに吹き飛ばされ、片腕を無くし倒れていた。
一瞬マーノを運びながら逃げようとするが、自身の命を優先し一目散に逃げる。
(ネンコ村)
心配症な狩人のネッカは何とか逃げ切ることができ村に帰ることができた。
ネッカ達のことで村人は集まり騒ぎになっていた。
その騒ぎの場にまた村人が加わる。
「どうしたんだ?」
「ネッカとマーノが狩りに行ってたんだがモンスターに襲われて、マーノが死んじまったらしい」
「な、何?!、母親のケーナには伝えたのか…?」
トライーガ領では先代の領主から山の出入りを厳しく管理していたため、何年もの間、山や森での死者は一人もいなかった。
久しぶりの死者に村人は動揺を隠せなかった。
「まだだ、今呼びにいってる…」
「死人なんて何年ぶりだよ…」
「あれだな、コーガ様以来にはなるな…」
「そ、そうだったな…」
トライーガ領内では、この話は禁句だった…話に参加していなかった周りも気まずそうになってしまう。
そんな雰囲気を掻き消すようにマーノの母親が来た。
「うちの!うちのマーノは!?」
「すみません…おばさん。アイツはモンスターに…」
「何で?!何で連れて帰って来てくれなかったの!?」
「あ、…」
彼は自身の行動を恥じて話せなかった。
マーノの母親はネッカに掴みかかる。
「なんで!なんで!?」
マーノ母親はネッカを揺らしながら問い正そうとする。
村人がネッカを助けるために、マーノの母親を引き剥がす。
「落ち着け、デリーカ」
「アンタが、アンタが死ねばよかったのよ!!」
「おい、いい加減にしろ!頭を冷やせ!!」
興奮し過ぎた彼女は知り合い数人に連れて行かれてしまう。
「ネッカ気にするな。お前と同じ状況になったら、誰だって同じ行動する」
村の年長者達はネッカを励ます。
「来たかブルート…」
二人の話題に出ていたクーガの友ブルートが事態を聞き、駆けつけて来た。
「ネッカ、友達が死んでしまったところ申し訳ないが、モンスターについて聴きたい。」
ブルートがここで件のモンスターについて、ネッカに聴取を始める。
「はい…」
「モンスターの名前はわかるかい?」
ネッカは首を激しく振った。
「み、見たこともないモンスターでした…馬みたいな長い面だったけど牙があって、長く…鋭い爪もあって…」
ネッカはモンスターの姿を思い出し、震えながら話す。
ネッカの様子を見兼ねたブルートが話を止める。
「わかった…もういい」
ネッカの話を聞き年長者達は再び騒ぎ始める。
「聞いたことないモンスターだな」
「俺たちじゃ勝てないんじゃないか?」
「この村だけなんとかなるか?」
「男手を集めとくか?」
年長者達の錯綜した話をブルートが止める。
「待ってください。まず領主様にこの事を報告します。これは俺達だけで解決していい話じゃない。」
「わかった」「おう」「確かにな」
「悪いがネッカ今の話を領主様の前で話してくれ、できそうかい?」
錯綜した話をブルートが諌めるとネッカに領主であるクーガへ報告ができそうか確認する。
「はい…」
(トライーガ邸)
クーガは事の顛末をネッカに聞いていた。
「…という訳です。」
「わかった…君は下がっていい。ブルートは残ってくれ」
「はい。失礼します…」
ネッカは病人のように背中を丸めて部屋を出る。
クーガに報告をしてたときですら、何処か上の空だった。
ネッカが部屋を出ると二人とも苦笑いを合わせて今回出来事に苦悩する。
「はぁ…またお前の読みが当たったな…」
「悪いな…」
「「…」」
二人の間に暫く沈黙が続く。
「すまない…俺がもう少しキツく言っていたらここまで大事にはなら無かった…」
「やめろ。俺も山を調査したが異常を、そのモンスターを見つけることできなかった…
はぁ、たられば論をやり続けても意味がない。
問題を解決するために代表を集めて話し合いをする。すまないがお前は狩人組の代表をすぐに呼んできてくれ」
「わかった。じゃあまたあとでな」
「ああ」
◇
(ホノカ視点)
俺は大人達の話を天井で盗み聞きしてる。
「…俺たちも参加する!」
「あんたのところは若い奴が多い、狩人組は今回の戦いには見送った方がいいだろ」
「兵士長様はうちの若い衆を馬鹿にしてるようだ。うちに仲間を殺されて黙っているような玉無しだってな!!」
今声を荒げて怒っているのは村の狩人組を求めているイグイっておっさんだ。
「落ち着け、曲解しすぎだ!」
ドノンが落ち着かせようとするけど…
「落ち着いていられるか!!!俺たちが絶対にケリをつける!」
「あのな!……」
イグイが興奮してる所為でさっきからずっと話が平行線になってる。
如何やら正体不明のモンスターが若い狩人を襲い、死人がでたみたいだ。
狩猟組は自分達の仲間を殺したモンスターを倒したい。
兵士隊は若い奴らは今回の討伐参加を見送ってほしい。
因みに最初は兵士隊は年長者だけの参加を提示したが、狩猟組は若い奴ら仲間の仇をうてないのは酷だの一点張りなので、狩人組の全体の参加をしないでくれに変えた。
いつも怒ったような怖い顔の父上はいつも以上に怒った顔でさらに怖い。
「イグイさん。いい加減にしてください」
「なんだとブルート!」
今イグイを諌めたのはブルートさんだ。
この人は父上の幼馴染で村と父上の仲介を行っている人で狩猟組に属している。
「この未曾有事態に我々の我儘を持ち込むべきではないんです。」
「お前は領主様と仲良いからそんなことが言えるんだ!俺らの本当の仲間だったらそんなふざけたこと言うわけがない!!!」
何言ってんだこのジジイは?
「はぁ…貴方って人は」
ほらブルートさんも呆れてる。
「いい加減、(我々の話に)耳を傾けて、話し合いをしてくれ!」
ドノンその言い方は不味いよ…
「それは俺が話し合いもできない馬鹿だってことか!?!!!」
「「%*%*^#*$!!!」」
あー、ほらまた口論になっちゃったよ…
「イグイ殿…」
シーーーン
父上が等々口を開いた。
「悪いが黙っていてくれ」
「それは…」
「黙れ」
「ひっ」
すげー、あの五月蝿かったおっさんを黙らせた。
おっさんの顔が真っ青になってる。「威圧」を使った様子もないのに凄い。
父上がイグイを黙らせて会議はやっと進み、作戦内容が決まった。
作戦参加者は
兵士隊21名(全員レベル50以上)。
狩猟組7名(全員レベル50以上)。
14名を1チームとして3、4名づつで四方に散開しながらモンスターを索敵し、モンスターを発見した場合、大笛で場所を知らせて28名が集まってから戦闘行う。
7名以上死傷が出た場合は撤退、冒険者ギルドもしくは王国に報告し討伐を依頼するってことになった。
何故最初から討伐を依頼しないかというとうちの領にそんな金がない。
冒険者ギルド場合は未確認のモンスターは実際の難易度に関わらず一律金貨10枚だ。
王国の場合は兵士もしくは騎士の食事を此方が負担しなけばならない。
うちのような小規模男爵領にとって大打撃だ。
だから腕っ節に自信がある領は死者が出ても、まずは自分達で討伐を試みるのが普通らしい。
まぁ、皆んなが調子に乗らない程度に俺がサポートするから死人は出ないんだけどね。
討伐は明日決行だ。
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