第18話 異世界転移にあこがれた夜
「説明があったと思うけど、私たち『売り子』にとっての『休憩』は、売れた商品を補充する数十秒間だけだから『休憩所』なんてものは無いの。長くても4~5時間、それも売った分だけお金が入るバイトだから、大半の人は休まずにぶっ通しで働くのでそれでもいいのだけど、暑すぎて『水分取って休みたい!』ってなった時にはここに来るの。だから『休憩所』は通称で、みんながそう呼んでいるいるだけなんだけどね」
『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた扉の前で立ち止まった
扉が開くと、左手前にはジュースの自動販売機、その奥には『会議室A』と『会議室B』と書かれたドアが並び、突き当たりには『無駄な会議をなくそう!』と書かれたポスターの貼ってある15メートルほど続く白い壁の通路が現れた。
「スタジアムの人が使う会議室らしいのだけど、なぜかこの通路までは私たちのセキュリティーカードでも扉が開くのよ。通路とは言えエアコン効いてるし、自販機もあるし、なによりも試合中に会議はないらしくて、いつも人がいないから『売り子』がこっそりと『休憩所』として使っているのよ。
俺はさっそくポケットから小銭を取り出し、自販機でスポーツ飲料を買うとがぶ飲みする。
「ああ、これは助かるな。涼しいし生き返るよ」
「でしょ、オフェーリアちゃんにも教えてあるから、そろそろ来るはずよ。……って来たみたいね」
『ピッ』という音と共に扉が開くと、『
「あ、茉依さん!、それに早馬さんも!お疲れ様です!」
そう言いながらそっと扉をしめると、汗だくの顔で小走りに駆け寄ってくるオフェーリア。
「お疲れ様、オフェーリアちゃん。汗すごいけど大丈夫?」
「はい、暑さで少しフラっとすることがありましたけど、ここまで体調はおおむね良好です!」
俺は手に残っている小銭で再びスポーツ飲料を購入すると、首に巻いたキャップやショートパンツと同じエンジ色のタオルで汗を拭くオフェーリアにそれを手渡す。
「ほら、暑いだろ。水分取った方がいいぞ」
「早馬さん、ありがとうございます!」
冷たいペットボトルを手に取りキャップを開けると、一息にごくごくと飲み干すオフェーリア。
そのお胸を見る限り、確かに魔力は回復しているようだが、まだ『おおむね』とは言い難いサイズだ。
「オフェーリアちゃん、どう?みんな感謝してくれる?」
「はい、おかげさまで。これまで50人ほどの方に『ありがとう』と言ってもらえまました。本当に良いお仕事を紹介してくださって、ありがとうございます。茉依さん!」
「そうでしょう、そうでしょう。オフェーリアちゃんがみんなに感謝されて、私もうれしいわ。オフェーリアちゃんが感謝されればされるほど、私も『活躍』したと早馬様が評価してくれるはずだから、こちらとしても願ったりかなったりよ。まだ時間はあるから、これからも頑張ってね」
そうオフェーリアに優しい言葉をかけた茉依は、急に表情を変え、今度は何かヤバいものを見るような目で俺を見る。
「さて、オフェーリアちゃんも飲み終わったようだから、早馬、出番よ。
「なあ茉依、『測りなさい』って何をだ?」
「『何をだ?』じゃないわよ、何をすっとぼけてるんだか。測るのはおっぱいのサイズよサ・イ・ズ!あんた見ただけで測れるじゃない。その無駄な能力、こんな時に使わないでいつ使うっていうのよ。そのために探して連れてきたんだから、早く測りなさい!」
「……しょうがないな。オフェーリア、まずは横からだ。ちょっと背筋をまっすぐに伸ばして立ってくれ」
「はい!分かりました!」
言いつけ通り『気を付け』の姿勢を取るオフェーリア。
茉依の手前、めんどくさそうなフリをしながら測定するが、小ぶりとは言え公然と『おっぱい狩り』できるのはなかなか悪い気分ではない。
俺は『横からの狩りの結果』を脳に叩き込むと、オフェーリアの正面に回り込む。
「次は前からだ。ちょっとずつ前かがみになってくれるか。俺から胸元が見えるくらいまで」
「こう……ですかね」
俺を上目づかいで見つめながら、徐々にかがんでいくオフェーリア。
普段の神官衣装とは違い、オフェーリアが着ている制服は野球のユニフォームに似せたデザインで、いくらかがんだとしても谷間が見えることはない。
にもかかわらず、前かがみ&上づかいで見つめられたというだけでドキッとしてしまうのはなぜなのだろうか。
「OKだ。少しの間、その体勢を維持してくれ」
「わ、わかりました!」
胸元がよく見える位置でオフェーリアの姿勢を固定し、正面からの『狩り』を始めようとしたところで、その様子を見ていた茉依が口を開く。
「ねえ、早馬。さっきは横、今は前と2か所から測ってるみたいだけど、いつもそうやって測るの?」
「そうだな。ぱっと見ただけでもおおまかなサイズなら分かるんだが、正面からトップバストのアンダーバストのサイズ、横からトップとアンダーの差をそれぞれ測った方が精度が高まるから、基本的には今みたいに2方向から測ってるな」
「へえ、そうやって測るのね。なんか手慣れ過ぎてて、ある意味関心するわ。でも、私の時はすれ違いざまに前から見ただけで正確なサイズを当てたじゃない。あれはどうやったの?」
「ああ、あれか。お前の場合は特別で、正面からトップかアンダーバストのサイズさえ測れれば、横から測かる必要が無かったからな。見慣れた”
そう答えた瞬間、大きく振りかぶった茉依の右腕から放たれた『何か』が俺の顔スレスレを通過すると、突き当りの壁に当たり床に落ちる。
「おわっ!なんだ今の!?」
「今のは『プロ公式球』、試合で使われているボールよ。この仕事やってると、お酒に飲まれた客がセクハラまがいの事をしようとすることがあるから、迎撃用に持ち歩いているのよ」
「いや、そうじゃなくて、なぜ俺にボールを投げたかを聞いているんだ。『公式球』ってことは
「それは、何かボールを投げつけられるような失礼なこと言ったからじゃないかしら。
そう言って機嫌悪そうにプイっとそっぽを向く茉依から、前かがみを続けているせいで体をプルプルと震わせるオフェーリアに目を移すと、改めて正面からの『狩り』を行う。
「OKだ、もう自由にしていいぞ」
前かがみの姿勢を解いて気持ちよさそうに背伸びするオフェーリア。
俺はその横で『横からのお胸狩りの結果』と今行った『正面からのお胸狩りの結果』を元に脳内でお胸の3Dモデル作成すると、そのサイズを測定する。
「うん、分かったぞ。今のオフェーリアは”C65”だ。ただしトップが”79”だからギリギリの”C”だな」
「”Cカップ”ね……ちなみに最大の時のオフェーリアちゃんのサイズは?」
「それは”
「ほら見なさい、オフェーリアちゃんの最大時もやっぱり測ってたんじゃないの。それにしても、少し前まで”Aカップ”だったのが、ちょっと人に感謝されただけで”Cカップ”になるなんて、異世界の人の魔力ってすごいわ……」
オフェーリアのお胸をうらやましそうな目で見つめる茉依。
俺は慰めるようにその肩をトントンと叩くと、できる限りの優しい声で話しかける。
「なあ茉依、『私の”Bカップ”も魔力さえあれば”Cカップ”や”Gカップ”になれるのに……』なんて思っていないか?確かに大きな胸は魅力的だが、重要なのは胸がその人に合っているかどうかだ。俺はその小ぶりな胸が、お前にはとってもよく似合っていると思うぞ」
その瞬間、再び大きく振りかぶった茉依の右腕から放たれたボールが、”シュっ”っという音と共に俺の顔スレスレを通過すると、勢いよく壁に当たる。
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