第2話:貧乏貴族
(ホノカ視点)
あれから4年が経ち、今年で4歳になる。
何とか3歳で日常レベルの読み書きをマスターした。
話すのは子供なので舌がまだ成長しきれていないので辿々しい。
勉強をするのが大変だった…英語を勉強するのとは訳が違うのだ。英語は「私」が「I」とか「好き」が「like」とかが既に分かっているんだから勉強しやすいだろう…「私」すらわからないのにどうやって勉強するのか…
言葉は日常会話を取り敢えず聞きまくり話しまくった。貧乏貴族だから子供用の本なんて置いていないし、先生もいない俺にとってこれが一番の勉強方法だ。
読み書きは大変だった…何回も言うが貧乏貴族だから子供用の本なんて置いていない。あるのはこの領地の決算書ぐらい…
一様俺の出産祝いに贈り物はあったみたいだけど絵本ではなく積み木などの知育玩具だけだった。
それでも色んな物を探して子供のフリして「なーに?」と可愛い子ぶって、主にメイド達に質問して、地面を黒板代わりに文字書いてもらい何とか勉強してきた。
しかし変に質問し過ぎて子供ぽくないって疑われるの怖いから、子供のフリを徹底している。
あともう一つの戦いがあった…
身体が子供なので頭を使い続けると疲れて直ぐに眠ってしまうのだ。
元の身体なら12時間働き続けてその後にゲームを8時間やっても平気だったのに…
おかげで語学を習得するのに3年もの月日が経ってしまった。
前世は子供をもっていなかったし、縁すら無かった…だから何歳ぐらいで喋れるようになるか解らなず焦って勉強した。何より貴族だから頑張らないと思った。
そうだ。父は士爵と準男爵かと思ったが男爵らしい。男爵ってお金無いんだな…それともうちだけ?
コンコン
「ホノカ、起きていますか?」
どうやら母が朝の挨拶の為に俺の部屋に来てくれたようだ。
「おはようホノカ」
このおっぱいが大きく、綺麗な銀白の髪をした女性が俺の母、グレンダ・トライーガだ。
「おはようございます。おかあさま」
「やっぱりうちの子は天才だわ〜!だってまだ3才よ!」
急に母に抱きしめられ頬づりされる。いつものことだけどね…
まぁ…母の反応から分かるように俺は勉強をし過ぎたらしい…
「おかあさま、いたい…」
「あら、ごめんなさいね。大丈夫?」
「はい、だいじょうぶです」
本当は痛くないのだが、父が母に抱きしめられ眉間に皺を寄せ青白い顔になる父を見たので痛いフリをしていり。
母はどうやら力が強いうえにそのコントロールが得意ではないらしい。
でもそんな母の子だから俺はかなり頑丈だ。しかも力も凄く、1歳ごろに遊ぶフリをしていたら、持っていた積み木が握り爆ぜた。
「今日はお父様が戦争から帰ってくるからおめかししましょうね?」
「ぇ、は、はい」
今父は国境で戦争をしていて分隊長を務めているらしい。元は普通の隊員だったらしいけど、俺が1歳の頃に戦争があり、そのときに戦果を上げて分隊長に昇格したらしい。
だけど貴族なのに前線で戦うような役職って…貧乏貴族だからどうしようもないのだろう…
それで頑張った父を出迎えるためにおめかしするんだが…
嫌だ…父を出迎えるのがじゃない。おしゃれするのが嫌なんだ!
母はファッションセンスがものすごくない。母が今着てる服は父からのプレゼントでセンスがいい。そもそも母の服全部が父からのプレゼントだ。
しかし俺のおしゃれ服は6割が母が選んでる…
この前買ってきたのなんて、まるで口をパンパンにしたハムスター、せめて俺をお店に連れて行って欲しい…
はぁ…憂鬱だ…
なんとか誘導してみるか…
「こ、これがいいなー…」
父が子供の頃着ていた服を指すが…
「そんな地味なのでいいの?これなんてどうかしら!」
げぇ…ひまわり…そんなのを来たらまるで花のライオンじゃんか…
金が無いのにまた新しいのを買って…
「奥様、そちらはもう流行が過ぎているのでやはりホノカ様がお選びなったにお召し物が宜しいかと。」
ナイスだヨハン!
貴族は流行を取り入れないとナメらる。無視されたり茶会に呼ばれなくなる。
なので「流行り」という言葉弱いのだ。
かと言ってうちにはそんなお金はない。母方の祖父がお金を一部工面してくるてメイド達が言ってるのを聞いたことがある。
一部なのは母が断っているかららしい。
理由はメイドも知らないらしい。もう少し大きくなったら聞いてみよう。
「そうなの?ヨハン」
母よ、頼む!納得してくれ!
「はい。奥様」
「じゃあそれにしましょ!」
良かった…納得してくれて…
もう少しでマスコットキャラクターになるとこだった。
ありがとう。ヨハン!
彼、ヨハン。執事だ。俺が赤ん坊の頃からいる。超出来る執事だ。母が服の無理強いするとき、父の代わりにヨハンが助けてくれる。
「じゃあ私は料理長の処で昼食の献立を話してくるから、ヨハン、ホノカのことお願いね」
うちにはメイドが少ないので母の一緒に料理をしている。
「かしこまりました。奥様」
「ホノカ様、もうすぐ父君が帰って来らますので、あまり長い時間は遊べまんが、このヨハン、ホノカ様のため全身全霊で遊ばせていただきます」
父は昼前に帰ってくるみたいだ。
「はい!ぼくはしりとりがしたいです」
「かしこまりました。ではリス」
「すな」
これも俺の勉強方法の一つだ。
(お昼)
腹減ったな、つまみ食いでもするか。
台所に潜り込み物色する。
いつのか解らない干し肉…カビてる…
芽がでたじゃがいも…
良いのないかな。
お!クッキーだ。クッキーが入った瓶を発見した。砂糖は使用されていないが腹は膨れる。ガラスの瓶だから気をつけて開けないと爆ぜてしまう。この前銀のフォークを落としそうになってキャッチしたら「パン」と爆ぜた。
積み木の件といい、この世界の物は結構脆い。
もしかしたら、母親譲りの馬鹿力説もある。華奢な貴婦人のような母が加工前の丸太6本を1人で担いでたときは唖然とした。
いやこの説の方が濃厚か?
パク
クッキーを一つを頬張る。やっぱり美味しくない…
父が昇進したおかげでご飯は前とは比べられないほど豪華になった。パンは綺麗な焼き目がついていて柔らかい。スープーは味は薄いけど穀物や野菜が入っていて栄養価があり、腹も膨れる。肉は何の肉かわからないけど、ステーキみたいなのが出てる。
パンッ
もう一つクッキーを食べようとしたらクッキーが粉々に爆ぜた。考え事しながら物を触るのは危ないな。
「親方様が帰ってきたぞ!」
ビックリしたー、怒られると思ったー。
大声出さないでくれ!いや…勝手にクッキー食ってた俺が悪いんだけど…
よし、片付けて父を出迎えに行こう!
父を出迎えると30人くらいの軍勢が屋敷に来た。というか帰ってきた。
この軍勢は父の私兵隊だ。しかしなんか増えてる。
行くときは父を合わせ14人だったのがぱっと見2倍以上になってる。
「あなた〜」
母が手を思い切りブンブン振って父を歓迎している。
男爵夫人とは思えないが母は歴とした貴族でしかも伯爵令嬢らしい。母は長女として生まれたが凄いお転婆だったらしく、身分が下の父とでも結婚できたときは母方の祖父母は泣いて喜んだみたいだ。
「ただいま、グレンダ、ホノカ」
「おかえり、あなた」
「おかえりなさい、おとうさま」
このすんごい怖い顔した。黒髪にオシャレなオレンジのメッシュがしてある人がクーガ・トライーガ。俺の父親だ。
俺の髪色は父と同じだ。
「ホノカよ!今回も父は大勝だったぞ!」
父は俺を抱きかかえ、話を続けた。
「あとで、戦の話は後でしてやるからな!ホノカは優秀だから、きっと私以上の武人になるぞ!」
私兵に自ま…教えるように俺を褒める。しかもデレデレで頬ずりしてくる。やめてくれ!恥ずかしい!
それにしても初めて父の鎧姿を見たが、強面な顔も相まってカッコいいな。
行くときは父が鎧を着てる最中でお眠になってしまって見れなかった。
(新人兵士&新人使用人
「……」
ん?どうしたんだろう?見に覚えない人達が俺と父を見て、鳩が豆鉄砲喰らったみたな顔してる。
あ!わかったぞ!こんな強面で寧ろ怖い顔の父が子供にデレてるのがビックリしたんだな〜。
(新人執事「あれがトライーガ卿の御子息?!」)
(新人メイド「なんてお可愛いらしい、夫人に似過ぎだわ。いや髪色は男爵と同じだが…」)
(新人兵士「こんな愛らしい子供がいるんだ。あの英雄、戦火のクーガが父親になるわけだ」)
「皆よ、聴いてくれ、我が息子だ!ほら自己紹介をしなさい」
「はい。みなさま、ホノカ・トライーガです。よろしくおねがいします。」
(兵士&使用人一同)
(「可愛い〜」)
(夕飯)
父は俺を膝に乗せニコニコしながら話し始めた。
何をニコニコしているんだ?怖いよ?
「ホノカよ!お前のために家庭教師を雇ってきたぞ!」
父よ、もしかしてその顔でサプライズ好きなのか?!
びっくりしていたら美女が扉を開けて出てきた。
父は俺を抱えながら椅子から立ち上がる。
「マルタ自己紹介を頼む」
母上が可愛い系なら、この人は綺麗系だな。胸も母ほどではないけど中々あるな。身長も結構高い、うちの父は174くらいだから、その父と同じ目線ってことは170cmはあるはずだ。
マルタと言われた女性は前に出て自己紹介を始めた。
「はい。坊っちゃま、私はマルタ・ゼルーダとお申します。
坊っちゃまを立派な男児にしてみせます。以後よろしくお願い致します。」
「マルタはな、ゼルーダ伯爵家の出で学園を次席で卒業するほど頭がいいんだ。」
え!?そんなに優秀ってことは給料やばいんじゃ…
「元々おまえの家庭教師を募集していたのだが、此度の私の功績を聞いたマルタが自ら応募してくれたのだ」
「そうなんですね!うれしいです!」
それってヤバくない?金があるのを知って乗っ取ろうとしているのでは?!
やめてくれ!最近やっと俺の思う貴族らしい生活するようになっただけで金はほとんどないぞ!たぶん!
「よろしくお願いします。マルタさん」
俺が見張っているからな…
「はい。ホノカ様」
絶対この女は怪しい…
俺と母を見る目が憎しみというか嫉妬ようなものが感じられる。
暫く彼女を監視しよう!
俺の監視は半日続いた。
マルタとメイドとの会話を盗み聞きしたり、
マルタがメイドの手伝いをするのを見つけたり、
マルタが休憩にお菓子を食べるとこを見たり、
マルタの行動を監視し続けた。
中々あの女動かない…
俺の今日の行動はっきり言ってストーカーそのものだぞ!そう思ったらなんか悪い気がしてきた…
これと言った悪いところは見当たらなず諦めるか…
いや!まだだ!
気が重いがマルタの私物を探ってみる!もしかしたら毒とか、何かの不正記録があるかもしれない!
今丁度マルタは部屋いない!
早速忍び込んでいく!
元空き部屋だったマルタの部屋に入るとトランクケースが5個も置いてある。女性だからか?多くないか?
バレないように既に開けてあるトランクケースを見ていく。
ん?何だこれ?日記か?
いや…タイトルが書いてるな…
しろ…ぎん…白銀(はくぎん)の姫さま?
童話かな?勉強を兼ねて読んでみるか。
ん?ん?ん?これ母の事じゃないか?
わかんない言葉が多いけどこれ多分恋愛小説…
ん?熱いキス…二人でベッド…
違うこれ…官能小説だ。しかもマルタとの…
てかこれ著者マルタじゃん。
こ、これは見なかった事にしよう…母の事が好きなら俺もう、嬉しいよ…
ん?新品…書きかけの本がある。
まだ書いて…ん?オレンジと黒の王子?…まさか父…いや新品ってことは…
パカ
…
パタン
忘れよ。
◇
実は彼女、マルタはグレンダの2歳年下でグレンダのファン…というより信者だったのだ。
同じ学園で同じ寮でグレンダのいた部屋に入居したり、彼女はグレンダのストーカーだったのだ。
そんな彼女の愛の対象は、今やグレンダの息子ホノカになっていた。
ホノカは静かにそこを立ち去り、出来るだけ忘れようと心掛けたのだった。
この日からホノカはマルタのことを心の中で『変態教師』と呼ぶようになった。
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