二人の夫

力に目覚めない巫で、王女の一人ミティスは、巫ゆえに幼い頃から塔に閉じ込められ、絶望しながら生きてきた。
亡き母も巫で、ミティスには愛情を注がず、父たちには疎遠にされ、女官には疎まれ、孤独だったミティス。
昔なじみの護衛官アイテルはいるが、何を考えているかわからず、新任の軍人テフォンはミティスに冷たい。
巫の主な役目は、王都を守る防壁を張ることだが、ミティスはそれができないため、国境防衛の任についていたテフォンは反感を抱いていた。
短い巫の生涯を、塔で、孤独と誹謗のうちに終えるであろうことに、ミティスは疲弊していた。

ある日、父たちが訪れ、ミティスの婚姻を進めようとする。力に目覚めない娘に見切りをつけ、世継ぎを設けさせるためだった。
これにより、それまでの絶望に耐えられなくなったミティスは、…続きを読む