第17話 決着

「全員死んじまえ!」


勝ち誇った顔で魔法を発動する男。


どうしたら爆発を止められる?

どうしたらこの攻撃を防げる?

俺は全力で思考を巡らせる。


どうやら最大出力で発動させるためには少しのラグがあるらしいが<超速再生>を持つ男を倒しきるほどの余裕は無いだろう。


どうすれば誰も死なずに終わるんだ───。


赤くなり始める地面を見ながら、ただ考える事しか出来ない。


『アマネ様、方法があります───』


突然シェリアからそんな事を言われ、ある提案をされた。


なるほど………………やってみるよ。


その方法は確かに止められるものだ。だが間に合うかの問題が残った。


「悪いリーシャ」


俺はリーシャが掴む手を振り解き、男の方へ全力で走り出した。


「アマネさん、待ってください───」


焦った声でそう言うリーシャ。

きっと彼女は俺が死に急いでいるように映っているのだろう。

確かに魔法が発動する中心に走っているのだ、そう見えてもおかしくは無い。

でも説明している暇もないのだ。


「今更俺の方に来てどうするつもりだ?お前の攻撃じゃ俺を抑えるきることなんて出来ねぇぜ」


「今に見てろ。お前の腹立つその笑顔を完全に消してやるから」


俺は話で時間を稼ぎ、さらに間合いを詰めていく。


この魔法を使うにはあいつを直接触る必要がある。


間に合ってくれ───。


俺は限界まで男の方へと腕を伸ばした。


「やってみろよ!業火爆ジラス………………グッ、ガガガガガァァァァ………………!!」


魔力吸収ドレイン


男は体から力が抜けたかのようにその場に崩れ落ちた。


間に合った………………。


「貴様…………何を……………した?」


「自分のステータスを見れば分かるはずだぞ」


「何っ?」


男は俺に言われた通り、自信のステータスを確認した。

そうして、絶望の表情を浮かべた。


「魔力が……………0だと……………」


「俺はお前の魔力を全て吸い取った。お前はもう魔法を打つことは出来ない」


「………………くそっ!!なんだよてめぇ……………俺の気も知らねぇで邪魔しやがって……………グハッ………………」


俺は男の腹に蹴りを入れた。


「どんな理由があろうと人を殺していいはず無いだろ。それに俺はお前に興味は無い、大人しくしてろクズが」


「お前が魔力吸ったせいで……………指一本……………動かせ………………」


男はうつ伏せのまま気を失った。


一見略着。


ていうかシェリアさん、止める方法があったんだったらもっと早く教えてよ。


『す、すみません……………こういった補助は極力しないようにと決まっているので……………』


決まり事多いな……………。


でもどの道教えてくれなかったら詰んでたわけだから、感謝してる、ありがと。


『フフッ、意外と素直なんですねアマネ様』


素直って言うか、ほとんど命を救ってもらったもんだ。普通に感謝するだろ。


『つまり私はアマネ様の命の恩人という訳ですか…………フフッ』


ん?面白いところあったか?


『いえ、そういう訳じゃありませんよ』


そうか……………。でも俺はほんと運がいいな。

まさか闇魔法をLv3にしたら相手の魔力を吸収出来るようになるとは。


<魔力吸収ドレイン>は相手に直接触れる事で相手の魔力を吸収する事が出来る。


最大出力の業火爆発ジラストを放つには残り全ての魔力を使わなければいけない。

つまり、魔力を吸われたらもう放つことが出来ないのだ。

それに吸われている間は魔法なんて使える状態じゃないから触れる事が出来れば、勝ち確だったんだ。


「アマネさん…………勝手に無茶しないでください……………びっくりしましたよ」


息絶えだえにそう言うリーシャ。


「心配かけて悪かったな。言ってる暇が無かったんだ」


「まぁ私は……………アマネさんが勝つと…………思ってたのでそこまで驚きませんでしたけど」


「ハハッ、そんな息切れしてる状態で言われても説得力無いぞ」


「………………だって呼吸するのを忘れてしまうくらい焦っていたんですから」


頬赤くしてそう言うリーシャ。どうやら相当心配してくれていたようだ。


「さっ、アマネさん。帰りましょう」


「そうだな」


俺は塞がれている出入り口に向かって<漆黒の炎シャドウフレイム>を放ち、瓦礫を燃やし尽くした。


その時、周りの人達が俺の方にカメラを向けている事に気がついた。


っ!?


待ってくれ、その動画を上げられたら終わる───。


でもこの量のスマホをどうしたら良いんだ?


その時だった───。


バチッ。


そんな音がし、周囲にいる人達のスマホが一斉に暗くなり、電源が入らなくなった。


なんだ…………嫌な予感がする。


もしかしてあの男が目を覚ましたのか───。


俺は男が気絶している方に振り向く。

そこにはまだ眠っている男の姿があり、俺は安堵した。


っ!?


殺気。


<感覚>により死角からの攻撃が分かるようになった。

それにより殺気というものを感じるようになったのだ。


この方向、リーシャ───!


「ブレード」


俺はリーシャの背後に立ち、漆黒の刀を構える。


カン!


何も無い空間から攻撃が飛んでき、金属がぶつかる音がした。


どこだ?


俺は<魔眼>を使った。


驚くことに俺の目を前に人型の魔力が映っていた。


なるほど消える系のスキルか。


「アマネさん?今の音はなんですか?」


リーシャも攻撃されていることに気がついたのか、俺の方に振り返ってきた。


「大丈夫だ。俺には見えてる」


人型の魔力は足音も立てず、俺から距離を取り、またリーシャの背後から攻撃を仕掛けてきた。


なんで必要以上にリーシャを狙うんだ?

魔法を使ってたのはほとんど俺だぞ。


俺はその攻撃をまたガードする。


束縛の呪いバインド


魔力しか見えない人間を拘束した俺は口を開けた。


「潜伏スキルか?丸見えだぞ」


俺は腹目掛けて固く握った拳をぶつけた。


「ガハッ───」


そう声を漏らし、その場に崩れ落ちた。


するとスキルがきれたのか、その姿を表した。


「えっ、女の人?」


そこに居たのは黒髪ポニーテールにスーツ姿の女性だった。


「何者なんだお前……………」


「それは俺のセリフだ。攻撃してきたのはそっちだろ」


「はぁ〜どうなってだこのショッピングモールは、何人魔法使える奴がいるんだ?」


そんな声と共に足音とタバコの嫌な臭いが俺達の方に近づいてきた。


「へぇ〜美波をやるとは君、結構強いんじゃん」


暗がりから現れたもう一人の正体に俺は驚愕した。


「───えっ!?店長!?」


「あれ!?旬くん………………?」


「何でここに居るんですか?」

「どうしてここにいる?」


そこにはバイト先の店長───藤崎さんがいた。

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