第2話 令嬢をお持ち帰りした
新鮮な街並みを見渡しながら、俺は冒険者ギルドへと向かった。
「さすがのデカさだな」
周りの建物とは比べられない多さの建物がそこにはあった。
中に入ると右側に受け付けがあり、可愛らしい受付嬢が冒険者達の対応をしていた。
左側には酒場があり、まだ日が昇っているにもかかわらず、ベロベロに酔っている人達もいる。
受け付けの列に並び待つこと数分、ついに俺の番となった。
「こんにちは、今回はどういったご用件でしょうか?」
「ギルドに加入したくて」
「それでしたら、まず手数料として10ラーツをいただきます」
「わかりました」
俺は受付嬢に10ラーツを手渡した。
「それでは次にお名前を教えてください」
「天音 旬です」
「アマネ・シュン様ですね。ではギルド証を発行致しますので少々お待ちください」
少しして受付嬢が受け付けに戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがギルド証です」
「ありがとうございます」
受け取ったギルド証にはEという文字がデカデカと書かれていた。
「冒険者のランクはE級、D級、C級、B級、A級、S級となっています。アマネ様は新人ですのでE級からのスタートとなります。後ろの掲示板にランク分けされたミッションが用意されてますのでご確認ください。一つ上のランクまで受ける事が出来ますが失敗すると違約金が発生しますので注意してください。ミッション10連続成功でランクが一つ上がります。ただB級からは昇格試験がございます」
「わかりました」
「初めはこの二つの中のどちらかを受ける事をおすすめしています」
・薬草5本の採取
・スライム3体の討伐
レベル上げたいし、スキルも試したいから薬草採取は論外だな。
「スライム討伐でお願いします」
「了解しました。それでは入会頂いたお礼に杖か、剣どちらか一本お渡しさせてもらってますがどちらがいいですか?」
杖か剣…………迷うな、職業にも関わってきそうだし。
でも剣の方がカッコイイよな。
「剣でお願いします」
「了解しました」
そうして渡された剣はRPGでも序盤しか使わなさそうなちゃっちい物だった。
ほぼ無料みたいなものなので仕方ない。
まぁしょぼいけどやっぱかっこいいな。
俺は普通に満足した。
「まさか第二王子の婚約者が国家反逆罪とはな」
ギルドを去る途中、掲示板を見ながらそう言う冒険者の声が聞こえた。
「指名手配って王国は何やってんだ」
俺は少し気になり遠目でその貼り紙を見た。
指名手配中という文字がデカデカと書かれており、名前や特徴が書かれていた。
名前はリーシャ・ミリセント、特徴は銀髪のロング───。
見つけたらお金でも貰えるのかな?
※
ギルドを去り、討伐ミッションの場である森の中に来た。
そこには三体のスライムがいた。
様子を伺い、俺は草むらから飛び出す。
目の前にいるスライムに剣を突き刺し、倒す。
元のステータスが高いからか?いつも以上に体が軽い。
これなら余裕だな。
「
スキル<火魔法>に含まれる魔法で火の玉を飛ばせる。
それに当たったスライムは燃えてなくなった。
次は<闇魔法>かな。
「
すると前で飛び跳ねていたスライムが黒い影のようなものに纏われ、動けなくなった。
俺はそのスライムに向かって剣を振るい、倒した。
なるほどこんな感じか。
<複合>を試せなかったのは残念だがこの二つのスキルはそこそこ高い性能があるな。
Lv1→Lv2
名前 : 天音 旬
Lv2
職業 : 無し
HP : 110
MP : 100/110
筋力 : 55(+2)
耐久 : 58(+3)
速度 : 54(+2)
固有スキル : <召喚・帰還>
<言語理解>
<複合>
スキル : <闇魔法Lv1>
<火魔法Lv1>
スキルポイント : 100
換金可能ポイント : 990
レベルが上がったのか、スキルポイントはとりあえず温存しておこうかな。
※
初のミッションを終え、俺は冒険者ギルドへと戻った。
「こちらがミッション報酬です」
受付嬢から200ラーツを受け取った。
森へ潜りスライム三体倒して200円、元の世界で考えたらしょぼすぎる報酬だが、ギルドへ向かっている途中に見た屋台では串焼きが一本20ラーツとそこそこ安めだったのでスライム程度だとこんなものなのだろう。
「ありがとうございます」
報酬を受け取った俺はギルドを去った。
スキルとかに夢中になってたから気づかなかったけど、制服が泥で汚れてるな。
洗わないとだし、今日は帰るか……………。
持ってる武器とかどうしたら良いんだろ…………?
『それでしたら保管庫をお使いください。ステータス画面の方から操作できます』
シェリアに言われた通り、俺はステータス画面から保管庫に変えた。
そこには12個の枠があった。
『そこに物を入れますと保管庫内で保存されます』
へぇ〜めちゃくちゃ便利じゃん。
俺は剣を保管庫にしまった。それによって枠が一つ埋まった。
じゃあ帰るか。
「帰還」
そう口にすると、目の前に10のカウントが現れた。
どうやら0になると戻れるらしい。
「何だ何だ?」
「誰か追いかけられてるぞ」
道を歩く人達がそんな事を口にしながら同じ方向に目を向けていた。つられて俺もその方に視線を向ける。
鎧を纏い剣を持った、いかにも騎士らしい見た目の人達が汚れたドレスにボロボロの布をローブ代わりにしている少女を追いかけていた。
………6………5………4………。
帰還のカウントがどんどん進んでいく。
それと同時に少女との距離も縮まって来ていた。
息絶えだえに走る少女は焦っているのか、今にも足がもつれてしまいそうだ。
………3………2………。
「……………助けて………………キャッ!」
「危ない!」
………1……。
案の定その少女は足が縺れ、体が前方へ倒れる。
近くにいた俺は反射で体が動き、転びそうになっている彼女を引っ張った。
引っ張る勢いが強すぎたせいか抱きしめる形となってしまった。
0。
カウントが0になり視界が真っ白な光に包まれ、見えなくなった。
視界が開け、気がついたら俺は自宅にいた。
何だ?何か暖かい。
俺は視線を下に向ける。
俺の胸の中にさっきの少女が居た。
「えっ!?あっ、ごめん!」
俺は咄嗟に掴んでいた手を離し、後ろに下がった。
「い、いえ……………だ、だだ大丈夫です!」
そう言いいながらもその少女は俺からどんどん距離を離していく。
玄関の段差に躓き、尻もちを着いた。それによってローブがズレ、地面に落ちた。
そこには銀髪ロングの可愛らしい少女が居た。
銀髪?もしかしてあの指名手配の───。
「あ、あの…………助けてくれたんですか?」
少し警戒した表情を浮かべながらそう言う少女。
「転けそうになってたからついね………………」
「あ、ありがとうございます」
そう言い頭を下げた後、俺の部屋を見て首を傾げる少女。
「あの、ここ何処ですか?」
「俺の家」
「少し変わってますね」
「そうだね。だってここは君の住んでる世界じゃないから」
「どういう事ですか?」
「外を見てみるといいよ」
俺はそう言って近くの窓を指さした。
異世界に行っていた時間を考えたら夜になっているはずなのだが、まだ日が暮れ始めたくらいで外の風景は十分見える。
どうやら時差があるらしい。
少女は恐る恐るといった感じで窓へと近づき、外を眺める。
「えっ…………これは……………どうなってるんですか?」
俺はマンションの7階に住んでいるので景色はそこそこいい(建物が見えるだけで綺麗では無い)。
「そ、それに高いです!これは崩れたりしないんですか!?」
そう言い慌て出す少女。
向こうの世界にはここまで高い建物は無かったので驚いているのだろう。
「大丈夫だよ。それと君が警戒してる人達はこの世界に居ないし、まず君を知ってる人は誰一人居ない」
「ほんと………何ですか…………?」
すると少女は全身から力が抜けたかのようにして、その場にストンと座り込んだ。
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です。安心してしまって……………」
そう言ってため息を着く少女。
「なぁ君の名前を教えてくれないか?」
「な、名前…………ですか」
すると少女の手がブルブルと震えだした。
きっと俺の事を信用しきれておらず、口にするのが怖いのだろう。
俺はその少女の手を取り「大丈夫、俺は君の敵じゃない」と目を合わせそう言った。
俺は彼女にあまり悪い印象を抱かない、きっと事情があるのだろう。
しばらくして手の震えが収まり始め、少女は一息付き、口を開いた。
「……………私の名前はリーシャ。リーシャ・ミリセントです」
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