第21話 竜討伐①(三人称)
「ブレード」
アマネは漆黒の剣を取り出し、向かってくる魔物を次々に切っていく。
「
リーシャは他の魔法使いと共に遠くから氷を放ち、魔物を倒していく。
「
アマネ達の知らない内にミサはレベルを上げていたようで、付与スキルを冒険者全員にかけていた。
それでも終わりの見えないほどに迫ってくる魔物の群れに冒険者達は徐々に疲弊していっていた。
それをミサが治していく。
だがミサだけでは回復が追いつくはずもなく、魔物に押されている一方だ。
その原因を作っているのが、竜だ。
どのタイミングで攻撃を仕掛けてくるか分からず、空を飛んでいることもあり、目の前の魔物に集中しきれないのだ。
だがよそ見している暇が無いほどに魔物の数は多い。
圧倒的に戦力が足りない状態だ。
(処理が追いつかない……………)
「ハンドガン」
アマネは銃を取り出し、魔物だけをターゲットに絞り、乱射する。
1発でも当たれば、炎が魔物を焼くので簡単に倒せる。
「ギァァァァァァ───!!」
竜が咆哮を上げ、口から炎の玉を吐き出した。
「嘘っ………………」
着弾点には冒険者の一人を治療しているミサの姿があった。
(まずい………………)
アマネはミサの方に向きを変え、全力で走り出す。炎が着弾するより先に到達できるのか怪しい距離があり、アマネは焦りを隠しきれていない。
だがミサが危険な事に気づいていたのはアマネだけでは無かった。
アマネよりも先にリーシャがミサの前に立っていたのだ。
「
ドーム状にシールドを展開し、炎の玉の接近に備える。
だがさっきの威力からして、これだけでは防げないとリーシャ自身も分かっていた。
そんな時だ───。
「「
続々と他の冒険者達も集まり、シールドを展開していく。
「皆さん……………」
リーシャの瞳に希望の光が灯る。
「へっ、嬢ちゃんだけじゃ心許ないだろ」
「俺達も手伝うぜ」
合わせて五人がシールドを展開したところで、炎の玉がぶつかった。
「くっ………………」
その玉は重く、シールドを徐々に破っていく。
「マジか、これだけ集まっても無理なのかよ………………」
「諦めないでください、きっと大丈夫です………………」
リーシャはこの時、信じていたアマネがくると。
その時だ───。
炎の玉が真っ二つに割れ、小さな爆発が起きた。
「大丈夫か?」
アマネがリーシャの元に駆け寄る。
「はい、大丈夫です。やっぱり来てくれましたね」
「無茶しすぎだ」
そう言って安堵の息を吐くアマネ。
「みんなありがとう」
ミサが頭を下げる。
「当たり前だろ。ミサちゃんは俺たちの生命線だぞ」
冒険者はそう言い、また魔物の元へと向かっていった。
「アマネさん、いけそうですか?」
「いや、正直厳しい。さすがに数が多すぎる」
「竜も厄介ですしね」
「魔法使いの人達は魔力不足になってきてる。終わりが近い」
現時点でも魔物の討伐が間に合って無い中、戦闘不可になる人達までがではじめている現状に緊張が走る。
アマネ達はどうにか策を考えていた。
Lv9→15
名前 : 天音 旬
Lv15
職業 : 魔法剣士
HP : 310/320
MP : 240/320
筋力 : 120(+39)
耐久 : 129(+39)
速度 : 119(+39)
固有スキル : <召喚・帰還>
<言語理解>
<複合>
スキル : <闇魔法Lv3>
<火魔法Lv2>
<裁縫Lv1>
<認識阻害Lv1>
<鍛治Lv1>
<感覚Lv1>
スキルポイント : 650
(さっきまでの戦闘でレベルが相当上がってるな。スキルポイントをどうにか使えないか……………あっ!)
アマネは考えた結果一つの策を思いついた。
<火魔法Lv2>→<火魔法Lv4>
「リーシャ、少し時間を稼いでくれるか?そうすれば最低でも魔物は一掃できる」
アマネはリーシャの耳元でそう言った。
「分かりました」
そう言った後、リーシャは他の魔法使いがいる所まで走っていき、魔法で牽制を始めた。
「ミサ、俺にもう一回付与スキルをかけてくれ」
「わかった。
アマネは魔力をため、ある魔法を放とうとしていた。
(まさかあの爆発野郎に救われるとはな)
「
ドォォォン───!!
けたたましい爆発音がなり、冒険者諸共全てを爆発させた。
「アマネ…………何してるの…………」
その光景を見て、ミサが顔を引き攣らせた。
「勘違いするな。魔物と竜以外は無事だ」
アマネの言った通り、煙と炎が落ち着いたところで冒険者達の姿が現れた。
竜の姿は見当たらない。
「何が起きたの…………?」
「魔物がいねぇ…………」
「あれ?無傷?それとも俺死んでんのか?」
魔物が全滅するほどの爆発に巻き込まれたのに関わらず、何の外傷も無い冒険者達は戸惑っていた。
「アマネ、何をしたの?」
「爆発させた」
「それは知ってるよ!!」
アマネが起こした爆発は<火魔法>をLv4にする事で使えるようになった<
燃やす対象を選択出来る<
「アマネさん、爆発を起こすなら先に言っててください。びっくりしました………………」
アマネの元に駆け寄りそう言うリーシャ。
「悪かったよ」
「ギァァァァァァ───!」
咆哮が響き渡った後、大きな翼が視界に現れた。
竜の姿が無かったことに安心していたアマネ達は動揺を隠せずにいた。
「嘘だろ……………ほとんど無傷じゃないか」
竜の硬い皮膚に少し切れたような傷があるものの、致命傷となるほど深くはなく、擦り傷ほどしかついていなかったのだ。
「───っ!?」
竜はギロリ、と鋭い瞳をアマネに向け、怒りを露にさせた。
その瞬間───。
大きな翼を羽ばたかせ、アマネの方へ一気に突っ込んできた。
「離れろ二人とも!」
アマネはミサとリーシャを押し、距離を離した後、漆黒の刀を取りだし、防御の姿勢をとった。
竜はアマネの目の前まで来ると大きな口を開いた。
アマネはギリギリで横に飛び、それを避ける。
その後、長いしっぽに掴まった。
「うわっ!?」
竜は空を飛びながら、思いっきりしっぽを左右に振り回した。
アマネは振り落とされまいと、必死にしがみつく。
「うぷッ……………」
(やばい、吐きそう)
振り回され過ぎた事で、目が回り、アマネは酔いそうになっていた。
アマネは吐きそうな気持ちを我慢し、竜の背中へと進み始めた。
やっとの思いで背中に辿り着いたアマネは持っている刀をその背中に突き立てた。
カン。
「硬っ───」
どんなものでも切れていた漆黒の刀を竜の皮膚は意図も簡単に弾いてみせた。
「
(嘘だろ、全然効かない)
何故か竜の皮膚に炎が付着しなかった。
「ギァァァァァァ!!」
突然、竜は体を一回転させた。
「うわぁーーーー!!」
動揺で周りが見えてなかったアマネは振り落とされてしまい、地面に激突した。
「ぐっ………………痛ってぇ……………」
「アマネさん大丈夫ですか!」
「アマネ!」
ミサとリーシャがアマネに駆け寄る。
ミサが治癒魔法でアマネの怪我を治していく。
「悪い。しくじった、というかあいつの皮膚硬すぎだろ、俺の魔法が全く通らなかったぞ」
「竜の皮膚は硬いだけじゃありません。常に魔力が流れているんです。なので魔法にも耐性があるので攻撃が通りにくいんですよ」
「嘘だろ……………そんなのありかよ」
アマネはリーシャの言った事を聞いて、少し戦意が削がれた。
「おい!あれまずいぞ!早く止めろ!」
一人の冒険者が空に指さしてそう言った。
その先にいたのは街の方へ向かう竜の姿だった。
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