第19話 投げる精密機械
「おい!今、さっきよりも
顔をかすめていった
「さっきより速いボールだったのは、さっきよりも失礼なことを言ったからじゃないかしら……。
3人だけの
オフェーリアは茉依の
「いや、さっきオフェーリアの胸を見ていた時の顔は、明らかにうらやましそうだったが……」
「もう一回言うわ。二度と変なことは言うんじゃないわよ!わかった!?」
どこからか取り出した3つ目のボールを握りしめ、『俺に向かって投げるふりをしながら』という
「はい、分かりました。もう言いません。なので、そのボールを投げつけるのは
「あんたみたいにセクハラする奴が多いから、それなりの数を持ってるの!。……もういいわ。私はものすごく気分悪くなったから先に行くわね。次は『6回が終わったら』ここに集合よ。じゃあね」
茉依はそう言うと、必要以上に大きな音を立ててドアを閉め、
「……しまった、ちょっとからかい過ぎたか。こりゃ後で謝った方がいいかもだな」
「早馬さん、確かに茉依さんは怒っていましたが、あれは、からかわれたからではなくて、不安だからじゃないでしょうか」
「不安?」
「はい、不安です。私も
俺の頭の中に、202号室の折り畳みテーブルに
「ああ、午前中の『今の私は見ての通り、魔力ゼロの使えない神官なのです!』って吐き捨ててたやつか?」
「それです……。恥ずかしい姿をお見せして申し訳ありません」
ばつが悪そうに苦笑いするオフェーリア。
「茉依さんも今、不安のあまり『この動きやすいサイズの胸が気に入ってるの!』なんて強がりを口にしてしまっていると思いますので、少し落ち着いたら、私、言ってあげようと思うんです。『今は小さなその胸も、
両手を広げ、力説するオフェーリア。
茉依の事を本気で思って言っているのだろう、その表情は真剣そのものだ。
「……オフェーリア、その『こちらの世界の人は”成長”で胸が大きくなる』というのは、どこで知った話なんだ?」
「前にお見せしたガイドブック『異世界の歩き方』に書いてありました。私たちの世界で魔法を使える者は、魔力回復に
「なるほど、理解した。理解した上で言うが、それ、絶対に本人に言っちゃいけないやつだ。絶対だぞ。絶対に茉依には言うな。もし言ったら大変なことになるぞ!」
「え?なぜですか!?せっかく茉依さんを元気づけてあげようと思って考えた言葉なのに……。あ、それはもしかして、こちらの世界のこの国特有の文化である『やるな、やるなと念を押された事は、本当はやってほしい事』というやつですか?これも『異世界の歩き方』に書いてありましたが……」
『異世界の歩き方』うぜぇ。
そう思いながらも、茉依の耳にオフェーリアの言葉が入ってしまった場合に繰り広げられるであろう
「いや、違う。本当に『言うな』と言っているんだ。そのガイドブックの胸の説明は間違いではないが、肝心なことが書かれていない。確かに成長と共に大きくなるが、その
「え、私の身長ですか?子供の頃はぐんぐん伸びていましたが、ここ数年は成長が止まってしまったのか全く……。はっ!早馬さん、もしかして茉依さんの胸は、もうあの大きさで止まってしまったと……」
ものすごく『気の毒そうな顔』になるオフェーリア。
「だから、茉依の胸のことで何か言うのも、そんな顔を見せるのも、絶対にするんじゃない。変に
「なるほど……、私も理解しました。茉依さんのためにと思っていた言葉だったのですが、全く正反対の効果をもたらすものだったのですね。ボール投げつけられるのは嫌ですので言うのは止めておきます。物理攻撃は苦手ですので……」
「うん。『触らぬ神に
「はい、私も戻ります。そういえば茉依さん、投げたボールをそのままで行っちゃいましたね。そのままだと、ここでこっそり休んでいるのがバレちゃうと思いますので拾ってきますね」
「おーい、どうした?」
「……茉依さん『野球やっている』っておっしゃってましたけど、ものすごくコントロール良いんですね」
「そうだな。さっきも2球とも顔面スレスレのボールだ。多分、当たらないように投げているのだろうから、なかなかのコントロールだと思うぞ」
「あ、いえ、それもそうなんですが……。早馬さん、ちょっとこちらに来ていただいて、このポスターを見てもらえないですか?」
「ん?」
オフェーリアの横に
「私見てたんですけど、茉依さんが投げたボールって早馬さんの顔をかすめた後、このポスターに当たってるんです。最初のボールも、2回目のボールも、どちらも。でも、このポスターにボールが当たった
「……ああ、これは間違いなく、2球ともまったく同じ所に当ててるんだ。あいつ『外野手やってる』って言ってたけど、ピッチャーやるべきだろ、ここまでコントロール良いなら」
『無駄な会議をなくそう!』と書かれたポスターのちょうど『!』の部分に出来た『ボールの当たった跡』には、異なる2つの角度の『
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