第11話 vs新人狩り① (三人称)
「あ、あの…………私行くとは」
水色髪のショートカットの少女が怯えた様子でそう言う。
「遠慮しなくていいんだよ」
そう言い少女の腕をがっちり掴み無理やり連れていくルイ。
その腕を振り払えるほどの力はその少女には無い。
ルイはそれをわかって彼女を狙った。
もはや少女に残っている選択肢は、大人しくついて行くことしか無いのだ。
C級ダンジョン前
「おっ、連れてきたのかルイ」
「待ちくたびれたぜ」
そう言いルイに近づく二人の男。
「待たせたなジャック、ガウス」
「えっ…………あなただけじゃないの……………」
ルイだけだと思って居たはずがダンジョンには他に二人の男が待機していた。
少女は恐怖で体が震える。
身の危険を感じた少女は逃げようと、走り出す。
「どこ行くの?」
不敵な笑みを浮かべたルイが少女の腕をがっしり掴む。
「痛っ───」
それは先程と違い痛みを感じるほどの力だった。
「ほら、行くよ」
「い、いやっ……………」
ルイは少女を引っ張りダンジョンに潜っていった。
「おら!」
「死ねや!」
ジャックとガウスが襲いかかってくるモンスターを倒していく。
笑みを浮かべ、まるで殺す事を楽しんでいるようだ。
新人狩り───。
それは冒険者であれば必ず知っており、警戒する存在。
当然少女も知っている。そしてこの状況は確実に新人狩りだと理解している。
少女の瞳に涙が浮かび出す。
ルイに掴まれる腕の震えが止まらない。
無理だと分かっても抵抗してしまう。
「あっ、怖がれさたかな?ごめんね、あの二人はモンスターを見るとテンションが上がっちゃうみたいなんだ」
そう言うルイもまるで狙っていた獲物を捕らえたかのような狂気の目をしていた。
「あっ…………あぁ…………」
「さぁ、先に進もうか」
ジャックとガウスがモンスターを倒し、空いた道をルイが進んでいく。
ルイは少女から手を離す気は全くないようだ。
そうして四人はどんどんとダンジョンの深くへと潜って行った。
「もうボス部屋かよ」
「呆気ねぇな」
「でもここまで深い所まで来たら良いんじゃないかな」
そう言いルイは少女から手を離す。
「それもそうだな」
三人の男が少女に視線を向ける。
「い、いやッ……………助け…………」
少女がゆっくりと後退りをし始める。
恐怖で足が震え、上手く歩くことができない。
「誰がやるよ?」
「今日は俺で良いか?」
「いや、俺がやる」
「お前ら黙れ。モンスターの処理は譲ってやっただろ。こいつは僕がやる」
ルイは腰にかけていた剣をゆっくりと抜いた。
そうして少女の方へと近づく。
「こ、来ないで……………キャッ」
少女は足が縺れ、その場に尻もちを着いた。腰が抜けて立ち上がる事が出来ない。
「ど、どうしてこんな事……………」
「どうしてか〜〜…………そんなの人を殺すのが好きだからだよ」
ルイは既に少女の目前まで来ていた。
ギラリと光る鋭い剣を少女に見せ付ける。
「大丈夫だよ。直ぐには殺さないからさ」
ブルブルと体を震えさせる少女を見てルイは笑みを浮かべた。
「良いね、その顔」
ルイなゆっくりと剣を上げる。
「誰か………助けて……………」
そして少女に目掛け、剣を振り下ろした。
「やめろ!」
そんな声が響き、何者かがルイにタックルをした。
「グハッ……………」
突然の奇襲に反応できなかったルイは吹き飛ばされ、地面を転がった。
「間に合った……………」
「危なかったですね」
黒のローブを纏った二人が少女の前に出る。
「アマネさん、私も戦います」
「いや、俺が前に出るからリーシャはその子を守っててくれ」
黒のローブの正体はアマネとリーシャだ。
<認識阻害>により誰も彼らの表情を読み取ることが出来ない。
「何者だ?お前ら」
「ぶっ殺すぞ!」
ジャックとガウスがそう叫び、ナイフを向ける。
「ふざけないでくれないかな?僕の楽しみの時間を奪うなんて───」
立ち上がったルイが怒りを顕にする。
「人殺しが楽しみだと、ふざけるなよ」
アマネは保管庫から剣を取り出す。
「おいおい、そんな剣で僕達を倒せるなんて思ってるのかな」
「ああ、お前らなんかこれで十分だ」
「調子乗んのもいい加減にしろよ!」
そう言いジャックは炎の玉をアマネに目掛け飛ばす。
それをアマネは簡単に避ける。
「死ねや!」
ガウスがナイフを持って、アマネに突進する。
カン。
それを剣で受け流す。
「アマネさん!」
そうしている間にアマネの背後に回るルイ。
背中に目掛け、剣を突き刺す。
アマネは横に飛び紙一重でそれを避ける。
「避けただと!?」
(危ねぇ…………<感覚>取っててよかったぁ)
だが落ち着かせる余裕も無く、ガウスがアマネに間合いを詰めていく。
アマネは剣を振るい、ガウスの持つナイフを振り払う。
「げっ!?」
「<
炎の玉をガウスの腹目掛けて飛ばし、吹き飛ばす。
「グハッ……………!」
ガウスは地面に叩きつけられ、動かなくなった。
「<
ジャックがそう叫ぶ声がダンジョン内を木霊する。
だがそのターゲットはアマネではなくリーシャ達の方だった。
「<
リーシャは氷で出来た盾でその攻撃を防ぐ。
「チッ───」
ジャックは更に攻撃のスピードを上げ、シールドを割ることに必死になっていた。
その隙をつき、アマネは間合いを詰めだす。
カン。
「どこに行くつもりかな?」
ルイはアマネの行く手を阻んだ。
カン、カン、カン。
二人の剣のぶつかり合う。
「中々やるね……………でもこれは付いてこれるかな」
ルイがそう言った途端、アマネの視界から姿を消した。
「君に僕の姿が見えるかな」
時折、風を切る音がアマネの耳に響く。
アマネは周囲を警戒し、剣を構える。
自身の感覚を研ぎ澄ませ、ルイの居場所を探した。
(ダメだ。見つからない……………なら、使ってみるか)
「魔眼」
アマネの瞳に魔力が宿る。
(いた!やっぱり高速移動系のスキルか)
<魔眼>は闇魔法がLv2になったことにより使えるようになった。
目が強化され、相手の魔力まで見えるようになる魔法だ。
アマネは目だけでルイを追い続ける。
<認識阻害>でルイはアマネがどういう顔をしているのか見えていない。
つまりルイ本人はアマネが自分を見失っていると思い込んでいる。
それによって生まれる油断をアマネは狙っているのだ。
「こっちだよ」
ルイはアマネの背後からそう声をかける。
アマネは敢えて、その方に振り向く。
「かかったな!ほんとはこっちだよ!」
ルイはアマネの死角に周り、背後から剣を振るう。
カン。
それも見えていたアマネは簡単にその攻撃を防いだ。
「なっ!?」
ルイは防がれた事に動揺し、隙を生んだ。
それを逃すこと無く、アマネはルイを蹴り上げる。
「ガハッ」
ルイは後ろに倒れ込んだ。
(気づいてない作戦が成功してよかった。新人狩りのくせにちょっと強いのやめて欲しいなぁ)
その頃、ガウスとリーシャは魔法の打ち合いをしていた。
少女を守りながらのリーシャは防衛に集中しているせいであまり攻撃に回ることが出来ない。
「おらおら、こんなもんか!」
ジャックの止まらない炎攻撃にリーシャの作った氷のバリアは徐々にヒビがはいり始めていた。
「
氷の塊がジャックの顔目掛けて飛ばされる。
「そんなもん当たるかよ!」
ジャックは体を捻り、避けようとする。
「
「なっ!?」
ジャックは黒い影に足を取られ、動きを封じられた。
「ゲハッ!」
高速で飛んできた氷の塊が顔に直撃し、ジャックは倒れた。
「アマネさん、ありがとうございます!」
「おう」
アマネはリーシャの元へと近づく。
「あ、あの…………ありがとう…………」
少女は二人に頭を下げた。
「助けるの遅くなって悪かったな」
「いえいえ」
「ダンジョン慣れしてなかったアマネさんが道に迷ってしまったんですよね……………」
アマネは嘘笑いをしながら頭をかく。
「それで君の名前は?」
「私は………ミサ・エリオット………」
ミサと呼ばれる少女は小さな声でそう言った。
「そうか、ミサだな」
「
突如、アマネの背後からそんな叫び声が聞こえた。
その正体はルイだ。
アマネは咄嗟に剣を構える。
「そんなんで防げるかよ!」
ルイは人間離れした速度で件を振り下ろした。
バキッ───。
アマネの剣は鈍い音を立て、へし折れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます