第12話 vs新人狩り② (三人称)

「アマネさん!」


「死ね!」


 ルイは流れるようにしてアマネの懐目掛け、剣を振るう。


 誰しもが思ったこの剣は避けられないと。


 ───だがアマネだけはそう思っていなかった。


「ブレード」


 カン…………ジュゥゥゥ…………。


「っ!?何だそれは───?」


 剣がおられ、もう武器がないはずのアマネの手には漆黒の炎で出来た刀が握られていた。


 お互いの剣がぶつかり合う。


 その時───。

 ルイの剣が折れた。音も立てず、焼き切れたのだ。


「はっ…………?な、何だよ。何だよその刀

 わ!」


 ルイはアマネの持つ得体の知れない刀に怯え、後ずさりを始める。


「どうだ?この刀、カッコイイだろ」


 アマネは刀を振るい、ルイの付けている装備を焼き切る。


「ひっ、ひぃ………………」


 そう声を漏らし、青ざめるルイ。


 装備が無くなり、丸見えになった腹目掛け、アマネは拳で殴打する。


「ガハッ…………………」


 ルイは気を失い、その場に崩れ落ちた。


「ふぅ〜危なかった……………」


「アマネさん!大丈夫ですか?」


 リーシャが慌てた様子でアマネの元に近づき、傷がないか手探りで確認し始めた。


「あっ、ああ。大丈夫だ。ありがとう」


 距離感の近さに少し、ドギマギするアマネ。


「あの…………さっきの刀はどこから…………?」


 ミサがアマネにそう問いかける。

 アマネは隠し球にしていたこの技を明かすべきか、少し考える。


(バレても問題ないか……………対策なんて早々出来ないだろうし)


「俺のスキルで作った炎の刀だよ。だから普通の武器みたいに常に持ってる必要が無いんだ」


 アマネが出した漆黒の刀は<闇魔法>と<火魔法>と<鍛治>を複合して作ったものだ。

 ほとんどが魔法によって出来ているので簡単に出し入れ出来る。

 高温の炎で出来た刀は相手の武器を焼き切るなんてことも可能なのだ。


「さて、じゃあこいつらを縛るか」


 アマネは裁縫スキルで作った特殊な縄を用意し、三人の新人狩りを縛り付けた。


 その頃にはジャックとガウスの意識が戻っており、抵抗し始める。


「こんな縄で俺たちを縛れると思ってんのか!」


 そう言いガウスが手を縛っている縄を噛み始めた。


「あっっっちぃぃぃぃ!!」


 そう言って縄から口を離し、地面を転げまわるガウス。


 ガウスの唇は腫れ、タラコほどの大きさになっていた。


「抵抗しない方がいいぞ。その縄は外そうとすると火魔法が発動して自分の体を燃やす。最悪、自分で自分を骨にしてしまうかもな」


 そう言って不敵な笑みを浮かべるアマネ。


 それを見た二人は抵抗をやめ、大人しくなった。


「アマネさん、これからどうしますか?」


「これから……………?」


 アマネは周りを見渡し、大きな扉がある事に気がついた。


「なるほど、ボス部屋か……………」


「はい」


「ついでに倒していくか。こいつらが逃げる事なんて出来ないしな」


「私も行く」


 アマネ達、三人はボスが居る部屋の扉を開け、中に入った。


「グァァァァァ」


 そこに居たのは人の何倍もデカく、振り下ろしただけで人を潰せそうな程に大きい棍棒を持ったオークキングの姿があった。


「凄い迫力だな……………」


 アマネはその巨体、上に少ししり込みしていた。


(何だよあの棍棒。人よりデカいじゃん)


 するとオークキングがその巨体を動かし、アマネ達に向かって棍棒を振るってきた。

 アマネはミサを抱き抱え、それを避ける。


 とてつもない勢いで振り下ろされた棍棒は地響きを起こすほどの破壊力を持っていた。


 アマネは円形状のボス部屋の端まで走り、ミサを下ろした。


「ミサはそこで待ってろ。あいつは俺たちでやる」


「う、うん………」


 アマネはオークキングに向かって一気に間合いを詰める。


(当たれば終わりだが、攻撃は遅いな)


漆黒の炎シャドウフレイム


 アマネはオークキングに向かって黒い炎を飛ばす。

 オークキングはそれを棍棒でガードした。


 棍棒が一気に炎に焼かれ始める。

 オークキングはそれを消そうと空中で棍棒を振り回す。


「それ、消えないよ!」


(ブレード)


 アマネは漆黒の刀をだした後、飛び上がり、オークキングの片腕を切りつける。


「グァァァァァ……………」


 腕は焼ききれ、棍棒諸共地面に落ちる。

 オークキングはアマネの着地点に向かって勢いよく足で踏みつける。


 アマネはそれを避け、体勢を立て直す。


 オークキングはアマネの方へとかけ出した。


氷の風フリーズ


 リーシャがオークキングの足に冷気を吹き付け、地面に接着させる。


「アマネさん!今です!」


「ナイスだ、リーシャ」


 アマネは再び、間合いを詰め出す。

 地面に接着する足を離すことに必死になっているオークキングはアマネが近づいている事に気がついていない。


 アマネは飛び上がり、オークキングの顔まで駆け上がっていく。

 さすがに気がついたオークキングが残った腕でアマネを捕まえようと伸ばす。


 広げた手のひらはアマネを捕まえるには十分すぎる大きさだ。


氷の盾アイスシールド


 リーシャの作った氷のバリアでオークキングの腕を防ぐ。


 アマネはそのまま駆け上がり、オークキングの首を掻っ切った。


 Lv7→9


 名前 : 天音 旬

 Lv9

 職業 : 魔法剣士

 HP : 199/200

 MP : 170/200

 筋力 : 81(+13)

 耐久 : 90(+13)

 速度 : 80(+13)

 固有スキル : <召喚・帰還>

 <言語理解>

 <複合>

 スキル : <闇魔法Lv2>

 <火魔法Lv2>

 <裁縫Lv1>

 <認識阻害Lv1>

 <鍛治Lv1>

 <感覚Lv1>

 スキルポイント : 200

 換金可能ポイント : 506190


「リーシャ、ナイスアシスト」


「ヘヘッ、ありがとうございます」


 アマネとリーシャはパン、とハイタッチをした。


「痛ッ」


 アマネは腕に痛みを覚え、確認する。

 そこには少しの擦り傷があった。


「だ、大丈夫ですか!」


 リーシャが心配の眼差しをアマネに向ける。


「ただの擦り傷だよ」


「あの………私その傷治せるよ」


「えっ、ほんと?」


「うん」


 ミサはアマネの傷に手を当てた。

 すると緑の光が発せられ、傷が塞がった。


「治癒魔法か、ありがとうミサ」


「い、いえ。私はこれしか出来ないから」


「これしか出来ない?」


「アマネさん、おそらくミサさんの職業は治癒士なんだと思います」


「治癒士?」


「はい、治癒魔法を持ってる人だけがなれる職業なんです。強力な付与スキルとかを獲得できるサポート系の職業なんですが、多くの人は最初に戦闘スキルを持つことが少ないのでレベルが上がらず、治癒魔法しか持ってないことが多いんです」


「なるほど……………モンスターが倒せないから経験値が入らないのか」


「私、薬草採取とか安全なミッションばかり受けてD級になったからレベルは1のままなの。だから戦闘は全く出来ない」


「そうか……………」


(どうするべきかなぁ)


 するとリーシャがアマネの服を掴んでこう言った。


「アマネさん、私はミサさんを一人にさせるのは良くないと思います」


 アマネはリーシャが何を言いたいのか、何となく理解し、どうするか少し悩み口を開いた。


「ミサ、これから俺たちがミッションを回る時、一緒に来ないか?」


「えっ、良いの?」


「ああ、もちろんだ。俺たちは討伐ミッションばっかり受けるから回復してくれる人が居ると正直助かる。戦闘になればミサのレベルを上げることも出来るだろ」


「確かにそうだね。でも一つ聞いていい?二人はどうして顔を隠してるの?」


「えっ、あ、それはですね………………」


 リーシャはその問いかけにあたふたし始める。


 アマネはローブを脱ぎ、こう言った。


「怖がさせて悪かったな。それと顔を隠してるのは別に理由があるわけじゃないんだ。ただカッコイイと思って着てるだけ」


「そ、そうなんだ…………」


 アマネは別に嘘をついているわけじゃない。

 初めから認識阻害の入ったローブはリーシャの顔を隠すためであって、アマネが着る必要は全く無い。

 ただ厨二病を拗らせているだけなのである。


 ミサにはどこがカッコイイのか正直分からず、戸惑っていた。


「じゃあこれからよろしくなミサ」


「…………う、うん。よろしくアマネ」

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