第10話 新人狩りとスキル獲得

あれから三日ほど経過した。


学校終わりに異世界に行くことが習慣化したせいか、特に理由も無く一日一度は異世界に行っている。


その結果───。


「アマネ様おめでとうございます。ミッション10連続成功したので見事D級に昇格しました」


「ありがとうございます」


俺はE級からD級に昇格した。


「そういえばアマネ様、職業選択をしていませんでしたよね?」


「ほんとですね」


そういえば完全に忘れてたな。

でも職業に着くメリットって何があるんだろ。


『レベルが上がった時のステータス上昇が増えたり、職業限定のスキル獲得が出来るようになりますよ』


メリットしかないじゃん。


そうだな…………剣士、いや魔法使い…………悩ましいなぁ。


「あの、剣と魔法が使える職業とかありますか?」


「…………でしたら魔法剣士なんてどうでしょうか?」


「それにします!」


名前 : 天音 旬

Lv7

職業 : 魔法剣士

HP : 160

MP : 160

筋力 : 68(+5)

耐久 : 70(+5)

速度 : 67(+5)

固有スキル : <召喚・帰還>

<言語理解>

<複合>

スキル : <闇魔法Lv1>

<火魔法Lv1>

スキルポイント : 600

換金可能ポイント : 506190(-3000)


職業も決まった事だし、ずっと貯めてたスキルポイントも使ってみるか。


「じゃあ行くか」


「はい!」


俺はリーシャと冒険者ギルドを出よう出口に向かった。


「君達ちょっと待ってくれないかな?」


そう言って俺の肩を誰かが掴んできた。

俺は声の方に振り向く。


「君昇格したらしいね」


「そうですけど、あなたは誰ですか?」


「僕はルイ・ホルステン。C級冒険者だよ」


ルイは爽やかな笑みを浮かべそう言った。


「それで俺達に何か用ですか?」


「今度C級ダンジョンに潜ろうと思っててね。君達も一緒にどうかな?もちろん報酬は払うよ」


ダンジョンの誘いか。


だが何か胡散臭いな………………。

一人じゃ厳しいとかならもっとランクの高いベテランの人を誘えばいい、なんで昇格したての俺達を誘ってくるんだ。


「何で俺達何ですか?一人で厳しいなら他の人を誘えばいいのでは?」


「確かに君の言う通りだね。C級ダンジョンは僕一人でクリアできると思うよ。でも一人で行く自信が無くてね。だから僕よりランクの低い人を誘ってるんだ。ベテランの人は報酬をほとんど持ってちゃうから誘いずらいんだよね」


「そうですか………………」


ダンジョン系のミッションは一番低くてもC級に設定されている。

理由はモンスターの数がD級の討伐ミッションなんかと比べられないほどに多いいからだ。

ギルド的にも一人で潜るのはあまり推奨していない。

確かに人数が欲しいだけならわざわざベテランを誘う必要は無い。


「また新人狩りか」

「あいつ昇格試験受けれるのにずっとC級のままだよな」

「人殺すの好きなんだろ。イカれたやつだ」


酒場の方から聞こえる会話。

おそらくルイの事だろう。


「チッ───」


ルイが酒場にいる冒険者たちの方に睨みを聞かせ、舌打ちをした。


「それで君達はどうする?あんな根も葉もない噂を信じてダンジョンに行く機会を逃すか、それとも俺についてくるか」


ダンジョン系のミッションは数が少なく、危険だが報酬が桁違いに多い。

山分けしても他のミッションなんかよりは貰える。


だが今はお金に余裕があるし、無茶する必要も無い。

それにこの男を信用しきれない。


「今回は遠慮させてもらいます」


俺はそう言って足早にルイの元を去った。





やることも無くなり、俺達は自宅に戻ってきた。


「アマネさん、漫画を読んでもいいですか?」


「良いよ」


リーシャは前に読んでいた学園ラブコメにハマったのか最近は良くそれを読んでいる。


俺は落ち着いたところでスキル獲得をする事にした。


『ポイントの消費が大きいスキルほど強いスキルです』


なるほど………………。


見た感じポイントの幅は50〜500くらいだな。

あんまり余裕があるわけじゃないし、欲しいスキルを取るか。


雑魚スキルばっかり取っても勿体ない気もするが、<複合>で化ける物もありそう。


<認識阻害>……………。

あっ、いいこと思いついた!


俺は<認識阻害> <裁縫> <鍛治>の三つを手に入れた。

どれも50ポイントで手に入れられるスキルだ。


『アマネ様どれも強いとは言えないスキルですよ』


分かってるよ。


<認識阻害>だけではMPを消費するだけになる。

だが<裁縫>で作った防具は俺のMPが常にある状態だ。


つまりこの二つのスキルを合わせて防具を作れば───。


完成だ!


Lv1だからちゃっちいのしか作れないが、性能は保証されているはず。


「リーシャ見てくれ!俺の最高傑作を───」


俺は<認識阻害>の入った黒のローブを見せた。

ローブにしたのはなんとなくカッコイイと思ったからだ。


漫画を地べたに置き、ローブに視線を向けるリーシャ。


「それは何でしょうか?」


「俺が作ったローブなんだが、ずっとフードにサングラスで向こうに行ってただろ、このローブには認識阻害を埋め込んであるからこれさえ被れば顔がバレる心配が無くなるんだ」


「そうなんですか!」


「ああ、ずっと視界が悪かったがこれでもう大丈夫だよ」


「ありがとうございますアマネさん!」


リーシャは嬉しそうにローブを受け取ってくれた。


「裁縫スキルで作ったやつだから、多少魔法に耐性がついてるはず、だから破れたりすることも少ないと思うよ」


「わざわざ作ってくれてありがとうございます!」


そう言って満面の笑みを見せるリーシャ。


喜んでくれたなら良かった。

サングラスで視界が悪くて何回か転けそうになってたし、どうにかしたいとは思ってたからいい案が思いついてよかった。


スキルポイント : 450


まだ余ってるし、他にも何か取るか。


シェリアさん何かオススメある?


『そうですね……………私個人としては奇襲を察知できる<感覚>がオススメですね』


ならそれにしとくか。


消費MP0で獲得に必要なポイントも150とかなり取りやすいスキルだ。


スキル : <闇魔法Lv1>

<火魔法Lv1>

<裁縫Lv1>

<認識阻害Lv1>

<鍛治Lv1>

<感覚Lv1>


スキルポイント : 300


後はスキル強化でもしとくか。


<闇魔法Lv1→2>

<火魔法Lv1→2>


もう無くなったのか。


『スキルレベルを上げる際は獲得ポイントの半分を消費しますから』


へぇ〜、じゃあポイント300もいるスキルを二個持ってたって訳か。

意外と運良かったんだな。


後は鍛治スキルの活用だな。


「あ、あのアマネさん。お腹すいてませんか?」


近くで漫画を読んでいたリーシャがそう言った。


スキルに夢中になっていて気づかなかったがいつの間にか辺りは真っ暗になっていた。


「ごめん、夢中になっててお腹すいてるのも忘れてた」


「じゃあ今は空いてるってことですね!」


「そうだな。空いてるよ」


「じゃあ今日は私が作ります!」


「ほんとに?」


「はい、任せてください!キッチンの使い方はもうマスターしましたから」


「じゃあお願いするよ」


リーシャの手作り料理か……………楽しみだなぁ。


あんまり気にしないようにしてたけど、リーシャは見たことないくらいの美少女なんだよな。

そんな子が俺のキッチンでご飯を作ってくれる……………最高かよ。


リーシャは棚に食材を用意した後、ヘアゴムで髪を結び料理を始めた。

完全に妻の風貌である。


そうして30分ちょっとで完成し、テーブルに並べられていく。


「おっ、ハンバーグか」


「はい!」


俺達は椅子に座り、ご飯を食べ始める。


リーシャは俺がハンバーグを食べるのをじっと見つめてきていた。


「どうですか?」


「っ!?うまっ!」


「良かったです……………」


胸に手を当て安心した表情を見せるリーシャ。


「今まで食べたハンバーグで一番うまい」


「そ、そんなにですか!?」


「ああ、それくらい美味いよ」


「ありがとうございます…………」


頬赤くしつつも嬉しそうに笑うリーシャ。


こんなに美味しいなら毎日頼みたいくらいだな。





一日が立ち、俺達はローブの性能を確かめるため異世界に来ていた。


人の多い冒険者ギルドに居座っていてもいつもと反応の違いはないようだ。


ちなみに俺も誘惑に負けてローブを羽織ることにした。

まだ厨二病が完治していなかった事に自分でも驚いている。


「ねぇそこの君、D級に昇格したんだって?」


聞き覚えのある声が俺の耳に入ってきた。


やはり声の主はルイだった。

ターゲットを変えたのか、またD級に昇格したばかりの冒険者に話しかけていた。


話しかけられている相手は水色髪のショートカットの小柄な少女だ。


「え、えっと…………」


「僕とこれからC級ダンジョンに行かないかな?もちろん報酬は渡すよ」


「いえ、私は…………」


その少女は人と関わるのが苦手なのかルイの方を見ず、俯いたままだ。


そんな彼女を見て、ルイはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「迷ってても仕方ないし、とりあえず行こうか」


そう言ってルイはその少女の手を無理やり掴み、引っ張りだした。


「えっ………待って───」


「遠慮しなくていいから」


引きつった表情をする少女など気にせずルイは無理やり連れていった。


「アマネさんあの子…………」


「ああ、分かってる」


彼女を連れて行った時のルイは殺意と喜びが混じったような狂った目をしていた。


新人狩り───。

その言葉が俺の頭をよぎった。

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